beacon

[MOM3673]高松商GK西本海志(3年)_ライバルとともに腐らず努力。先発奪還の守護神が的確な声と冷静な対応で完封勝利

このエントリーをはてなブックマークに追加

高松商高GK西本海志は1-0での勝利に大きく貢献

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.13 選手権香川県予選決勝 高松商高 1-0 大手前高松高 Pikaraスタジアム]

 高松商高にとって大手前高松高は分が悪い相手ではない。今年の3年生にとって初めての対戦となった2年前の1年生大会では快勝し、今年6月にインターハイ予選の3回戦で対戦した際も2-1で勝っている。「高校生にとって成功体験は大きい。2試合での経験が、選手の中に残っている」と川原寅之亮監督は話す一方で、手の内をよく知る相手だけに怖さも感じていた。

 大手前高松の得点源は上質なキッカーであり、ロングスロワーでもあるMF前田快(2年)からのボールを長身のFW大津晋太郎(2年)が合わせる形。彼の所を抑えたとしても、こぼれ球を拾って、シュートに持ち込まれる危険性はある。「いつ事故が起きてもおかしくない状況だった」と川原監督が振り返った通り、いくら良い守備をしていても、相手にリスタートの機会を与えれば、失点の怖さはある。だが、この日の試合は最後まで集中力を切らさず、分析通りの守備を続けて、無失点のまま試合を終えた。立役者となったのは、ゴールマウスを託されたGK西本海志(3年)だ。

 リスタートと共に鍵となったのは、大手前高松の売りである最後尾からのポゼッション封じ。「僕は動かすタイプ」と自身を評する西本は、DF多田優(3年)と共にピッチ全体に守り方を細かくコーチングし、相手に前進させなかった。

「相手は持つチームと分かっていたので、持たせる所は持たせて、プレスをかけられそうな所は全員で連動してかけて行こうと話をしていた。後ろからの発信でミーティング通り出来て良かった」。そうした声による貢献により、危ない場面は無かった。時折訪れるハイボールやDF裏へのボールに対しても、冷静に対応した西本は、「抑えなければいけない所は抑えられたので良かったです」と胸を張った。

 今大会はスタメンとして、4年ぶりの選手権出場に貢献した西本だが、インターハイではベンチからチームメイトを見守った。1年生からプリンスリーグ四国での出場機会を掴み、2年目には選手権予選にも出場したが、3年目を迎える直前の3月には左足首をねん挫し、遠征のメンバーから外れた。その期間に、ライバルであるGK伊東莉希(3年)がアピールに成功し、スタメンに定着していた。

 西本がポジションを取り戻したのは、選手権予選が間近に迫った10月に入ってから。西本はその理由について、「莉希の存在は凄く大きくて、お互いに腐らずにやれてきた」とライバルへの感謝を口にする。代わってベンチとなった伊東も今大会ずっと腐らず声を出し、チームに良い雰囲気を作っていた。「落ち込んだりすることなく、声を掛け続けられる。そうした人間性の部分は助けられた」。そう伊東について評するのは、川原監督だ。

 全国大会への出場権を掴んだ事で、二人のライバル関係はまだ暫く続いていく。予選で外れた悔しさを糧に、伊東は必ず巻き返してくる。「全国でもどちらが出るか分からないので、切磋琢磨しながらやっていきたい」と話す西本も、更に成長していくはずだ。守護神を中心とした強固な守備は全国大会でも高松商の大きな武器になるのは間違いない。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP