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自分たちのサッカー、良いサッカーをして勝つ。変わった流経大柏が全国制覇への大きな関門を突破:千葉

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流通経済大柏高が逆転で3年ぶりV

[11.14 選手権千葉県予選決勝 流通経済大柏高 2-1 市立船橋高 柏の葉]

 自分たちのサッカーをして、良いサッカーをして、勝つ――。流通経済大柏高は宿敵・市立船橋高相手に逃げることなく、自分たちのサッカーを表現。ミスからの失点も乗り越えて、逆転で全国制覇への第一関門を突破した。

 榎本雅大監督は「この試合に勝てば全てOK、勝てばOKというふうにはしたくなかった。勝つためには良いサッカーをしなければいけない。良いサッカーをすれば勝てる、と選手をそういうマインドにしたかった」と説明する。

この日は前半から、自分たちが取り組んできたボールを大事にしながら、相手の嫌なところ、嫌なところを突いて行く攻撃、また相手を飲み込むようなプレッシング、デュエルにチャレンジ。だが、徐々に表現でき始めたところでGKデューフエマニエル凛太朗(2年)にミスが出てリードを奪われてしまう。

 相手は市立船橋。簡単に取り返せる相手ではない。それでも、選手たちからは「大丈夫、大丈夫」という声が出て、前を向いて1点を取り戻しに行った。榎本監督が選手たちに求めてきたことの一つが、今回のような「困難な状況で何かができる選手になること」だ。

「難しい状況になった時に逃げるんじゃなくて、そういう時に何かできないかと努力できる人間になって欲しい」。0-3で敗れたインターハイの大津高(熊本)戦では開始直後に失点し、自分たちのサッカーを見失って完敗。だが、この日は焦ってしまうのではないか、という指揮官の不安を良い意味で裏切った。

 今大会は初戦で関東大会準優勝校の日体大柏高に先制されながらも逆転勝ち。準決勝で専修大松戸高に2度追いつかれ、PK戦では先に外しながらも乗り越えて勝利している。ビハインドを跳ね返すパワー、逞しさを身に付けていたチームは、「(上手く行かなくても)自分たちのサッカーをやるんだぞと変わったと思います」(榎本監督)。失点直後も勝たなきゃと焦るのではなく、良いサッカーをすること、ボールを動かすことを徹底し、前半のうちにMF高足龍(3年)の2発で逆転。後半は市立船橋がボールを握る時間を増やしたが、選手たちは自分たちがやるべきことから逃げなかった。

 この日はキーマンの一人であるMF 小林恭太(3年)が不在だったが、MF渋谷諒太主将(3年)やMF 松本洋汰(3年)、FW川畑優翔(3年)が市立船橋高の厳しいプレスの中でもボールを繋ぎ、FW清水蒼太朗(3年)をはじめとした各選手がハードワークを継続。特に後半は榎本監督が「全国行きたかったら走れと。とにかく走るとという気持ちが後半出ていたし、彼らの努力してきた分、それが全て出たと思います」と頷くように、非常に気持ちの込もった戦いdでもあった。

 選手たちは、決勝こそ必ず自分たちのサッカーをやり通すという意識があったようだ。準決勝までは、どこかで受けに回ってしまっていたことも否定できない。だが、渋谷は「(今大会序盤はまだ)自分たちのサッカーをやる自信がなかった。決勝の週は(仮に)負けるならば、自分たちのサッカーをしようと。ベンチのみんなも自分たちのボールを動かす、速いプレスを意思統一できたからこの結果に繋がったと思います」。もちろんパーフェクトな内容ではなかったが、市立船橋相手に自分たちのサッカーをやり切って勝ったことは今後への自信にも繋がるはずだ。

 榎本監督は名将・本田裕一郎前監督の後任として就任してから2年目で初の選手権出場。伝統的な強さを受け継ぎながら、“新しい流経”を表現して千葉を制覇した。だが、目標はここではない。「千葉県を勝ち抜けばOKじゃなくて、全国優勝をするチームを作る。まだその旅の途中だと思っています。大目標である日本一を取りに行きたい。まだまだ成長できると思います。もう1ランク、2ランク上がると思う。(勝って)千葉県に良い報告をしたい」。インターハイ王者の青森山田高(青森)や前評判の高い静岡学園高(静岡)、そして大津相手であっても、この日のように上手く行かない時間帯があっても、流経大柏は自分たちのサッカーをして、良いサッカーをして勝つ。

(取材・文 吉田太郎)
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