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ボトムアップを支える不動のキャプテン。堀越MF宇田川瑛琉はチームの中心に堂々とそびえ立つ

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堀越高のキャプテン、MF宇田川瑛琉(左)は双子の弟・DF宇田川侑潤とともに再び全国の舞台へ!

[11.13 選手権東京都予選Aブロック決勝 國學院久我山高 2-4 堀越高 駒沢陸上競技場]

 普通のチームのキャプテンとは役割が違う。戦い方も、選手交代も、最終的な決断はすべて任されている。プレッシャーは小さいはずがない。前年度のチームが結果を残していたから、なおさらだ。

「ここからまだまだ自分たちの成長速度を上げていくのと、今日試合に出られた人、出られなかった人がいた中で、これから1か月間ちょっとですけど、そこで競争し合いながら、目の前の試合に勝てるように、負けないために準備していきたいと思います」。

 2021年の堀越高を牽引してきた不動のキャプテン。MF宇田川瑛琉(3年=東京ヴェルディジュニアユース出身)は優勝が決まったタイムアップの瞬間、重ねてきた苦労と責任を果たした安堵の混じった涙を、そっと拭っていた。

 全国の舞台へ返り咲くために、國學院久我山高と対峙した東京ファイナル。「自分たちで『入りを大事にしようね』という話をしていたんですけど、良い入りができました」。宇田川もそう振り返ったように、堀越は最高の前半を作り出す。

 10分にはMF古澤希竜(3年)のアシストで、MF山口輝星(3年)が先制弾。22分にはDF中村ルイジ(3年)が正確な右CKを蹴り込むと、FW高谷遼太(1年)が豪快なヘディングで2点目。さらに、31分にはカウンターから高谷のリターンを受け、山口がきっちり3点目。今シーズンの攻撃陣を支えてきたタレントが躍動し、大きなアドバンテージを握ってハーフタイムを迎える。

 堀越の選手は、ロッカールームに戻らなかった。全員でベンチに座り、宇田川が作戦ボードを手に話す、いつも通りの光景が繰り広げられていた。その理由をキャプテンはこう明かす。「ロッカールームに戻らなかったのは時間の削減です。自分たちが主体となって試合を進める中で、より自分たちのために時間を使いたかったので、ロッカールームには行かないで、ベンチで話し合いをやりました」。

「内容は、前半の獲れるところで点を獲れたという良かったところを振り返るのと同時に、点が獲れたのは変な言い方ですけどマグレみたいなものなので、しっかり頭を0-0だという意識に切り替えることと、守備のところで比較的プレスはできていたんですけど、ボールを取るところで少し後手に回っているのと、全体としてどこでボールを取るのかの共通認識が少しできていなかったので、そこを考えることと、攻撃はもっとシンプルに、向けるところは前を向こうという話をしました」。まさにピッチ上の指揮官。ただ、これはあくまでも通常営業。これをキャプテンは1年間繰り返してきた。

 後半は一転して國學院久我山ペース。2点を返され、さらに鋭い攻撃にさらされるが、堀越は慌てず、冷静に時間を少しずつ潰していく。そこにはインターハイ予選準決勝の帝京高戦で、後半終了間際に追い付かれ、延長の末に全国切符を逃す経験が、確実に生かされていた。

「インターハイではラスト40秒で失点して追い付かれて、延長戦で失点して負けたことで、チームとしては具体的に『運動量を上げよう』と。ラスト一歩のところで踏ん張れないというのが課題だったので、そこのところを詰めるとともに、チームの統一意識を全員で考えながらやってきました」。耐えるところは耐え、攻めるところは攻める。相手の反撃を凌ぎ続け、ラストプレーで古澤が4点目を叩き出して、タイムアップ。チームを束ねてきた宇田川は、静かに東京制覇の味を噛み締めた。

 1年前。全国の3試合で味わった感覚は、自分の中でもまだ確かなものとして残っている。「全国の基準というのを肌で実感したので、それは常に忘れちゃいけないことで、心の中にしまっておくべきかなと。たまにあの時を思い出したりして、まだまだ自分の成長すべき課題を励みにしながら、常にプラスに捉えてきました。今の状態ではまだまだですし、やるべきことはたくさんありますけど、去年を肌で経験した選手もいるので、そこは自分たちの経験を強みにしていけたらとは思っています」。

 土台は着々と整っている。自分なりのキャプテン像も、時間を掛けて一歩ずつ確立してきた。全国8強のその先へ。昨年超えを狙う堀越の輪の中心には、常に宇田川が逞しくそびえ立っている。

(取材・文 土屋雅史)

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