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トランジションこだわり決勝点演出…長友を脅かすDF中山雄太「まだ僕の理想のSBでもない」

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DF中山雄太(ズウォレ)

[11.16 W杯アジア最終予選 日本1-0オマーン マスカット]

 日本代表の決勝ゴールは、若きサイドバックの積極的なポジション取りから生まれた。

 後半36分、左サイドを攻め込んだMF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ)のクロスボールは相手ディフェンスに阻まれたが、ここでDF中山雄太(ズウォレ)が迷わず前進し、相手の縦パスを再奪取。これを起点にすぐさま二次攻撃につなげると、三笘のクロスをMF伊東純也(ゲンク)が押し込み、待望の先制点が入った。

 中山は東京五輪に臨んだU-24日本代表でも三笘と共にプレーしており、個性は熟知している間柄。「薫の特長はドリブルでの1対1なので、近い位置でサポートすることで、ボールを失った時も二次攻撃につながるポジションを取っておこうと思っていた」と特長を踏まえたポジション取りを意識していたようだ。

 また中山にとって、得点の場面は東京五輪以降に積み上げてきた「トランジション」(攻守の切り替え)意識の賜物だった。

「オリンピックの反省として、前の選手が薫や相馬の時に、縦に速い選手に『行ってこい』という状況が多かったので、できるだけその選手について行って、失った状況を二次攻撃につなげられるポジションを探っていた。どれくらいの距離がいいのか、自分のスピードに対してどれくらいがいいのかを探っていて、そこの意識が最近クリアになってきた」。

 その結果が決勝ゴールの場面に結実。三笘へのパスについては「パス自体は弱くて、薫のおかげで良いパスに見えた。薫に助けられたので、パスの質はこだわっていきたい」と課題を述べつつも、「トランジションは良かった。結果的にボールを奪えて得点に繋がったので評価したい」と手応えを語った。

 ポゼッション攻撃の場面でも大外に張る三笘に対し、やや中央に絞り気味の適切な距離感でサポートしていた中山。「薫は1対1は絶対に勝ってくれると思っていたので、相手のサイドハーフが薫にヘルプに入れない状況を作ろうと思っていた。サイドハーフが戻った時は僕がフリーだったのでうまくアイデアを出しながら、相手が的を絞れないシーンを作れていたと思う」と明確なプレービジョンも光った。

 こうした数々のトライにより、DF長友佑都(FC東京)を脅かす存在になっているのは間違いない。もっとも、中山は自身の現状について「まだまだ僕の理想のサイドバックでもない」と謙虚に語る。

 中山によると、目指しているのは「守れて、ゲームが作れて、なおかつみんなのサイドバックのイメージにあるような上下動ができる」ようなサイドバック。「今までそういうサイドバックもいなかったし、世界でも本当に少ない希少なタイプだと思う」という高い理想像を掲げ、努力を続けようとしている。

 オマーン戦では「薫みたいな個で剥がして脅威になっていく選手はあまり日本にいない選手なので、そこを最大限に活かしていくプレー」を意識し、三笘との連係に一日の長を見せた。だが、それに加えて「タイプの違う(南野)拓実くんとも一緒にやって違うプレーを見せたい」と強調。「今後誰が出ても、組む選手によって自分の特長が試合によって変わるのが理想。そこは日々頑張って、試合の時に見せられれば」と自信を示した。

 その先にこそ、A代表でのレギュラーも見えてくると考えている。

「サッカー選手として試合に出ることへの強い気持ちがあるので、日々レギュラーを取るため、成長するために頑張っているけど、まだまだスタートで使われないこともある。ただ、そこで何が足りないのか、どうすればスタメンに名乗り出られるのかを日々自分に矢印を向けてやれているし、少ない時間でもパフォーマンスを発揮しないといけないと思っている。いずれスタメンをしっかり奪取できるようにやっていきたい」。

 ここまで4試合連続の途中出場で、本大会に向けてレギュラー奪取の期待もかかる中山。来年1月に再開する最終予選でさらに出場機会を広げるべく、「勝って嬉しい気持ちより、先が続いていくので、いい状態で課題をより見つめられる結果で終われたと思っている。いまは次どうするか。今日とベトナム戦で得た課題をどうするかというマインドでいる」と先を見据えた。

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