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「前回の仕返しをしよう」。逞しく成長を重ねた清水ユースが青森山田との激闘を制し、今季初の首位浮上!

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清水エスパルスユース青森山田高との激闘を制して首位浮上!

[11.21 プレミアリーグEAST第16節 青森山田高 0-2 清水ユース 青森山田高G]

 想いを、秘めてきた。ホームで突き付けられた完敗から6か月。この試合を、待ち侘びてきた。

「選手には言い方は悪いですけど、『前回の仕返しをしよう』と。『オマエらも当然そう思っているよな。じゃあやろう。やっぱりやられた分は、しっかりサッカーで返そう。5月からここまで長かったな。その間にオレたちも成長しているはずだから、それを思い切って出そうよ』と言っていたことが、今日こういう結果で出せたので良かったです」。(清水ユース・岩下潤監督)。

 白熱の首位攻防戦は、アウェイのオレンジ軍団に軍配。20日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第16節、勝ち点31で並ぶ青森山田高(青森)と清水エスパルスユース(静岡)が対峙したビッグマッチは、エースのFW千葉寛汰(3年)が圧巻の2ゴールを奪い、清水ユースが2-0で勝利。暫定首位へと浮上している。

「やっぱり前回は負けていたこともあって、みんな気合が入っていました」とトップ昇格が内定している清水ユースのDF菊地脩太(3年)。 5月23日。清水で行われた前回対戦は、アウェイの青森山田が3-1で快勝。無敗同士の決戦を制した青森山田は、それからずっと首位をキープしてきた。「自分たちもここを叩けば優勝に王手ということで、気合は入っていました」と青森山田のキャプテンを務めるMF松木玖生(3年)。それぞれに負けたくない一戦は、序盤から局面で激しいバトルが繰り広げられる。

 前半8分は青森山田。MF藤森颯太(3年)は左にサイドを変え、MF小原由敬(3年)のパスからMF田澤夢積(3年)がクロス。ニアに飛び込んだ松木のシュートは、清水ユースのGK中島惇希(3年)がキャッチするも、攻撃のキャストが軒並み絡む好フィニッシュ。24分は清水ユース。MF金子星太(3年)の右クロスから、こぼれを叩いたMF安藤阿雄依(2年)のシュートはわずかに枠の左へ外れたが、惜しいシーンを創出する。

「入りで飲まれなかったというのが1つ大きかったかなと。最初からしっかり臆することなく、自分たちのビルドアップができました」と千葉が話したように、清水ユースはキャプテンのMF鈴木奎吾(3年)を中心に、きっちり最終ラインから繋ぐスタイルを徹底。一方の青森山田は「カウンターも何本か良い形で作れていた場面がありましたね」と松木。素早い切り替えからの速攻は、常に脅威をオレンジの守備陣に与え続ける。

 31分は青森山田。小原、FW名須川真光(3年)と繋ぎ、田澤のシュートは中島が何とか弾くと、こぼれ球をDF田端琉聖(3年)が懸命にクリア。37分も青森山田のカウンター。名須川がドリブルでグングン運び、並走したMF宇野禅斗(3年)の枠内シュートは中島がキャッチ。38分は清水ユースに決定機。右SB渡邊啓佳(2年)の完璧なクロスに、千葉が飛び込むもボレーはヒットせず。「前半はバランスも凄く良かった」と黒田剛監督も認める青森山田ペースで推移した最初の45分間は、スコアレスで折り返す。

 一転して、後半はにらみ合いが続く。どちらも攻撃がシュートまで至らない展開の中、「前半に関しては丸山選手とのマッチアップは全部負けていたんじゃないかというぐらい、自分の中では納得が行っていなくて。でも、『ゴールを獲ればすべてが引っ繰り返る』と思っていました」というオレンジのストライカーが、その得点感覚を一瞬で解き放つ。

 後半24分。清水ユースは左サイドでDF石川晴大(2年)が入れたスローインの流れから、千葉が落としたボールを鈴木が思い切りよくシュート。DFに当たったボールは、9番の足元に転がってくる。「ファーストタッチが凄く良い所に置けて、その瞬間に時が止まったような感じがしたんですよね」。左足のインサイドで蹴り込んだシュートがゴールネットを揺らす。1-0。『すべてを引っ繰り返す』千葉の一撃で、スコアが動いた。

 青森山田が攻める。今季最後のホームゲーム。負けられない。27分。藤森の左CKに、丸山が高い打点で打ち下ろしたヘディングは枠の左へ。38分。藤森のフィードをFW小湊絆(2年)が頭で繋ぐと、FW渡邊星来(3年)がスーパーなコントロールからボレーを放つも、ここは「『絶対に止める』という想いで止められました」と振り返る中島が超ファインセーブ。39分。途中出場のDF多久島良紀(2年)の左ロングスローから、渡邊が叩いたボレーはゴール左へ。再三掴む決定的なチャンスを仕留め切れない。

 激闘に決着を付けたのは、やはりこの男だった。41分。中央で千葉が収め、受けた安藤は丁寧に右へ。上がってきた渡邊は、ここも丁寧にピンポイントクロスを送り込む。「相手の視野から外れて、クロスを上げるタイミングで前に入り込むというところは意識していました」。舞った9番のヘディングは、左スミのゴールネットを鮮やかに揺らす。

「やっぱり千葉寛汰はストライカーですよね。嗅覚を持っているし、一発中の一発をしっかり決めるあたりは、さすがだなと」。敵将の黒田監督も認めた千葉の追加点で勝負あり。「試合が終わった時は正直覚えていないぐらいの感情でしたけど、本当に周りを見たらみんながガッツポーズをしていて、喜んでいる選手もいて、『本当に全部出し切ったんだな』って思いました」(菊地)。清水ユースが2-0で青森山田を下し、2試合消化は多いものの、暫定首位に立つ結果となった。

「試合に勝ったり負けたりしながら積み上げたものがあって、いろいろな課題がありながらそれを引き出しにしていくということが、リーグ終盤になって、ゲームの中で話をしながら変わったりとか、意識したりできるようになってきたというのは、やっぱり成長の証かなと思います」。試合後。勝利の感想を問われた岩下監督は、まずこの言葉を発している。

 中でもちょうど半年前に敗れた青森山田との90分間は、改めてサッカーの本質的な部分を彼らに教えてくれたと言っていいだろう。「前回はどちらかと言うと、競り合いで本当に吹っ飛ばされたりとか、球際の所で足を出されて取られたりというのが多かったんですけど、今日はそれも1回やっていて想定内というのもありますし、リーグ戦で積み上げてきたものの中で、『競り合いの仕方、ボールの守り方、隠し方、関わり方でオレたちが上回りたいな』という話もしていたので、そういう球際の部分も含めて。成長しているのかなと思います」(岩下監督)。

 もちろん局面の競り合いでは、青森山田が上回るシーンも少なくなかったが、鈴木が、MF山田理矩(2年)が、時には千葉やFW斉藤柚樹(2年)もプレスバックから、ルーズボールへ必死に食らい付く。「セカンドの部分で相手の方が上回っていたかなという印象です」と認めたのは、青森山田の藤森。相手の土俵に乗っても、この日の清水ユースは逞しく立ち回り続けた。

 アウェイでの大一番に会心の勝利。だが、指揮官に慢心の気配はまるでない。「まずは1試合1試合ですね。オレらは目の前の試合を全力でやって、また課題を出して、その繰り返しをやるチームなので、『それで成長してきているよね』というところが、やっぱり大事なのかなと思います」。

 成長の先にある勝利を積み重ねて、今シーズン初の首位奪取。清水ユース、強し。

(取材・文 土屋雅史)
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