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[MOM3687]清水ユースFW千葉寛汰(3年)_敵将も認める得点感覚。「すべてを引っ繰り返す」ストライカーが青森山田相手に2ゴール!

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圧巻の2ゴールで大一番の勝利に貢献した清水エスパルスユースFW千葉寛汰

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.21 プレミアリーグEAST第16節 青森山田高 0-2 清水ユース 青森山田高G]

「2点目はあの動き出しがチバカンの特徴かなと思うんですけど、『これがストライカーだな』という感じはしますね」(青森山田・松木玖生) 「やっぱり千葉寛汰はストライカーですよね。嗅覚を持っているし、一発中の一発をしっかり決めるあたりは、さすがだなと」(青森山田・黒田剛監督)。最強のライバルがこう認めるのだから、やはりスペシャルなストライカーだと言わざるを得ない。

 清水エスパルスユース(静岡)不動の9番。FW千葉寛汰(3年=清水エスパルスジュニアユース出身)の得点感覚が、大一番でも眩く輝いた。

 勝ち点で並ぶ青森山田高(青森)とアウェイで対峙するビッグマッチ。千葉は前半からチームの出来に手応えを感じていた。「入りで飲まれなかったというのが1つ大きかったかなと。山田の特徴としては気迫や勢いで前半から入ってくると思うので、自分たちはそれに勝る技術があると自信を持って試合に入りましたし、最初からしっかり臆することなく自分たちのビルドアップができました」。

 ただ、自分の出来にはまったくと言っていいほど納得がいっていなかった。「前半に関しては丸山選手とのマッチアップは全部負けていたんじゃないかというぐらい、自分の中では納得がいっていなくて。でも、『ゴールを獲ればすべてが引っ繰り返る』と思っていましたし、みんなが身体を張って、チームのために懸命に走ってやってくれた中で、自分が何もしないということは絶対にないと。自分の責任はやっぱり点を獲ることなので」。

 決定機も外していた。前半38分。右サイドからMF渡邊啓佳(2年)がピンポイントクロス。フリーで走り込んだものの、シュートは足に当たらない。だが、気持ちはすぐに前を向いていた。「普段だったら引きずったりする時もあるんですけど、今日はもう良い意味で吹っ切れて、『次に決めればどうでもいいや』とうまく切り替えができたからこそ、次のチャンスに集中できたのかなと思います」。

『すべてを引っ繰り返す』チャンスが訪れる。後半24分。左サイドのスローインから、鈴木が得意の左足で叩いたシュートがDFに当たると、ボールは自らの足元へこぼれてくる。その瞬間。思考も、視界も、とにかくクリアだった。「ファーストタッチが凄く良い所に置けて、その時に時が止まったような感じがしたんですよね。みんなから『凄く冷静だったね』と言われたんですけど、ニアがメチャメチャ空いていて、冷静に決められたかなと思います」。貴重な先制点を叩き出す。

 “2度目”は絶対に逃さない。後半41分。右サイドから再び渡邊が完璧なクロスを届けると、完璧にマークを外した千葉が宙を舞う。「相手の視野から外れて、クロスを上げるタイミングで前に入り込むというところは意識していました。クロスが100点満点で自分は決めるだけだったので、クロスの質と自分の駆け引きが生んだゴールだったかなと思います」。ストライカーの仕事、完遂。青森山田を自らの2得点で沈めた千葉を中心に、オレンジの笑顔が広がった。

 プレミアリーグEASTでは得点ランキングトップを独走する16ゴールを挙げているが、その半分の8ゴールはヘディングで奪ったもの。本人はその理由を“駆け引き”だと説明する。「フィフティフィフティのシーンでヘディングに競り勝つというシーンはあまりなくて、いったん視野から消えて相手の前に入り込んだり、いきなり前に行ってファーに膨らんだりと、いうことは考えています。その駆け引きが自分で上手いというのはアレですけど(笑)」。

「自分は背も高いわけではないですし、ヘディングも決して強いわけではないので、その部分がなくなったら勝負できないと思いますし、駆け引きのところに注目してもらえたらいいなと思います」。そう言い切った後に、笑顔で付け足した言葉にエスパルス愛が滲む。「本当に小さい頃に岡崎慎司選手に憧れて、自分でダイビングヘッドとかをメチャメチャやっていたので、それで駆け引きが身に付いたんじゃないですかね(笑)」。

 来季からの昇格が内定しているトップチームでも既に練習を重ねているが、まだまだ成長の余地を痛感しているという。「トップの練習に参加する前までは、『点を獲ればいいや』というマインドだったんですけど、やっぱり自分のできることが少な過ぎるというか、点を獲るだけではやっていけないですし、守備のところ、ポストプレー、チャンスメイク、すべてにおいてレベルを上げないといけないと思いました」。

「ユースでは点を獲れても、トップに行った瞬間に一番下からのスタートになるので、そういう意味では今日は全然納得がいっていないです。点は獲れましたけど、収まっていないですし、守備ももっと走れたし、という意味ではまだまだかなと思いますね」。この課題は1年を通じて、常に口にしてきているもの。とはいえ、やはり彼には他の誰もが持ち得ない唯一無二の特徴を、より際立たせていくことを期待したくなる。

『すべてを引っ繰り返す』ストライカー。千葉の得点感覚は、清水の未来を、そして日本の未来を明るく照らし得るだけのポテンシャルを、十分に有している。

(取材・文 土屋雅史)
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