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初めての年代別代表で得た収穫。青森山田MF藤森颯太は目の前のピッチを全力で走り続ける

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青森山田高のスピードスター、MF藤森颯太

[11.21 プレミアリーグEAST第16節 青森山田高 0-2 清水ユース 青森山田高G]

 初めて味わった年代別代表の舞台は、まだまだだという感覚と、十分できるという手応えと、その両方を改めて自身に与えてくれた。だからこそ、この手に入れた収穫を残された1か月半で、すべてチームに還元したい。

「こうやって初めて代表に呼ばれて、さらなる高みを目指して個人でもレベルアップしたいですし、それを踏まえた上で自分が体験したものを、この青森山田に促していきたいですし、これからのプレミアや選手権に向けて、練習からコミュニケーションを上手く取って、自分がチームに良い影響を与えられたらなと思っています」。

 青森山田高を右サイドで牽引している強気なアタッカー。MF藤森颯太(3年=青森山田中出身)は前だけを見据えて、これからも全力で自分の立つべきピッチを走り続けていく。

 勝ち点で並ぶ清水エスパルスユース(静岡)との大一番。この試合の大切さは、藤森も十分過ぎるほど感じていた。「どちらも負けられない試合であることは当然で、結局試合どうこうという内容よりも、結果が求められてくる試合というのは自分たちもそうですし、相手の選手たちも話していたと思うんですけど、こっちも総力戦という話をしながら戦っていました」。いつも通りの気合を入れて、ホームのピッチに歩みを進めていく。

 相手には先日までU-18日本代表候補合宿で、一緒にボールを追い掛けた“チームメイト”がいた。「千葉寛汰選手も菊地脩太選手も仲良くなって、その時も『負けられないね』『バチバチやろう』みたいなことは話していたので、おそらく球際だったり負けられないところはバチバチ来るんだろうなとは思っていました」。

 だが、結果は0-2での敗戦。「自分たちは今まで公式戦で1点も獲れない試合はなかったんですけど、無得点ということで前線の選手としては悔しいですし、ゼロで行くというコンセプトを掲げてここまでやってきたんですけど、その守備の面ではしっかり2点決められて、負けたのは悔しかったです」と藤森も唇を噛み締める。

 この日は首位攻防戦という位置づけと同じくらい、ある理由で重要な1試合でもあった。「今季のホームゲームがラストということはわかっていましたし、その中でこうやって応援してくれる仲間だったり、保護者の方も見にきてくれる方が多い中で、自分たちには責任や使命感があるので、勝利の喜びをみんなで分かち合いたかったというのは正直ありますけど、この結果は自分としてはプラスに捉えていて、またイチから山田の土台を構築しながら、積み重ねていって、これからのプレミアや選手権を獲っていければいいかなと思います」。今回が6年間を過ごしてきた“ホームグラウンド”でのラストゲーム。それも含めて勝ちたかったが、すぐに強気な言葉で前を向くあたりもこの人らしい。

 前述したように、今月18日まではU-18日本代表候補合宿に参加してきた。「自分自身代表が初めてということで、最初は緊張感もあったんですけど、(宇野)禅斗が一緒に行くということで頼れる存在がいたので、そこは安心して行けた部分もありました(笑)。実際に行ってみると、話したことはなかったですけど顔見知りだったような、今まで対戦してきたライバルたちが多くて、向こうから話しかけてきてくれた部分もあって馴染みやすかったです」。

「トレーニングをやってみて、やっぱり止める蹴るの技術は高いですけど、山田でやっていることを十分出せればやれるかなという印象でした。ただ、大学選抜と試合をした時は、自分は1対1が得意で、高校生が相手だと結構抜けたり、クロスまで行けたりするんですけど、大学生となると間合いの取り方が上手かったり、身体を入れられてしまったりすることを肌で感じて、この経験が自分の意識レベルや基準を高めてくれたので、これからのサッカー人生を歩んでいく中では本当にプラスになったかなと思います」。新たな感覚を身体に刻み、高校最後の1か月半に向き合っていく。

 ここからはまさに6年間の集大成。目指すのは自分たちだけに許された“偉業”のみ。「今日の敗戦は全然マイナスじゃなかったと思っていますし、(大戸)太陽のケガもあったり、多久島(良紀)もケガで出られなかったり、この敗戦も含めて三冠に向けてまたチームが1つになるために必要なものをサッカーの神様が教えてくれているのかなというか、またチーム一丸にならなきゃいけないんだぞというのを知らせてくれているのかなとは感じています。最後はみんなで笑って終わりたいですね」。

 覚悟は決まっている。みんなで笑って、高校サッカーを終えるために。タイムアップのホイッスルが鳴るその瞬間まで、藤森の全力疾走が止まることは、決してない。

(取材・文 土屋雅史)
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