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積み重ねた努力は裏切らない。前橋育英GK渡部堅蔵は旧友たちの想いも背負って最後の1か月へ向かう

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前橋育英高の絶対的守護神、GK渡部堅蔵

[11.28 高円宮杯プリンスリーグ関東第17節 三菱養和SCユース 1-1 前橋育英高 三菱養和会 巣鴨スポーツセンターG]

「自分は身長がないので、守備範囲は課題だと思っているんですけど、これから相手のレベルも上がっていく中で、ハイボールに出られないと試合にも出られないので、そういうところは練習から意識して取り組んでいますし、トレーニングは誰よりもやってきているので、その練習量には自信があります」。

 相手のシュートに対する抜群の反応速度に、果敢に飛び出す目を持つ広い守備範囲。勝利を義務付けられた上州のタイガー軍団、前橋育英高(群馬)を最後尾から引き締める守護神。GK渡部堅蔵(3年=前橋FC出身)の積み重ねてきた努力が、一番大事なシーズン終盤に差し掛かり、素晴らしい形でチームの結果を引き寄せている。

 勝利すればプレミアリーグプレーオフ進出が決定する大一番。三菱養和SCユース(東京)との一戦でも、渡部の安定感は群を抜いていた。ハイボールにはことごとく絶妙のタイミングで飛び出し、的確にキャッチ。ディフェンスラインの背後を狙われたロングボールも、きっちり自分のプレーエリアで処理していく。

 1点を先制した直後の前半45分。スルーパスに抜け出した相手FWとの間合いを一気に詰め、決定的なピンチを凌いでみせる。「背後のカバーリングだったり、クロスの対応は練習から意識しているので、守備範囲は広くなっているのかなと思います。予測とポジショニングを意識して、相手をよく見てプレーするというのは練習からもやっていますね」。これも練習の積み重ねの賜物。それが自分を裏切らないことも、誰より良く分かっている。後半アディショナルタイムに同点弾こそ決められたものの、GKにとってはノーチャンスの一撃。勝ち点1を獲得したチームは、プレミアプレーオフ進出権を獲得。試合後の渡部の表情にも、笑顔が広がった。

 5日前の選手権予選決勝。桐生一高(群馬)との一戦は、群馬出身の渡部にとっても、昔からよく知るメンバーが揃う相手と対峙した特別なゲームだった。

「自分が小学校の時に、前橋ジュニアとは全少の県大会決勝で自分のいたファナティコスと対戦しましたし、小学校の頃から競い合ってきたライバルでしたね。浅田(陽太)、竹田(大希)、小林(凌大)は小学校から何度も対戦していますし、高1の国体では一緒のチームでやっていて、負けたくないゲームでした」。

 中でもFWの吉田遥汰(3年)は前橋FCのチームメイトとして、前橋育英のキャプテンを務めるDF桑子流空(3年)と一緒に3年間をともにプレーした間柄。後半に吉田が足を攣らせた時、桑子が“旧友”の足を伸ばし、渡部が声を掛けに行ったシーンが印象的だった。「吉田遥汰から『頑張って』というLINEが来ました」。ここまで戦ってきたライバルたちの想いを背負って、晴れ舞台へと挑んでいく。

 前述したように、桑子は中学時代からの盟友。「最悪シュートを打たれても、後ろには堅蔵がいて、そこは中学からの信頼感がありますし、自分は本当に堅蔵を信頼しているので、攻撃的な守備ができるんです」と語る桑子に対して、「もうコンビを組んで6年目ですからね。アイツはキャプテンシーもありますし、頼りがいがあるので、抜かれたら最後は自分が止めるという気持ちでやっています」と渡部。この2人が築く堅陣を崩すのは、全国の猛者であってもそう簡単なことではない。

 プレミアプレーオフに、選手権。大きなステージが待っているこれからの1か月。渡部は冷静に、力強く、見据える目標を口にする。「育英はまだプレミアを経験していないので、自分たちの代で上げるチャンスがあるのというのは大きいと思いますし、あと2つしっかり勝てば決まるので、一戦一戦を大事にして、勝ちにはこだわっていきたいです。選手権では、結果とプレーの細部にこだわって、高校選抜にも選ばれるぐらいやりたいですし、この身長でもできるんだということを証明したいと思っています」。

 不断の努力で、確かな自信を纏ってきた守護神。前橋育英が新たな歴史を築くためには、渡部の活躍が必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)
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