[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.5 プレミアリーグEAST第18節 FC東京U-18 0-2 青森山田高 FC東京小平G]

『きらきら星は不思議な力』とはよく言ったものだ。心の夢を祈り、願いを込めれば、きっといつか叶う。青森山田の“きらきら星”が、このシーズン最終盤に来てキラキラと輝き始めている。

「『ああ、やっぱり点が獲れるんだ』って感じられてきたかなと。得点感覚はたぶん戻ってきていると思うので、スタメンで出ても出なくても、自分がチームを勝たせるという気持ちで頑張りたいです。やっぱりフォワードって結果がすべてなので」。

　青森山田高(青森)で研鑽を積む、笑顔の似合うストライカー。FW渡邊星来(3年=刈谷JY出身)のゴールが、止まらない。

　きっかけは“屈辱の24分間”だった。11月21日。ホームで迎えた首位攻防戦。清水エスパルスユース(静岡)との大一番に途中出場を果たした渡邊は、3度訪れた決定機をことごとくモノにできず、チームも0-2で敗れてしまう。相手のエース、FW千葉寛汰(3年)は2ゴールで勝利に貢献。この試合における両者のコントラストは、残酷なまでに浮かび上がった。

「もう変わらなくてはいけない1週間だなって。『ストライカーの差で負けた』とたぶん監督も言っていたんですけど、『本当にそこだな』と思って、練習から1本中の1本のシュートを決めることを全力で頑張りました」。翌週の柏レイソルU-18(千葉)戦。渡邊の名前はスタメンリストに書き込まれる。汚名返上のチャンス。燃えないはずがない。

　そして結果は、圧巻のハットトリック。「凄く嬉しかったです。ここ最近はスタメンで出れていなかったので、やっと結果を残せたのかなと思いますし、『自分、ナイス』って思いました(笑)」。がけっぷちのストライカーが、眩い光を放った。

　自ら手繰り寄せた“3点”が、すべてを変える。「前回の試合から今日の試合まで、この1週間は本当に気持ち良く練習できました。レイソル戦の前までは自分の得意なことがなかなかできなくて、収めることとか苦手な部分で負け続けて、ビビっていたんですけど、レイソル戦で久々にスタメンを獲って、得意なターンができたり、シュートを3点決めたということが凄く大きなことでした」。

　FC東京U-18(東京)のホームに乗り込んだこの日の一戦も、2試合続けてスタメン起用。相棒のFW名須川真光(3年)と前からのプレスに奔走しつつ、虎視眈々と得点の機会を狙い続ける。

　前半31分。その瞬間がやってくる。高い位置でボールを奪ったMF松木玖生(3年)は、「星来が良い体の向きを作ってくれたので、そこに配球することができました」と絶妙のスルーパス。ボールを受けた17番は、冷静に周囲の動きが見えていた。

「玖生からパスが来た時は、もう1回ゴールを見ていたんです。最初はキーパーがニアにいて、打とうと思ったらディフェンダーが足を出してきて股が見えたので、そこにシュートを打ったら、うまく流れていったかなという感じです」。左スミのゴールネットを軌道が貫く。2戦連続のゴールに、しっかり決めた“クリロナ”ポーズ。そこには自信なさげにピッチをさまよっていた2週間前までの残像は、微塵もない。試合も2-0で快勝。渡邊のゴールが、チームに大きな勝ち点3をもたらした。

　ここに来て渡邊には、もう1つの目標ができつつある。実弟のDF渡邊来依(2年)が3試合続けてのベンチ入り。兄弟で同じピッチに立つ可能性が浮上してきたのだ。「今日は自分も結構長く出ていたので、『出てくるかな』と期待していた部分もあったんですけど(笑)、出てこなかったですね。一緒に出たいなという強い気持ちはあります。『凄く似ている』と青森でも言われているので(笑)」。前節は来依が途中出場を果たしたものの、兄は既にピッチを去っていたため、“ニアミス”に。兄弟同時出場も視野に入れながら、もちろんそれ以上に目指すのはチームの勝利。そのスタンスはいつだって変わらない。

「残りはあと1か月しかないですけど、チームとしてはまだ全然レベルアップできると思いますし、たぶん自分たちが一番成長しているという実感があります。ここからはチームプレーも成長しつつ、チーム全員がスキルアップしていって、選手権では一番強い青森山田を見てもらえるように頑張りたいと思います」。

　青森山田が誇る“きらきら星”。自身の願いも、チームの願いも、すべてを叶えるため、渡邊は残された1か月も、笑顔とゴールを積み重ねていく。

(取材・文　土屋雅史)

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