beacon

この男、速いだけではない。仙台育英FW佐藤遼はゴールを獲るための最短距離を走り切る

このエントリーをはてなブックマークに追加

仙台育英高のスピードスター、FW佐藤遼

[12.10 プレミアリーグプレーオフ1回戦 前橋育英高 4-0 仙台育英高 エディオンスタジアム広島]

 決して速いだけではない。ゴールを奪うために、最も近くて、最も確実な道を選択できるだけの感覚も、十分に兼ね備えている。3年間の集大成。このチームで、結果を出したい。

「自分が十分にやれている自信はあります。ただ、さらに仲間たちとのコンビネーションを高めていきたいですし、(島野)怜からのスルーパスも今まで受け続けてきたこともあって、それを全国でもしっかり見せたいので、今以上に練習を重ねていきたいと思います」。

 仙台育英高(宮城)が誇るスピードスター、FW佐藤遼(3年=FC駒沢U-15出身)はこの日の敗戦を糧にして、さらなる成長を誓っている。

 前橋育英高(群馬)と対峙したプレミアリーグプレーオフ1回戦。全国屈指の強豪を相手に、なかなか良い形での攻撃を生み出せない。「前半は自分もうまくギャップを狙っていったので、堅い守備だったというのが印象でした」と振り返る佐藤にも、ほとんど前向きでボールが入らず。3つの失点を重ねて、ハーフタイムに折り返す。

「前半は判断の悪さが出て、シュートまで行けなかったんですけど、0-3という部分で、後半は開き直って、思い切ったことがやれました」。小さくないビハインドを負ったことで、チームも、佐藤も、ようやく吹っ切れた。前へ、前へ。本来の持ち味が少しずつ顔を覗かせる。

 後半22分には左サイドを縦に運びつつ、マーカーとの間合いを測りながらミドルにトライ。ここは相手GKに阻まれたものの、2分後にもやはりスピードでマーカーをぶち抜き、フィニッシュまで。ここも飛び出したGKのファインセーブに遭ったが、その能力の一端を披露する。

 さらに37分にも、今度は右サイドを単騎で切り裂き、強引にシュート。「後半にはチャンスがあって、それを決め切れれば良かったんですけど、あのチャンスをもっといろいろな形で広げていきたいなと思います」。結果的にゴールは奪えず、チームも0-4と完敗を喫したが、掴んだ手応えを自分のモノにすべく、佐藤はもう前を向いていた。

「自分たち攻撃陣が爆発できるように、この試合を糧に、そういう強さを付けていきたいですし、選手権に繋がる負けになればいいなと思います」と口にした通り、高校最後の大会が近付いている。1年時からピッチに立ち続けてきた佐藤にとっても、3度目となる集大成の大会。東京から杜の都の強豪へと進路を取ったストライカーは、周囲への感謝のステージだと位置付けている。

「色々な人に教えてもらったサッカーで、しっかり結果を残したいなと思いますし、自分が結果を残すことで、見てくれる人が喜んでくれるようにしたいです」。ただ、具体的な目標はあえて掲げていないという。「正直自分は何点獲ると決めてしまうと、それを上回った時に目標がなくなってしまいそうなので、もう1点1点、獲れるだけ獲りたいと思っています」。頼もしい言葉も飛び出した。

 卒業後は関東の大学に進学予定。まずは仙台育英で学んだことを、晴れ舞台で多くの人に披露し、その先はさらなるステップアップを期す。「もちろんプロには行きたいと考えていますし、やっぱりチームが苦しい時に結果を出せるようなフォワードになりたいと思っています」。

 そのスピード、規格外。理想を思い描き、追い求めてきた“フォワード道”を、これからも佐藤はひたすら突き進む。

(取材・文 土屋雅史)
●高円宮杯プレミアリーグ2021特集
●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP