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大分GK高木駿、劇的PKセーブも勝利気づかず「止めたらみんなが走ってきたので…」

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大分トリニータGK高木駿

[12.12 天皇杯準決勝 川崎F 1-1(PK4-5) 大分 等々力]

 等々力でのプレーに燃えていた守護神が大分トリニータの歴史を変えた。度重なるビッグセーブで史上初の決勝に導いたGK高木駿は試合後、「今日は自分でもびっくりするくらい良いプレーができた。等々力だといつも良いプレーができる。気持ちよくプレーができるし、川崎は本当に上手いので、楽しみながらやった。それでいいプレーができたかなと思う」と笑顔で振り返った。

 大卒ルーキー時代から足掛け3年間所属していた川崎フロンターレとの天皇杯準決勝。大分での5年目を迎えた高木は、かつての聖地で鬼気迫るパフォーマンスを発揮した。

 まずは前半25分過ぎ、MF脇坂泰斗とMF大島僚太のミドルシュートを立て続けに弾き出すと、前半アディショナルタイムにもFW旗手怜央の左足シュートをスーパーセーブ。後半28分、FWマルシーニョのカットインシュートも冷静に軌道をそらしてコーナーに逃げ、同35分にも華麗な崩しからのマルシーニョのフィニッシュに身を挺して立ちはだかった。

 延長戦も神がかり的なプレーは変わらず、延長前半10分に放たれた脇坂のキックも阻止。直後のMF家長昭博の決定的なヘディングも冷静なポジショニングでキャッチすると、同15分に迎えたFW小林悠との1対1でも完璧な飛び出しで相手にプレッシャーをかけ、シュートを枠の外に外させた。

 延長後半8分には小林に先制ゴールを割られたが、大分は決死のパワープレーで同点に追いつき、勝負の行方はPK戦へ。高木は2人目のDF山村和也のキックを正面でキャッチすると、止めれば終わりという7人目でDF山根視来のキックをストップ。片野坂知宏監督に「高木駿のビッグセーブがなければ敗退していた」と言わしめる大活躍で、クラブに初の快挙をもたらした。

 試合後、オンライン取材に応じた高木は「本当にみんなで勝ち取れた。全員が戦ったし、全員でゼロで抑えて、失点しても最後の最後に1点返せたのが今日は本当に大きかった」とチームメートの貢献を強調しつつ、PK戦での駆け引きを振り返った。PK戦の開始前には川崎Fのキッカーのデータを頭に入れていたが、最後は自身の感覚が活きたという。

「最近のデータを見せてもらったけど、キッカーに該当するのが知念と悠さんだけで……」。データにあったFW知念慶、FW小林悠にはいずれも逆を突かれた。そのため「一応データは入れたけど、みんな知ってる人が多すぎた。知念とかコヅ(MF小塚和季)とか悠さんとかはやりづらかった」と、大分や川崎Fでチームメートだった選手との対峙を苦笑いで振り返った。

 またPK戦が終わった直後、高木の喜びは控えめだった。その理由はサドンデスの勝利条件を把握していなかったからだという。

「今日は調子が良かったので止められるかなと思っていて、サドンデスになった時くらいからあまり何も考えていなかった。自分が止めて終了というのがわかっていなくて、止めたらみんなが走ってきたので、そうか、勝ったのか!みたいな感じでした」。当時の心境をコミカルに振り返った守護神は「逆にリラックスできてよかった」と笑顔で締めくくった。

(取材・文 竹内達也)
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