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「できているように見える」では終わらせない。人間的なパワーあふれる青森山田がプレミアEASTを堂々制覇!

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青森山田高がプレミアリーグEAST王者に!

[12.12 プレミアリーグEAST第12節 横浜FCユース 0-4 青森山田高 横浜FC・LEOCトレーニングセンター]

 決して派手なことをするチームではない。走る。寄せる。飛ぶ。蹴る。当たり前のことを、当たり前にやる。やるべきことを、きちんとやる。しかし、それを徹底して積み重ねることで生まれる圧倒的なパワーは、グループの輪をどんどん大きなものに成長させていく。その結果が、プレミアリーグEAST制覇であり、インターハイとの“二冠”達成である。

「今年の子たちは人間的にパワーもあるし、そのへんは我々指導者もビックリするぐらい、『そこまでお互いのことを言い合うか』というぐらいパワーを持っているので、そういうチームはやっぱり強いなと。今まで優勝してきたチームもみんなそうだったし、そのパワーが1つの方向に向いた時の強さというのはあるので、そこは改めて感じました」(青森山田・黒田剛監督)。

 一昨年に続く2大会連続の戴冠。12日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第12節、横浜FCユース(神奈川)と青森山田高(青森)が対峙したリーグ最終戦は、前半だけでMF藤森颯太(3年)、MF田澤夢積(3年)、FW渡邊星来(3年)、MF松木玖生(3年)と4人で4ゴールを奪った青森山田が、守備陣もきっちり相手の攻撃をシャットアウト。4-0で完勝を収め、プレミアリーグEAST優勝を勝ち獲っている。

 ファーストシュートは開始31秒。右サイドに開いたFW名須川真光(3年)のクロスから、田澤のシュートは枠内へ。ここは横浜FCユースのGK松野凌大(3年)が何とか凌いだが、続けて3分に掴んだチャンス。今度は左から名須川が入れたクロスに、松木が競り合うと、こぼれにいち早く反応した藤森の左足シュートがゴールネットを貫く。11番はこれで3試合連続ゴール。あっという間にアウェイチームが先制する。

 追いかける展開を強いられたホームチームも、セットプレーから決定機を作る。17分。ゴールまで約25メートルの位置から、左SB土屋海人(3年)が無回転で打ち込んだ直接FKは青森山田のGK沼田晃季(3年)が何とかセーブすると、ルーズボールを拾ったDF増田健昇(3年)が放った至近距離のフィニッシュも、沼田が再びビッグセーブ。直後のCKから、最後はFW宮野勇弥(3年)が叩いたシュートは、クロスバーにヒット。同点には至らない。

 すると、次の得点も青森山田に。22分。松木が蹴ったFKから、セカンドボールを制したMF宇野禅斗(3年)が右クロス。渡邊のヘディングは松野が懸命にかき出したものの、全速力で詰めた田澤の執念がゴールを呼び込む。チームの約束事でもある『ゴールに“ふた”をする』を体現した16番の追加点。点差が2点に開く。

 こうなると、勢いは止まらない。36分。宇野の完璧なパスカットを基点に、名須川が左サイドで巧みに身体を入れ替えながら、パーフェクトなクロス。これを渡邊が難なく押し込んで3点目。44分。藤森が蹴った左CKから、最後に松木がプッシュしたボールは、そのままゴールネットへ流れ着く。「思うような形ではなかったですけど、泥臭いゴールが自分に一番似合うかなと思うので、そこは最後まで詰められたことをしっかり評価したいです」と語ったキャプテンは、これが実にリーグ戦では9試合ぶりの得点。4-0。青森山田が大きなリードを携えて、最初の45分間は終了した。

 後半はこれが今シーズン最後の公式戦となるホームチームも、意地を見せる。「チームとしても最後なので、良いサッカーをして、1点でも多く点を獲ろうという形で入りました」とは10番を背負うMF山崎太新(3年)。後半から投入されたMF加藤嵩寅(1年)とMF前田柊(3年)の配球からチャンスを創出。14分には前田の浮き球に、加藤がワントラップからフィニッシュまで。軌道はゴール左へ逸れるも、惜しいシーンを。以降も山崎がカットインからミドルで、DF中村琉聖(2年)の左CKにDF本木紀慶(3年)がヘディングで、それぞれゴールを狙うも、枠を捉え切れない。

 3分のアディショナルタイムも過ぎ去り、タイムアップのホイッスルが吹き鳴らされる。「清水エスパルスとともに3連勝を目論む中で、ウチは3連勝できたということで、ここ3週間の我々はすべてがアウェイだったので、コンディション作りも難しかったですけど、彼らがここまで奮起奮闘してくれたことに対して、凄く評価したいなと思います」。黒田監督も逞しさを増した選手たちを称える。最終成績は13勝1分け2敗。45得点は清水ユースと並んでリーグ最多。9失点はリーグ最少。青森山田は、強かった。

 ディフェンスリーダーとして、最後方からチームを引っ張ってきたDF三輪椋平(3年)の言葉が興味深い。「監督がよく言う『やられていないだけで、できているように見えている部分』というか、やられないと気付かない部分をエスパルスに気付かせてもらったということを言われました。確かに『ゴールを隠す』だったり、1つ1つの守備の約束事を、自分たちもやられていないからルーズにしている部分もあったので、そこをもう1回詰めてきた上での3連勝だったかなと思います」。

 4月下旬。リーグ開幕3連勝で迎えた横浜F・マリノスユース(神奈川)戦の試合後。やはり三輪はこういう話をしてくれている。「自分たちの中で過信というか、3連勝したので、『できている』と思っていた自分たちがいて、その中で練習で監督からも結構厳しく言われたこともあって、1試合1試合本当に目の前の試合を100パーセントで戦おうという準備をしてきて、今日は勝てたので、本当にそこは良かったです」。結果的に開幕からの連勝は7まで伸びていった。

 三輪に聞いたそれぞれの話は、非常に似通っている。『やられていないだけで、できているように見えている部分』の修正。4月下旬は3連勝のタイミングで。11月下旬は首位攻防戦に敗れたタイミングで、指揮官は同じような意識の再徹底を図っていた。目の前の勝利のために、その先にある栄冠のために、ここだというポイントでチームを引き締め、選手たちもそれに応える。このディテールを突き詰めるのは決して簡単なことではないが、そこに向き合うことの意味は、確かな結果が物語っている。これこそが青森山田の凄味と言っていいだろう。

 チャンピオンボードの前での記念撮影。ここまでチームを支えてきたものの、現在は負傷離脱中のDF大戸太陽(3年)とDF多久島良紀(2年)も、しっかりとフレームの中に笑顔で収まる。「春からずっと彼らと一緒に戦ってきたということもあるし、彼らは優勝メンバーだということで今日ここに連れてきたかったから」と話した黒田監督は、ムードメーカーのMF本田真斗(3年)が1人だけ喜んで、周囲が黙る“お約束”の光景に一番大きな声で笑っていた。

 最後まで取材に応えていた三輪を置いて、チームバスは出発してしまう。松木が、相棒のCB丸山大和(3年)が、渡邊星来が、バスの窓から笑顔で手を振っている。とどめは指揮官の「椋平、じゃあね!」。取材を終え、ダッシュでバスを追い掛ける三輪の姿に、選手もスタッフも大笑い。例年以上の一体感が、今年の青森山田には漂っている。

「準優勝した過去2年のチームよりは確実に強いかなという手応えはあるし、その時の経験を持っている選手がまだ残っているというところもあるし、だからこそ今年は優勝を絶対しないといけない年にもなっているし、いろいろコロナで制限もあるけれども、そこを跳ねのけるぐらいのパワーと熱さを持って、選手権に入りたいと思います」(黒田監督)。

 インターハイ。プレミアリーグEAST。そして、最後の高校選手権。いよいよ青森山田が掲げてきた三冠が、現実味を帯びてきた。

(取材・文 土屋雅史)
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