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[MOM3702]桐生一DF倉上忍(3年)_「今日は絶対に点を」。敗戦ムード一変させた攻撃的左SBのミドル弾

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桐生一高の攻撃的左SB倉上忍のミドル弾が流れを変えた

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.12 高円宮杯プレミアリーグプレーオフAブロック決勝 帝京長岡高 3-4 桐生一高 Eスタ]

 想定していた通りの試合運びでインターハイ準優勝校である米子北高(中国)から金星を挙げた1回戦とは違い、帝京長岡高(北信越1)に挑んだこの日は、想定外だった2点目のロングスローを含めて、前半だけで3失点。FW大津聖人(3年)が1点を返したとはいえ、後半も立ち上がりは思うような攻撃が出来なかった。

 桐生一高(関東3)の敗戦ムードを一変させたのは、後半28分に生まれたDF倉上忍(3年)の見事なミドルシュート。彼の一撃によって勢いに乗ったチームは、一気に逆転まで持ち込めた。田野豪一監督も「2点目に救われた。カウンターは行けるだろうと思っていたけど、あそこであれだけ綺麗に打つというのは凄い」と称賛する一撃だった。

「自分たちは選手権予選で負けて今大会が最後だったので、どんな状態でも最後まで諦めずやろうとチーム全員で意識していた」と話す倉上だが、リズムに乗れないチームに引きずられる形で、彼自身も決して上手く行っていたとは言い難い。時折、持ち味である左サイドからのオーバーラップで攻撃に絡む場面はあったが、全体で見れば対面した帝京長岡の快足右SB佐々木奈琉(3年)の対応に手を焼いている印象が強かった。

 ただ、「1点入れば、絶対に自分たちの流れが来ると思っていた」倉上は最後まで諦めていなかった。それが冒頭の2点目の場面だ。相手CKを守備陣が跳ね返したボールをMF浅田陽太(3年)が前方へと展開。センターサークル付近でボールを待っていた倉上は、「CKからのカウンターはセットプレーの練習から、田野先生に『力強く行って良い』と言われていた」とファーストタッチで力強く相手DFを振り切り、前進した。

 そのタイミングで「GKの位置を見たら、ちょっと前に出ているなと思ったので、思い切って打った方が良いのかなと判断した」とシュートを選択。田野監督は「『落ち着け!もう1個行け!』って言っちゃった。“打っちゃたか~”と思っていた」と振り返るが、意表を突く一撃がゴールネットを揺らす事になった。

 チームの歴史を作る活躍を見せた倉上だが、この日は必ずゴールを決めなければいけない理由があった。前橋育英高に挑んだ選手権予選の決勝では、0-1で迎えた後半30分にDF丸山琉空(3年)のパスからGKの1対1を迎えたが、ゴール右隅を狙ったシュートは枠外に外れてしまった。試合はそのままタイムアップを迎え、「落ち込みは強かった」。だが、翌週以降のプリンスリーグで出場機会を掴んだサブ組が披露した気持ちのこもったプレーを見て、気持ちは変わった。

「凄く熱意を持っているというか、自分たちの後ろにこんなにも頼れる選手達いっぱいいるんだなと気付かされた。『これはやるしかないな』という気持ちで大会に臨み、今日は絶対に点を決めようと思っていた」。

 178cmの身長と精度の高い左足を持つ左SBは全国的にも希少価値は高い。高校生活最後の年を迎えた今年は、競り合いの強さも出てきた。「彼はプロとしても将来、頑張ってもらいたい」と田野監督が期待を寄せる通り、進学予定である関東の強豪大学経由でJリーグ入りを果たす可能性は十分ある。それだけのインパクトを高校最後の舞台で、残してくれた選手だった。

(取材・文 森田将義)
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