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“今大会限り”須佐徹太郎副顧問を日本一に…阪南大が福岡大をPK戦で下し4大会ぶり4強入り

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阪南大がPK戦で福岡大を下した

[12.14 インカレ3回戦 福岡大1-1(PK2-4)阪南大 前橋陸]

 阪南大(関西4)が1-1から突入したPK戦の末に福岡大(九州2)を下し、2016年大会以来、4大会ぶりのベスト4に進出した。

 2回戦で優勝候補の法政大を下した福岡大と、1、2回戦の接戦を制し、特に2回戦では同じ関西リーグを優勝した関西学院大を下して勝ち上がった阪南大との激突。激闘から中2日で迎える決戦だったが、福岡大は1回戦から3戦連続メンバーに変更なし。一方の阪南大は、今春に前十字靭帯断裂の大怪我を負ったMF江口稜馬(4年=野洲高)を復帰後初めて起用するなど、関学大戦から4人を変更して臨んだ。

 前半から互いの特長を出し合って試合になった。福岡大は前半12分のFW永田一真(3年=岡山学芸館高)のヘディングシュートが相手DFにライン上でかき出された場面など、DF岡田大和(2年=米子北高)とDF阿部海斗(4年=鳥栖U-18/熊本内定)が投げるロングスローからチャンスを作り続ける。

 すると前半38分、福岡大が相手のミスを突いてスコアを動かすことに成功する。GK村田要(3年=熊本国府高)に出されたバックパスにFW大崎舜(3年=大津高)が猛然とチェイス。村田の焦りを誘うと、エリア内でのファウルを誘発し、PKを獲得する。これを10番FW北條真汰(2年=鹿児島城西高)が左に飛んだGKと逆隅にしっかりと蹴り込んで、先制点を奪った。

 しかしその直後、阪南大はすぐさま同点に追いつく。前半41分、左サイドでCKを獲得すると、ファーに流れたボールをDF高田椋汰(3年=日章学園高)がボレーで合わせる。これが混戦を抜けると、左ポストを叩きながらゴールに吸い込まれていった。公式記録はポストに当たったあとに相手に当たったとしてオウンゴールとなった。

 1-1で突入した後半戦はお互いに交代枠を使いながら慎重にゲームを進めていく。先に阪南大は復帰戦となっていた江口を後半17分で交代。一方の福岡大も前線をフレッシュにして試合を進めると、同25分に2回戦で決勝点を奪っているFW鶴野怜樹(3年=立正大淞南高/福岡内定)を満を持して投入する。

 しかし鶴野は2度ほどのシュートチャンスを決めきれずにいると、同40分過ぎ、相手選手のクリアをスライディングで防ぎに行った際に、痛めていた右腿を負傷。そのまま担架で外に出され、無念の途中交代。勝負に出ていたチームにとっても痛い交代となった。

 試合は延長戦でも決着がつかずPK戦に突入。ここで阪南大GK村田がミスを取り返すことになる。先攻の阪南大は一人目が成功すると、後攻で蹴った福岡大の主将DF田中純平(4年=長崎総科大附高)のキックを村田が完全に読み切ってストップ。また福岡大の2人目で蹴った阿部も左ポストを叩くシュートで失敗。阪南大は決めれば勝ちの4人目で蹴ったDF山口和樹(3年=C大阪U-18)が外してしまうが、再度のチャンス、5人目のMF尾崎僚(4年=和歌山北高)が決めきって、ベスト4を手繰り寄せた。

 阪南大の須佐徹太郎副顧問は、今年夏に監督を退任。9月からは副顧問としてチームに関わっているが、今大会限りでいったん阪南大の指導現場から離れることになる。「完全にチームから去るということではないが、とにかく来年はいません」。1986年に同大監督に就任後、数々のタイトルを手にしてきた名将にとっても最後のインカレになっている。

 しかし情熱が陰りを見せることはない。試合前からベンチに集めたイレブンを前に身振り手振りで指示を出す姿が印象的だった。試合後は「もったいない失点をどうするかというところで、すぐに取り返した。相手はゾーンで守っていたので空くと思ったけど、(高田が)上手く打ちましたね。あいつは本当に伸びましたよ」とキーポイントとなった失点直後の同点弾を満足げに振り返った。

 一方の乾真寛監督。2回戦後には須佐副顧問との60代対決となることに、「楽しみな対決。おじいちゃん対決って書いておいてください」と笑みを交えながら気合を十分にしていたが、PK戦負けとあって、「勝たせてあげたかった」とため息交じりに振り返る。

 ただ今季は夏の総理大臣杯への出場が決まっていたが、部内に新型コロナウイルス感染者が出たことで直前で辞退した。「やり場のない思いをぶつけようとみんなが気持ちを上手く持って行ってくれた」。9大会ぶりの4強には届かなかったが、乾監督はそう言ってイレブンの健闘を称えていた。
 
(取材・文 児玉幸洋)
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