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eスポーツチームのGMに元日本代表・山田卓也氏が就任! 設立3年で急成長「Blue United eFC」が目指す先とは

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Blue United Corporation代表の中村武彦氏(左)とGMに就任した山田卓也氏

 Blue United Corporationのeスポーツチーム「Blue United eFC」は15日、ゼネラルマネージャー(GM)に元サッカー日本代表の山田卓也氏(47)が就任したことを発表した。山田氏は現役時代にヴェルディ川崎を始めとしたJリーグ4クラブや、アメリカでもプレーし、日本代表も経験。2017年に現役を引退し、その後はスポーツメーカーでスポーツマーケティングフットボールマネージャーとして活躍した。現在はフリーランスで日米に関わるスポーツ教育や人材育成を念頭に活動。サッカーゲーム「FIFA」で世界相手に戦う日本屈指のeスポーツチームに、大きな戦力が加わった形になる。

 2018年11月の設立からたった3年間で「Blue United eFC」は大きく飛躍した。所属選手のつぁくととアグのコンビで、2020年の「EA SPORTS FIFA 20 Summer Cup Series Asia」、21年2月の「FIFAe Club World Cup 2021 Zone 2 (East Asia)」を制覇。EA SPORTS FIFA シリーズの公式大会におけるアジア王者として君臨した。アグは2020年から2年連続でサッカーe日本代表にも選出されている。

 スポーツマネジメントで培ったノウハウをもとに、eスポーツビジネスに展開して早3年。今回GMに山田氏を迎え、「Blue United eFC」はさらなる発展を目指している。ゲキサカでは、Blue United Corporation代表の中村武彦氏とGMに就任した山田氏にインタビュー。チームの3年間の軌跡や山田氏就任の経緯、そして新たな局面を迎えるeスポーツチームの今後を聞いた。

飛躍の「Blue United eFC」、その軌跡とは


──設立から3年が経ちました。まず、なぜeスポーツチームを設立されたのでしょうか。
中村氏「2017年からeスポーツには注目をしていました。Blue United自体が、ヨーロッパとアメリカのスポーツビジネスを日本とつなげる橋渡しをするような会社であるため、諸外国の動きをモニタリングしている中で、eスポーツが次に登場するのだな、という認識は持っていました」

「とはいえ日本ではまだ新しく、聞き慣れないもの。まずは手探りでヒアリングやリサーチを始めたのが2017年。最初は選手のマネージメントに関わるところから第一歩を踏み出しました。それをやっていく中で、eクラブW杯に出場するためにはチームが必要ということがわかり、ではチームを作るしかないと。本業でスポーツビジネスには15年弱携わっていたので、基本的な知識はあった。それで2018年にプロのチームを立ち上げました」

──他のプロスポーツチームとは違いはありましたか。
中村氏「競技はゲームですが、サッカーや野球、バスケなどのプロスポーツチームの経営の原理原則は一緒です。勝っているときは調子良いけど、負けているときは調子良くないというチームは、作ってはいけない。それはスポーツビジネスの鉄則でもあるので、チーム経営をスポーツビジネスの観点から、徐々に取り込み始めました。特性は色々と違うものがありますけど、本業で基本的な部分は理解していたので、それをドッキングさせ、日本で一番イケていて、一番強くて、一番先進的なチームを作ろうと目指しています」

──つぁくと選手とアグ選手という素晴らしいプレーヤーが所属されています。
中村氏「この事業を始めた当初、携わっていた選手は1人でした。ただ、eクラブW杯や国際大会は2人1チームが主流。どうしてももう一人が必要で、そのとき国内で活躍していたつぁくと選手と知り合うきっかけができて、参加してもらいました。その後、最初の選手が移籍してしまい、アグ選手が加入しました」

「幸運なことに、素晴らしい選手たちと契約できています。チームは事業と強化の両輪で成り立つ。選手頼みになってはいけないと常々意識はしており、チームとしてのブランド力や魅力は事業側で出していかないといけないと考えています」

──この3年間は順調のように見えます。
中村氏「おっしゃる通りで結果も出ているので、Blue Unitedというマーケティング会社だけであれば開かない扉も開くようになりました」

「たとえば『Blue Unitedです』と言って、欧州のビッククラブと話をしようとしても、話をしに行く代理店は星の数ほどいる。なかなか簡単に話はできません。しかし、『Blue United eFCというプロのeスポーツチームです。アジアのチャンピオンで、FIFAのeクラブW杯Zone2で優勝しました』と、そのチームとして行くと、話ができるのです。向こうもeスポーツチームがあるので、チームとチームの話になる。そのような副次的なメリットもありました」

「オーナーはスポーツマーケティング会社ですが、プロeスポーツチームとしてのスポーツ界での立場は、試合の結果に付随して得られています。強化のほうから事業に波及的に良い影響が出ていくようになってきました」

──今後の目標を教えてください。
中村氏「一番大きな長期的な目標でいうと、先駆者であり続けたいというのは間違いなくあります。自分たちのノウハウやスポーツビジネスの原理原則に則って、初期からプロのeスポーツチームを作ってきた。そのフロンティアに居続けないといけないと思うのです。ちょこっとやって真似されて追い抜かれるのは一番良くない。それが大前提ですね」

──そのために今回、山田卓也氏がGMに就任しました。
中村氏「eスポーツの強化部、指導者、トレーニングなど、eスポーツならではのものは、これから日本で研究されていきます。その中で、プロサッカー選手として一流の経験をされている山田さんの視点から、強化とは、選手とは、事業と強化の付き合い方とは、というアドバイスを頂きたい。その前例を作りたいというのが次なる目標ですね」

「まだ日本国内にeスポーツチームのGMは存在しません。監督やアカデミーなど、基本的なものが存在していない場合も多くあります。この3年間ではチームを作り、世界で勝つことを見せられた。ここから細部に至って、自分たちが見本にならないといけないと思っています。勝つことが目標というより、それはひとつの目標。チームとして強くなることが大きな目標ですね」

サッカー元日本代表のGM就任「自分ができることは…」


──今回就任された経緯を教えてください。
山田氏「以前から中村代表とは縁がありまして、ミーティングをよく行っていました。その中で色んな相談も受けていて、仕事と捉えることなく話はしていたのですが、今回自分の身が空いたところで、お話を頂きました」

──eスポーツの印象はどうでしょうか。
山田氏「自分がプレーしているとかはなくて、こんな世界があるのかというのが、まず驚きとしてありました。ビッグクラブと対等に話ができるなんて、リアルのサッカーの世界では、ハイOKとはならない。でも、その大きな世界にいるわりに、世間的な扱いは大きくない。自分もメーカーにいたときは、eスポーツがスポーツとしてどうなのだろうというところは思いつつ、国体での採用などの動きや時代の流れを見たり、一生懸命トレーニングする選手の姿を見て、スポーツと変わりないのかなと思ってきました」

──なぜeスポーツチームのGMに就任されたのでしょうか。
山田氏「自分は、Jリーグという整った舞台で、プレーさせていただきました。今回の挑戦では、ポジションのないところにGMを作るという、新しい道を切り開くところに面白みを感じ、賛同しました。プロスポーツ、またスポーツマーケティングに関わってきた中で、eスポーツでも自分がやれることはあるのかなと思いました」

「選手ができるだけ良い環境でプレーできるように、そして競技としてのeスポーツ選手に子どもたちがなりたいと思うような、夢のある仕事に変えていく。そういうシーンを、このチームを通じて作っていける可能性があり、是非実現していきたいと思っています」

──具体的に、どういった活動をされるのですか。
山田氏「eスポーツをプレーしていたわけではないので、自分ができることは、強化部の中で色々なデータや情報を集めて、それをチームに反映していくこと。知ったかぶりは絶対にしたくない。プレーもできないですし、やったらボコボコに負けると思います。そこじゃない部分で、選手の環境を整える。選手の価値をもっと高めていき、憧れの存在になってほしいと考えます。そのためにも、自分は競技の向上を、世界で強くいるための確率を上げていくことに取り組み、現場に近い存在として選手を支えていきたいですね」

──『FIFA』では、サッカーe日本代表という到達点もあります。
山田氏「選出方法が監督に選ばれるという形ではなく、ポイント制というのが面白いですね。自分もサッカーで日本代表に選ばれたのはすごく遅い時期でしたけど、若いうちからなんで呼ばれないのだろうって反骨心を持ちながらやっている選手はたくさんいると思います。eスポーツは選出方法がクリアなのでわかりやすいですね」

「ヤタガラスのエンブレムを着けてプレーするというのは、誇らしいことですよね。どんな競技においても日本を代表してプレーできることは、選手のやりがいにもなると思います」

──最後に、GMとしてご自身が考える成功とは何でしょうか。
「選手自身の価値、競技の価値を上げる、そしてスポーツの価値を高めるところに関わっていくことが、目標だと思っています。選手たちは頑張ってくれています。事業で拡げなきゃいけない部分は拡げ、さらに選手がもっと頑張れるような環境を整えていきたいですね。もっといい環境や条件を選手に提供できて、国外の選手でもBlue United eFCに加入したいという状況にすること。それが自分にとって成功だと思っています」

(取材・文 石川祐介)

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