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ひたちなかの“ガチバトル”はU-20関東大学選抜がU-18日本代表に意地の逆転勝利!

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真剣勝負の末にU-20関東大学選抜が逆転勝利!

[12.19 IBARAKI Next Generation Match 2021 決勝 U-18日本代表 1-2 U-20関東大学リーグ選抜 ひたちなか]

 清水勇貴に激しく寄せた田中隼人が、イエローカードをもらう。彼らは柏レイソルU-18の先輩と後輩だ。甲田英將のドリブルを、牛澤健が渾身のスライディングでストップする。彼らもやはり名古屋グランパスU-18の先輩と後輩だ。視察に訪れていた影山雅永・JFAユース育成ダイレクターの言葉が印象深い。「やっぱりこういう真剣勝負の試合でしか得られないものがありますからね」。

 19日、IBARAKI Next Generation Match 2021の決勝が行われ、U-18日本代表が前半41分にFW千葉寛汰(清水ユース)のゴールで先制したものの、U-20関東大学リーグ選抜も後半16分にMF岩井琢朗(順天堂大1年)が同点弾を決めると、42分にはMF日野翔太(拓殖大1年)が自ら奪ったPKを沈め、意地の逆転勝利。大会制覇を成し遂げている。

 茨城県内サッカー選手育成の集大成という位置づけで、茨城県サッカー協会の主催で行われた今回のIBARAKI Next Generation Match 2021。18日には鹿島アントラーズユースとU-18日本代表が、U-20 ALL IBARAKIとU-20関東大学リーグ選抜がそれぞれ対峙。その試合に勝ち上がったU-18日本代表とU-20関東大学リーグ選抜が決勝進出。負けた両チームはこの日の3位決定戦で激突し、鹿島ユースが今シーズンの最終戦をPK戦の末に勝利で飾った。

「U-20W杯まではあと1年半ぐらいしかないということは監督からも言われていましたし、それを理解した上でこの大会で優勝するというのは全員が考えていたことですし、まずは来年のU-19のアジア予選を意識して、全員が臨んでいました」(田中)。2023年に開催が予定されている、U-20W杯を目指すチームとして構成されているU-18日本代表。限られた実戦の機会を生かすべく、集まった選手たちは高い意識で合宿からしのぎを削ってきた。

 決勝の先発は、GKに春名竜聖(C大阪U-18)、DFラインは菊地脩太(清水ユース)と田中隼人(柏U-18)がCBを務め、右SBにキャプテンマークを巻く中野伸哉(鳥栖U-18)、左SBに松田隼風(JFAアカデミー福島U18)、中盤は安部大晴(長崎U-18)と吉田温紀(名古屋U-18)がドイスボランチを組み、右SHに甲田英將(名古屋U-18)、左SHに山崎太新(横浜FCユース)を配置。2トップは千葉と真家英嵩(柏U-18)という11人が選ばれた。

 前半は「良い距離感でパスを回すことができた」と松田も振り返ったように、U-18日本代表がペースを握る。ボランチの安部と吉田が左右に散らし、SBのオーバーラップも含めたサイド攻撃が機能。16分には松田のクロスに真家が合わせたシュートは、U-20関東大学選抜のCB牛澤健(中央大2年)にブロックされたものの好トライ。28分にも山崎と松田の連携で左サイドを崩し、真家のシュートはここもDFに当たって枠の左へ逸れたが、フィニッシュシーンを作り出す。

 すると、41分に生まれた先制点。菊地のパスを受けた安部は、すかさず前のスペースへ絶妙のボールを配球。「安部選手が前を向いた瞬間に目が合った」という千葉が走り込み、身体に当てたボールはゴール右スミへゆっくりと転がり込む。「代表の中心でストライカーとして活躍したいという気持ちが強いし、この世代の一番の点取り屋は自分だと思っている」と言い切るプレミアリーグEAST得点王がこの日も一仕事。U-18日本代表が1点をリードして、前半の45分間は終了する。

 後半開始からU-18日本代表はDF工藤孝太(浦和ユース)とMF豊田晃大(名古屋U-18)を投入したが、ペースは徐々にU-20関東大学選抜に傾いていく。5分にはMF田邉光平(中央大2年)のパスから、日野が放ったシュートは春名にキャッチされるも、このドイスボランチを中心に攻撃が活性化。後半から登場したMF浅倉廉(拓殖大2年)もアクセントを生み出す。

 同点弾は16分。FW星野創輝(中央大1年)を基点に、DF山口紘生(慶應義塾大1年)のクロスを浅倉が繋ぐと、岩井の左足シュートがゴールネットへ収まる。1-1。相手より年長者で占められているU-20関東大学選抜がスコアを振り出しに引き戻した。

 13分にはMF中村仁郎(G大阪ユース)、22分にはMF藤原健介(磐田U-18)をピッチへ解き放ったU-18日本代表も反撃。26分には山崎のラストパスに千葉がシュートで応えるも、ここも牛澤が間一髪でブロック。28分にも藤原の左CKに千葉がヘディングで合わせるも、軌道は枠の上へ。34分にはFW坂本一彩(G大阪ユース)とMF北野颯太(C大阪U-18)も登場し、“大阪2トップ”で勝ち越しを狙う。

 だが、終盤にゴールを記録したのはU-20関東大学選抜。42分。左サイドで仕掛けた日野がエリア内でマーカーともつれて倒れると、主審はPKを指示する。キッカーは日野。大胆に中央へと蹴り込んだボールが、鮮やかにゴールネットを揺らす。「後半に入って相手が勢いを持って入ってきて、そういう勢いに負けたというか、チームとして前半のようなプレーを1試合通してできるようにしないといけないなと思いました」とは松田。ファイナルスコアは2-1。U-20関東大学選抜が執念の逆転勝利で、年末のひたちなかに勝ち鬨をあげた。

「この代表チームは全員が世界基準を目指していて、言い方は悪いかもしれないですけど、大学生相手にやられていたら、そういうところも見えてこないと思います」(田中)「世界で戦っていく中で、フィジカルが上の相手と戦うのは当たり前になってくるので、こういう強度の中でももっともっとやれるようにならないといけないなと感じました」(千葉)。

 攻守の軸が揃って口にした“世界”を見据え、1週間に及ぶ今年最後の活動を終えたU-18日本代表。18日の鹿島ユース戦、19日のU-20関東大学選抜戦と、モチベーションの高い対戦相手と実戦形式で経験を積んだことは、非常に大きな収穫だったと言えそうだ。

 今回招集された大半の選手は、来シーズンからプロサッカー選手の道を歩み出す。この日は既にJリーグのピッチを踏んでいる安部と中野が、それぞれ攻撃と守備でチームを牽引する意欲を発揮。特にスタメンのフィールド選手の中で、唯一の“1学年下”に当たる安部は明らかな成長を感じさせる水準のプレーを90分に渡って披露し続けていただけに、周囲の選手に与える刺激も小さくなかったことは想像に難くない。

「しっかり1年目からスタメンで試合に出て、チームの勝利に貢献したいですし、自分のJリーグでの評価で代表に呼んでもらえたらいいかなと思います。まずは自チームでしっかり結果を出すというのを意識したいです」と話した松田の言葉は、もちろん彼らの共通認識。より厳しい環境で揉まれていくルーキーたちが、一回り大きくなって再集合する“U-19日本代表”の今後も非常に楽しみだ。

 最後に、今大会は有観客で行われている。入場ゲートでの検温や観戦ルールの周知徹底は、県サッカー協会の方が担当。試合中にはスタンドから子供たちが選手に声援を送っていた。また、報道陣の取材時にも柔軟に対応して戴くことが多く、運営面でのスムーズさが印象に残った。試合自体も2日間でハイレベルな4試合が繰り広げられており、競技面でも高い成果を得ていることは言うまでもない。茨城県サッカー協会をはじめ、今大会の開催へ尽力された方々へ感謝を伝えたい。

(取材・文 土屋雅史)

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