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「自分の価値を上げていく“上限”というのはない」。FW千葉寛汰はこの世代で一番の点取り屋へ

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先制ゴールを奪ったU-18日本代表FW千葉寛汰(清水ユース)

[12.19 IBARAKI Next Generation Match 2021 決勝 U-18日本代表 1-2 U-20関東大学リーグ選抜 ひたちなか]

 重ねたゴールの分だけ、確かな自信は纏ってきた。でも、まだ足りない。その視線は遥か上の、誰も到達したことのないような場所を見据えている。「結果を出すにつれてどんどん欲も出てきますし、『もっともっと』という気持ちは常にあります。自分の価値を上げていく“上限”というのはないですし、『もっともっと』という気持ちが強いです」。

 王国が生んだとにかく強気なストライカー。U-18日本代表FW千葉寛汰(清水エスパルスユース3年)は、飛躍の年となった2021年を経て、さらなるステップアップの確信を掴んでいる。

 4月。千葉はまだ自分に確たる自信を持てていなかった。ユースに昇格したばかりの1年時は一定の活躍を見せたものの、2年時には結果を残し切れず、停滞感を感じていたという。「『1年生の頃はできたのにな』という変なプライドが邪魔したりして苦しかったですけど、もう自分は“何もない選手”というところから、『ゼロからしっかりアピールしていこう』というふうに吹っ切れました。今年は本当に周りを驚かせるような、周りにもっと注目してもらえるようなインパクトのある結果を絶対に残したいですし、また千葉寛汰という選手としての価値を周りに見せ付けていきたいと思っています」。自身を鼓舞するような口調が印象に残っている。

 インパクトは、十分だった。6月には飛び級でU-20日本代表候補合宿に参加し、トレーニングマッチでゴールを記録。以降も年代別代表には継続して招集され続ける。さらにプレミアリーグEASTでは、17試合で18得点を叩き出して堂々得点王に。来季からのトップチーム昇格も勝ち獲った。本人も「シーズンの最初に掲げた目標はある程度達成できましたし、外から見ている方から一定の評価は得ているので、ある程度は良かったかなと思います」と手応えを口にしている。

 そんな1年間の集大成。U-18日本代表候補合宿でも、千葉の得点感覚は研ぎ澄まされる。チームとして参加したIBARAKI Next Generation Match 2021でも、初戦の鹿島アントラーズユース戦できっちりゴール。“仕事のできる男”ぶりを見せ付けた。

 この日の決勝ではFW真家英嵩(柏レイソルU-18)と2トップを組み、年長者で構成されたU-20関東大学リーグ選抜相手に虎視眈々と得点の機会を窺うと、前半41分にその嗅覚が発動される。MF安部大晴(V・ファーレン長崎U-18)が前を向いた瞬間、最適のポジションへするりと潜り込む。

「安部選手が前を向いた瞬間に目が合いましたし、相手のディフェンダーの選手をうまく外したら、良いボールが来て、『そのまま流してシュートまで行こう』と考えていたんですけど、相手に押された形から自分に当たって入った感じです。良いイメージをお互いに共有できた良いゴールだったかなと思います」。

 ボールは混戦の中からゆっくりとゴールネットへ吸い込まれたこともあり、本人のゴールか否かを改めて確認すると、「アレはオレのゴールです。絶対にオレです(笑)」と即答。ストライカーらしいメンタルに加え、笑いを誘うような会話を楽しめるあたりに、結果を出し続けているフォワードの余裕が滲む。

 ただ、もちろんそれだけで満足するようなタマではない。「プロの基準、世界の基準で見たら全然まだまだだなと率直に感じています。実際に今日も勝てていないですし、勝利に導けないストライカーでは点を獲っても意味がないと思うので、そういう意味ではまだまだかなと思います」。自分の結果だけを求める時期は、もう終わった。チームを勝たせるストライカーへ。もちろんそのために、自分がゴールを奪い続けることは言うまでもない。

 今回の代表活動では真家、坂本一彩(ガンバ大阪ユース)とやはり来季からプロの世界へ飛び込む2人と時間を共有した。「坂本選手だったら前を向いてからのドリブルの仕掛けがあって、真家選手は力強いパフォーマンスがあると思いますけど、その中でも自分が一番点を獲る能力が優れていると思いますし、いろいろなバリエーションの中で点を決められるという自信はある反面、本当にレベルの高いフォワード陣が揃っているので、彼らの良さを引き出したり、彼らの良さを自分のモノにする中で、自分の成長に繋げられるかなと思っています」。彼らとのハイレベルな切磋琢磨が、これからもずっと続いていくことは間違いない。

 プロ1年目となる2022年。自分の為すべきことは、もちろん理解している。「プレミアでは得点王を獲りましたけど、正直プロに行く上ではそんなのは意味がないと考えています。一番下からのスタートになりますし、どれだけこのオフ期間で良い準備をして、良いスタートを切って、監督の構想に入って、しっかり試合に出られるかだと思っているので、まずは良い準備をして、シーズンの始動に合わせられるようにしたいなと思います」。

 最後に残した言葉も、力強い。「間違いなく自信は付いていますね。代表の中心でストライカーとして活躍したいという気持ちが強いですし、この世代の一番の点取り屋は自分だと思っているので、絶対に自分が点を獲って、チームを勝たせるという想いは常にあります」。

『千葉寛太の価値』を今よりもっともっと高めるため、18歳のストライカーはとにかくゴールを獲り続ける。

(取材・文 土屋雅史)

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