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“横断幕”で感じた水戸への想い。DF松田隼風は茨城の地での代表戦で新たな決意を宿す

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U-18日本代表の左SBを務めた松田隼風(JFAアカデミー福島U18)

[12.19 IBARAKI Next Generation Match 2021 決勝 U-18日本代表 1-2 U-20関東大学リーグ選抜 ひたちなか]

 この春からプロサッカー選手としての一歩を踏み出す茨城の地で、日本代表の選手として戦うことに不思議な偶然と、引き寄せた必然を感じていた。イメージは、できている。あとは自分の力を100パーセントで発揮していくだけだ。

「しっかり1年目からスタメンで試合に出て、チームの勝利に貢献したいですし、自分のJリーグでの評価で代表に呼んでもらえたらいいかなと思います。まずは自チームでしっかり結果を出すというのを意識したいです」。

 U-18日本代表の左サイドバックを務めた、アグレッシブなレフティ。DF松田隼風(JFAアカデミー福島U-18 3年)は『水戸ホーリーホックの松田隼風』として、より高みを目指す日々に身を投じていく。

 年内最後の代表活動となった、今回の合宿。18日の鹿島アントラーズユース戦では後半開始から45分間プレーした松田は、U-20関東大学リーグ選抜と対峙するこの日の決勝では、スタメンでピッチに登場する。

「自分のストロングでもある、攻撃でのオーバーラップやクロスを意識してどんどんやっていましたし、ボランチの人も良い選手ばかりで、左をちゃんと見てくれていたので凄くやりやすくて、前半は『良いチームだな』と思いながら、気持ち良くプレーできました」。とりわけ左利きのボランチ、MF安部大晴(V・ファーレン長崎U-18)の配球を受け、松田はサイドを駆け上がるシーンを連発。16分、28分とFW真家英嵩(柏レイソルU-18)のフィニッシュを続けて演出するなど、攻撃面で好プレーを披露する。

 ただ、後半は相手の迫力を増した攻撃を受け、後手に回る格好に。「後半は相手が勢いを持って入ってきて、そういう勢いに負けたというか、チームとして前半のようなプレーを1試合通してできるようにしないといけないなと思いました」と松田も振り返ったように、同点弾を奪われると、終盤にはPKを献上して、逆転を許す。結果は1-2の敗戦。押し込まれた時の守備に課題を突き付けられ、今大会は幕を閉じた。

 今後に向けて感じたことを、松田はやや熱を込めて話す。「組織的な守備をできる場面はもちろんあったんですけど、だんだん疲労も溜まっていって、お互いにコミュニケーションも取り切れなくて……。粘り強くはやっていたと思うんですけど、やっぱりどこかで隙ができてしまって、PKも含めた失点に繋がってしまったので、自分のところはもちろんですけど、やっぱりチームとしての守備というのを良くしないとダメだなと思いましたね」。攻撃面ではゴールも奪えたが、結果的に2失点。守備陣のコミュニケーション不足は早急に改善したいポイントだと認識しているようだ。

 この日のスタンドには、水戸ホーリーホックサポーターによる計らいで、松田の横断幕も掲げられていた。「さすがにそこまでは想像していなかったです」と話しながら、「実感が湧いてきましたね。水戸の一員になれたのかなと思ったので、嬉しかったです」と笑顔も浮かべる。もちろん観光するような時間はなかったものの、「代表の大会が茨城でやると聞いて、凄く嬉しい気持ちでしたし、サッカーはどこでやっても同じなので(笑)、水戸の街とかよく分かっていなかった中で、生活のところとかで茨城のことを知ることができたので、凄く良かったですね。街並みはバスで見ていました」とシーズン前に茨城を“体感”した様子。来月の始動に早くも想いを馳せている。

 所属チームには、しっかり“置き土産”を残してきている。今月10日と12日に開催された、プレミアリーグプレーオフ。東海2位で出場したデスマッチで、神村学園高(鹿児島)、尚志高(福島)と高校選手権でも上位進出が期待されている両チームを撃破し、来季からのプレミア復帰を勝ち獲った。

「クラブユースも僕たちはジュビロに負けて全国に行けなかったですし、プリンスも2位という形で終わって、何もタイトルを残せなくて、チーム全体が悔しい想いをした中で、最後にプレーオフがあって、プレミアに行けるチャンスがあるということで、ここでやり切るという強い想いを持っていましたし、しんどくても『後輩のために何とか上げてあげよう』という想いが強かったので、気持ちの部分に助けられたかなと思います。粘り強く戦えました」。6年間を過ごしたJFAアカデミーを飛び出し、水戸ホーリーホックの一員として、Jリーグの舞台に身を投じていく。

 隼風と書いて『はやて』と読む名前は、自身でも気に入っている。「隼風の最初の字は、“はやぶさ”じゃないですか。『はやぶさのように、速く』と言ったらアレですけど、トータルで『一番を獲れ』みたいな、そんな感じだと思います(笑)。本当にこの名前で良かったです」。誰もがこの名前を口にするような未来を迎えるためには、ここからの活躍が何より重要だ。

 水戸ホーリーホックの“新・はやぶさ”。松田の一番を獲るためのプロサッカーキャリアが、いよいよ幕を開ける。

(取材・文 土屋雅史)

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