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[MOM3730]堀越MF古澤希竜(3年)_1年越しの目標達成。志願の10番を背負ったエースが全国初ゴール!

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自身2点目を挙げた堀越高MF古澤希竜は“2”をアピールするピースサイン(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.29 選手権1回戦 堀越高 2-1 高知高 駒沢]

 この舞台で得点を奪うために、苦しい練習にも必死に耐えてきた。右足に、想いを、願いを乗せて、躊躇なく振り抜く。「今年は絶対全国に出て、こういう大舞台で絶対に点を決めてやろうと考えながら1年間努力してきたので、本当に努力は裏切らないなと思いました」。

 1年越しの目標、達成。堀越高(東京)を牽引するナンバー10。MF古澤希竜(3年=FC多摩ジュニアユース出身)が全国の舞台で、ゴールという最高の形の眩い輝きを放ってみせた。

 主力を担ってきた昨年度から、堀越の右サイドは自分のホットゾーン。同校にとって29年ぶりに挑んだ冬の全国でも、その突破力は十分に通用。3回戦の丸岡高(福井)戦では、同級生のMF中村ルイジ(3年)へのアシストもきっちり記録しているが、古澤は小さくない後悔を覚えていたという。

「去年ルイジがヘディングを決めて、丸岡との試合に勝てたのは凄く嬉しかったんですけど、あの試合も含めて自分のシュートチャンスをモノにできなかったので、その悔しさというのは本当にあって、試合を見返すたびに『悔しいな、悔しいな』と思ってきました」。アタッカーであれば、もちろん自分でも結果を出したい。『今度こそは自分がゴールを決める』。強い決意がこの1年を貫いてきた。

 迎えた今大会のファーストマッチとなった高知高(高知)戦。掲げてきた目標を手繰り寄せるチャンスは、いきなりやってきた。前半4分。左サイドを突破した中村から、ファーサイドに位置していた古澤へボールが届く。

「ルイジからクロスが上がってきて、相手にちょっと当たってマイナスに流れてしまったので、後ろ向きから反転して、中の方で味方が呼んでいたんですけど、そこに出すのではなく、少し右に一歩ずらしたら相手が股を開くかなと思って、一歩ずらしながらシュートを打つタイミングで股を狙ったら、それが上手く行った感じです」。

 狙い通りにマーカーの股下を抜けたボールは、左ポストの内側に当たって、ゴールへと飛び込んでいく。殊勲のスコアラーは、そのままチームメイトが陣取るバックスタンド側の応援席へ一直線に走り出し、渾身のガッツポーズ。堀越が誇る10番が、いきなり1年越しの願いを叶えてみせる。

 それだけでは終わらない。今度は20分だ。「ライから完璧なボールが来たので、ファーストタッチがあまり大きくなり過ぎないように意識したのと、あとはキーパーが出てくるのは分かっていたので、その脇を狙おうと思って、それが上手く行きましたね」。

 DF渡部美紗哉(3年)のインターセプトを起点にしたショートカウンターから、MF伊東來(3年)が完璧なスルーパスを右へ。走った古澤はGKとの1対1も冷静に、ニアサイドへ速いシュートを打ち込んで、ゴールネットを揺らす。この1年間で遂げてきた進化の跡を証明するドッピエッタ。約束の舞台で主演級の活躍をきっちり披露した。

 背負った10番という番号には、小さくないこだわりがある。「自分の兄が背負っていたというところで10番を付けたんですけど、去年の日野(翔太)くんは29年ぶりの扉を開けて、全国ベスト8という記録を残したチームの10番でしたし、そこで『今年の10番は大したことないな』とは絶対に言われたくなかったので、『今年の10番もやるな』と思わせられるようなプレーができて良かったです」。

 3歳年上の兄・柊磨も、昨年のチームをキャプテンとして牽引した日野翔太(拓殖大)も託されてきた10番を付けて、全国の舞台でゴールを奪ったことが、古澤にとって何より嬉しさを実感する出来事だったことは想像に難くない。

 佐藤実監督は、この日の古澤のパフォーマンスについてこう言及している。「去年の大会が終わって、自分の中で課題になった部分があったものを、たぶん1年間追いかけながら、彼自身が成長してきたところがあるので、それをこの100回大会の全国大会でまた表現できるということに対して、彼も感謝しているでしょうし、その感謝の気持ちがプレーにどんどん推進力を生み出していて、当然マークはされますし、消されては行く中で、プレーの幅というものは出てきたのかなと思っています」。

 まず自分自身の目標は1つ達成した。だが、それ以上に欲しているチームの目標達成には、この先に待ち受けている高い壁をいくつも乗り越えない限りは、到達できない。堀越躍進のキーマン。巡ってきたチャンスへの感謝を胸に、古澤は10番の仕事を果たし続ける覚悟を力強く携えている。

(取材・文 土屋雅史)

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