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[MOM3733]帝京長岡FW渡辺祐人(3年)_「点が欲しい時に絶対決める」。帝長のレブロン・ジェームズが大舞台で2ゴール!

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2ゴールでチームを勝利に導いた帝京長岡高FW渡辺祐人(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 選手権2回戦 帝京長岡高 3-2 神村学園高 等々力]

 2得点を挙げてもなお、果敢にゴールへ迫る。放ったシュートは両チームを通じて最多の5本。その意欲も本人の言葉を聞けば、合点が行く。「試合をする前から絶対に勝ちたいということと、自分が得点王になりたいというのは強く思っていて、他のチームでもハットトリックしているヤツや点を決めているヤツが多かったので、絶対自分が決めるという気持ちは強かったですね」。

 悲願の日本一を狙う帝京長岡高(新潟)にハマったラストピース。FW渡辺祐人(3年=FC多摩ジュニアユース出身)はいま、ゴールを奪う喜びを誰よりも実感し続けている。

 神村学園高(鹿児島)と帝京長岡が対峙した、2回戦屈指の好カード。前半16分。9番が鮮やかに宙を舞う。右サイドで得た帝京長岡のロングスロー。MF佐々木奈琉(3年)がタッチラインでボールを持つと、「いつも練習している中で、奈琉がロングスローを投げられることは知っていた」という渡辺は狙いを定めていた。

 想定通りに佐々木が投げたロングスローは、ニアを越えて自分の元へ飛んで来た。躊躇なく右足のボレーで叩いたボールは、豪快にゴールネットへ突き刺さる。「自分の身体があるのを生かして、ゴール前に来たところをワンタッチで流し込めましたし、練習でよくやっていたので、試合でできて良かったです」。まさにゴラッソと表現したくなるダイレクトボレー。まずは1点。

 32分。9番が軽やかにピッチを舞う。相手GKのキックを拾うと、すかさず縦へ。MF三宅凌太郎(3年)とMF廣井蘭人(2年)が繋いだボールに自ら走り込むと、寄せてきたマーカーを足の裏を使ったダブルタッチで華麗にかわし、右足のアウトサイドで左スミのゴールネットへシュートを流し込む。

「いつも練習しているポゼッションの中で、『自分に絶対来る』ということはわかっていたし、しっかり味方がミスらないで上手く繋いでくれたので、あとはもうキーパーを見て決めるだけでした。1点獲れたというのが結構大きくて、2点目は味方を見て、しっかり決められた感じです」。圧巻のドッピエッタ。

 ゴールまでの一連は、まさに帝京長岡スタイルの真骨頂だったが、渡辺本人は以前から「自分は下手なので、周りが上手過ぎて付いていけない」と公言していた。ある意味で『“渡辺らしくない”=“帝京長岡らしい”』得点を、この大舞台で決めてみせるのだから恐れ入る。

 チームは3-2と勝利を収めたものの、2点を奪ってからも果敢にシュートを打ち続け、ハットトリックへの意欲を分かりやすいぐらいに打ち出していたのには、理由がある。「やっぱり歴代得点王の記録を破るためには、今日みたいに2点じゃ自分の中でも全然足りないので、次の試合でも今日より点を獲れるように頑張りたいです」。突然飛び出した『歴代得点王の記録を破る』という力強いフレーズ。やはりこの男、只者ではない。

 レギュラーに定着したのは、今年の夏過ぎから。右足首の骨折や左足首の捻挫、肩の脱臼などケガにたたられ、高校に入学してからは2年半近い時間を、悔しい想いを抱えながら過ごしてきた。だからこそ、ゴールを決める喜びは誰よりも感じることができる。そのゴールが苦しい期間をともに励まし合ってきた、スタンドで応援してくれているチームメイトたちの笑顔を呼び込めるなら、なおさらだ。

 普段もサッカーの試合はそれほど見ない。好きなのは「メッチャ見ている」NBA。憧れの選手はレブロン・ジェームズ。その理由も振るっている。「もうオーラが凄いですし、絶対王者感があって、点が欲しい時に絶対決めるので、メンタルの強さに憧れますね」。

 選手権ではこれで県予選準決勝、決勝に続いて、大事な試合ばかりで3戦連続ゴール。点が欲しい時に絶対決める、帝京長岡のレブロン・ジェームズ。遅れてきたストライカー。渡辺祐人が得点王の座を真剣に狙う。

(取材・文 土屋雅史)

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