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[MOM3741]桐光学園GK吉田優翔(3年)_チームメイトが寄せる絶対的な信頼。お待たせしすぎた守護神が7人目でPKストップ!

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PKストップで勝利の立役者となった桐光学園高GK吉田優翔は歓喜の涙(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 選手権2回戦 帝京大可児高 1-1(PK6-7) 桐光学園高 等々力]

 あるいは、お待たせしすぎたかもしれない。指揮官も、本人も、同じようなセリフを口にする。

「吉田優翔に関しては、少しシュートを止めるのが遅いのかなと。彼の能力であれば7本目まで掛からず、5本のうちで決着が付けられるだけのPKに対しての能力も持っていますので」(鈴木勝大監督)「自分は7本目で止められたんですけど、やっぱり5本以内に止めたいなと思っているので、もし次の試合でもPK戦になった時は、5本以内に止めたいと思っています」(吉田優翔)。

 とはいえ、殊勲のビッグセーブを披露したことには変わりない。PK戦に絶対的な自信を持つ桐光学園高(神奈川)。その源はチームの守護神、GK吉田優翔(3年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)への大きな信頼があるからだ。

 実は勝敗を左右するようなシーンは、1点を失った直後にも訪れていた。後半21分に帝京大可児高(岐阜)に先制点を奪われた桐光学園は、その5分後にも決定的なピンチを迎える。右サイドを突破したのは1点目を決めているFW松永悠碁(3年)。そのまま打ち切ったシュートは、しかし吉田が右足1本のファインセーブで応酬する。

「ファーが切れていたので『自分の正面かニアに来るな』と思って、そこで止まっていたら、そのまま足元のところにボールが来て、もう止めるだけでした」。決まっていれば0-2になっていたシーン。残り時間を考えても、1点差と2点差ではあまりにも大きな違いがある。その後のインパクトに隠れがちだが、このセーブにも大きな価値があったことは語り落とせない。

 そして、PK戦だ。「PKを何度も練習から止めているPKストッパーの吉田がいたので、PKになった時点で絶対に負ける気がしなくて。自分たちが外しても吉田が止めてくれるという信頼関係が築けていました」とはキャプテンのMF山市秀翔(3年)。その言葉を伝え聞き、「たくさんPKの練習をしてきていますし、そこはフィールドもそうですし、キーパーの自分も凄く自信があったので、そう思ってもらえて凄く嬉しいです」と笑顔の吉田。この“やり取り”からも、チームが纏っている自信と信頼が窺える。

 相手の4人目のキックにも触れてはいたが、勢いに左手を弾かれた。5人目、6人目は逆を突かれる。7人目。集中力を極限まで研ぎ澄まし、キッカーと対峙する。左だ。「助走の短さと入り方、体の向きというところで、『左側に来るな』と思ったので止められました。1本は絶対に止めてやるという想いもあったし、味方のためにというのがあったので、凄く嬉しかったです」。

 右手1本でボールを掻き出すと、小雪舞う天に向かって吠える。直後に桐光学園7人目のMF豊田怜央(2年)が蹴ったキックがゴールネットを揺らすと、水色の選手たちは一目散に守護神の元へ走り出す。チームメイトと作った歓喜の輪の中で、吉田は涙をこらえることができなかった。

 冒頭でやや厳しめのコメントを紹介した鈴木監督だが、話はこう続いていた。「彼の反応の良さの部分も、PKに限らず、ゲームの中で今日も何回かシュートストップした場面があると思いますし、彼もプロに行けるポテンシャルを持っていると思うので、そういう部分も含めて次戦以降も期待したいです」。あえて言うまでもなく、その言葉は大きな期待の裏返し。誰よりも吉田の能力は、指揮官がよく把握している。

 次の試合への意気込みを問われると、「今回の試合でも決められるところを決められていなかったので、そこはフィールドに任せて、ゴールを決めてもらって、自分は絶対に無失点で終えることを目標にして、絶対に勝ちたいと思います」と力強い答えが返ってきた。

 優翔と書いて“しゅうと”と読む名前は、ある意味で生まれた時からサッカーの世界へ身を投じることを運命付けられていたのは、間違いない。向かってくる“シュート”はすべて止める。吉田が繰り出すビッグセーブが、チームをさらなる高みに連れていく。

(取材・文 土屋雅史)

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