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“最後の国立”覇者・富山一は新国立届かず。大塚監督はモンゴルから教え子たちに「全力でやることを伝えたい」

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富山一高はゲーム主将MF中川晟中心に勝利を目指したが、無念の初戦敗退に。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[12.31 選手権2回戦 富山一高 0-1 宮崎日大高 フクアリ]

 旧国立競技場で行われた“国立最蹴章”の13年度選手権で北信越勢初の日本一。今回、新国立開催初の選手権で「あの光景」を目指した。だが、富山一高(富山)は過去6大会連続で勝ち続けてきた初戦で敗退。目指してきた場所には届かなかった。

 前半2分にゴール前の混戦からFW大井優太郎(3年)が決定的なシュート。その後も5バックの安定した守りと左WB片山大治郎(3年)の突破力を活かした攻撃やセットプレーなどで主導権を握った。

 だが、存在感ある動きを見せたゲーム主将MF中川晟(3年)のシュートが宮崎日大GK羽間友基(3年)の好守やクロスバーに阻まれるなど1点を奪い取ることができない。後半33分に相手FKで攻略されて0-1。最後まで諦めずに相手ゴールへ向かい、シュート数は15-6と相手を大きく上回ったが、初戦敗退となった。

 主将のDF渡邊快誠(3年)は、「自分は試合には出ていなくて、外から見る形になったんですけれども、みんなメンバー外とか、お父さん・お母さんたちとか、支えてくれた人たちのために頑張ってくれたと思いますし、最後まで諦めずによく戦ってくれた」と感謝。また、やるべきことは全部出せたと胸を張った一方、「日本一になって大塚さんにも感謝の意味を込めて、恩返しをして終わりたかったんですけれども、残念な結果になって……初戦敗退はとても辛い」と悔しがった。

 12月16日に大塚一朗監督のモンゴル代表監督就任が発表された。富山一OBで13年度選手権優勝監督の大塚監督は、今後も富山一に籍を残してチームをサポートする考え。「僕自身、富山第一での最後とは思っていなくて、監督としては最後かなと思っていますが、いつもと変わらぬ思いでやっていたつもりです」。優勢に進めながら勝ち切れなかった試合後、指揮官は選手たちに教訓を伝えたという。

「サッカーの難しさは、本当に押していてもちょっとの差でゴール決められて負けてしまうとか。勝敗を分けるのは本当にちょっとしたことで、それは人生も一緒で、攻めてて調子の良い時に油断しないとか。良い時に油断しない、悪い時は次に向けて良い準備するようなちょっとしたことが差になってくるので、サッカーも、人生もそこが大事にするところだとみんなに伝えました」

 富山一はチャレンジする集団だ。57歳の大塚監督も富山一から羽ばたく3年生、新チームを構成する1、2年生、そして富山一出身のOBや関係者と同じ様に、新たなチャレンジをスタートする。

「ボクはいつもサッカーを楽しむということを伝えていて、『楽しむ』って何だと言ったら『今持っている全力を出すことだ』と伝えている。いくつになっても全力を出してやること。今ボクがチャンレンジすることも、いくつになってもチャレンジしながら人生を楽しむこと。(モンゴルから)全力でやることを伝えたいなと思っています」。現役引退後にもチャレンジしながら人生を楽しみ、UEFA公認A級コーチ取得や選手権制覇。モンゴルから「全力でやること」を伝え、教え子たちの「全力」を後押しする。

(取材・文 吉田太郎)

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