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日本一への意志に、迷いなし。青森山田MF松木玖生は“一戦必勝”を貫き通す

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青森山田高のキング、MF松木玖生は一戦必勝を期す(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.2 選手権3回戦 阪南大高 1-3 青森山田高 駒沢]

 時間にして4分弱。いわゆる記事の見出しになるような、キャッチ―な言葉は出てこない。簡潔に、必要な言葉を、必要なだけ発していくオンライン会見の姿からは、最後の選手権に集中している様子が滲む。

「個人としては一番チームに貢献したいです。個人的に狙いたいことはないです。ただ、チームの優勝に一番貢献できればいいかなと思います」。

 いつも通りの回答。いつも通りの堂々とした受け答え。青森山田高(青森)の絶対的なキャプテン。MF松木玖生(3年=青森山田中出身)が携える日本一への意志に、迷いなし。

 6-0で大勝を収めた大社高(島根)との初戦を経て、迎えた阪南大高(大阪)と激突する3回戦。相手は2戦6発の絶対的エース、湘南内定FW鈴木章斗(3年)を擁していたこともあり、周囲からの注目度も高かった一戦は、序盤から青森山田が劣勢を強いられる。

「相手の特徴は立ち上がりの15分で先制点を決めて、そこからだんだんと点数を積んでいくことというのが自分たちが分析した結果で、『立ち上がりに圧倒的な差を見せ付ける』とチームでも話していました」と松木。4分には自らミドルを狙うも枠の左へ。以降は阪南大高の勢いに、押し込まれる時間が長くなる。

 それでも、ワンプレーで青森山田が流れを変える。15分。クイックでのスローインから、MF藤森颯太(3年)の右クロスに、松木がニアへ飛び込むと、後ろにいたDFに当たったボールはそのままゴールへと到達する。「良い形から良いクロスに、松木がきっちり飛び込んでくれたということから、得点が生まれましたね」とは黒田剛監督。自らに得点は付かなかったが、1年間で高め続けてきたゴールへの強い意識が、結果的にチームへ先制点を呼び込んだ。

 後半3分にはDF丸山大和(3年)のゴールを右CKからアシストすると、この試合最大の見せ場は16分。今度は左サイドで得たCKを藤森がショートで始め、MF田澤夢積(3年)は左のスペースへスルーパス。フリーで受けた藤森の優しいパスを、松木は得意の左足でフルスイング。だが、ボールは左ポストに激しく当たり、ゴールならず。デザインされた会心のセットプレーを決め切れず、天を仰いで悔しがる。

 結果は3-1で勝利。「今日は相当タフな試合になりましたけど、良い時間帯に先制点が獲れて、そこから勝負を決められたことが今回の勝因だったかなと思います」とシンプルに試合を総括した松木だったが、自身の中で少なくない課題を見出し、次戦への修正に繋げようと意識していることは想像に難くない。

 いわゆる大言壮語の類は好まない。揺るがない自信は口にするものの、ビッグマウスとはまったく違う。選手権の前に繰り返していたのは 『一戦必勝』というフレーズ。これを追求することだけが、最終的な目標へと辿り着く唯一の方法だということを、自らに言い聞かせてきた。

 この日もウォーミングアップを行った駒沢の補助競技場には、青森山田の姿を一目見ようとする大勢の観衆が人垣を作っていた。中でもスタジアムに向かう松木を間近で見る少年たちの目の輝きは、スーパースターを見る目そのもの。「子供たちからの人気がやっぱり一番嬉しいですね」と語っているだけに、有観客での今大会で自分の果たすべき使命ももちろん理解している。

『青森山田の松木玖生』として戦うことのできる試合は、あと最大で3試合。“一戦必勝”を積み重ねた先の悲願達成を信じ、常勝軍団の10番は、次の準々決勝でも目の前の試合に全力で挑む姿勢を貫くはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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