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[TOKINOSUMIKA CHALLENGE]U-16日本代表候補が「アジア予選のつもりで」真剣勝負。団結して戦い、東山に1-0勝利

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後半18分、DF松本遥翔(鹿島アントラーズユース)の決勝点を喜ぶU-16日本代表候補イレブン

[3.11 TOKINOSUMIKA CHALLENGE第1節 U-16日本代表候補 1-0 東山高]

 熱気と活気、そして「真剣勝負の雰囲気」(森山佳郎監督)に充ち満ちた試合だった。ほとんどがまだ中学生のU-16日本代表候補が、高校サッカーを代表するチームの一つである東山高(京都)のAチームと真っ向勝負を演じて1-0と勝ち切り、優勝を狙う「大会」で好スタートを切った。

 11日、「TOKINOSUMIKA CHALLENGE」が開幕した。来年のU-17W杯を目指すU-16日本代表は、昨年の活動を通じてコロナ禍の影響で海外遠征や国際ユース大会に参加できず、「まったく真剣勝負を経験できていない」(森山監督)チームとなってしまっている。このため、「練習試合ではなく、完全に大会の形式を作ってもらって、本気でアジア予選のつもりで臨む」(同監督)という意図で行われる大会だった。

 チームとして強化するためにも、選手個々を見極めるためにも、タフな相手との真剣勝負をやりたい。その意向を受けてまず若き日本代表の前に立ちふさがったのは東山である。U-17日本高校選抜に選ばれているDF新谷陸斗、MF真田蓮司のほか、「ボールを奪える力が素晴らしい。今年大きく伸びてくれると思っている」と福重良一監督が期待を寄せるMF松橋啓太ら実力者も先発。日本高校選抜に招集されているMF阪田澪哉が不在で、負傷などで欠場した選手もいたものの、「本当に相手にとって不足ない、素晴らしいチーム」(森山監督)との試合だった。

 今年からチームの指揮を執る森山監督が合宿のテーマとしてまず意識付けしたのは「まず、何よりインテンシティ」だという。

「ベースとなる部分は(昨年まで監督を務めていた)廣山望コーチがやってくれていたので、この合宿では強度の部分を強調して取り組んでいる。ここが足りないとも思っていた。インテンシティを上げないことには、春から高校生になっても試合に出られない。その状態では代表も強くなれない。選手たちにはハッキリそう伝えた」(森山監督)

 同時に勝利を目指して団結して戦うという代表チームとして、代表選手として絶対に持たなければいけない要素も、大会形式で年上と戦う前にあらためて強調した。「勝たなくていいなんて選手とは一緒にやれない。『俺はいま試合に出てないからどうでもいいや』なんて態度の選手も代表には必要ない」と強調。チーム一丸となって戦う姿勢を強調して試合に臨んだ。

 先発のピッチに立ったのは、キャプテンマークを預かったGK後藤亘(FC東京U-15深川)、DFが右から松本遥翔(鹿島アントラーズユース)、松井イライジャ博登(FCフェルボール愛知)、田所莉旺(川崎フロンターレU-15)、小杉啓太(湘南ベルマーレU-18)と並び、中盤は右から半場朔人(東京ヴェルディジュニアユース)、鈴木宏幸(FC LAVIDA)、加藤嵩寅(横浜FCユース)、佐藤龍之介(FC東京U-15むさし)、そして2トップには道脇豊(ロアッソ熊本ユース)とワッド・モハメッド・サディキ(柏レイソルU-15)が入った。

「珍しいくらいに大型選手を揃えられた」と森山監督が語るように、186cmの道脇と183cmのワッドが組んだ2トップや、186cmの田所と181cmの松井の両CBに188cmのGK後藤が構えるゴール前と、「高さ」で強豪校を上回るシーンも目立ち、序盤から互角以上の攻防に持ち込む。前半は0-0での折り返し、後半は風も味方に付けて優位を確保。「(今年から全年代のセットプレー担当コーチを務める)菅原大介コーチが前日に仕込んでくれた成果」というCKから、後半18分にDFの松本が貴重な先制点を叩き込んだ。ベンチの選手も含めて大喜びする様子は、まさに真剣勝負の雰囲気を持ち込んだからこそだった。

 その後も両SBを使った崩しや、スペースへの走り込みなどを利用し、たびたび決定機を作ったが、決め切れず。「こうなってくると苦しくなる試合の典型」(森山監督)として終盤は東山のペースに。年下相手に負けられない思いをぶつけ、ロングスローも使ったタフな攻撃とテクニカルなプレーを織り交ぜる相手にしばしばゴール前まで攻め込まれるが、ここは選手個々が森山監督の強調したゴールを守る姿勢を見せて固守。GK後藤のビッグセーブもあり、1-0での逃げ切りとなった。

「チームとしてのまとまり、ピッチの中での姿勢、強度を上げながら攻守のゴールを意識して戦う部分を出せた」と森山監督が手応えを語ったように、「練習試合のつもりではなく、本気でぶつかった」からこそ得られるモノの多い試合となった。

 もちろん、だからこそ課題も多々出た試合ではある。相手のプレッシングのやり方を観ながらビルドアップの形を変える部分や最後の詰めの甘さなど、まだまだ森山監督が要求する水準には達していない。ただ、国際試合ができない中で「代表として戦うということの意味」(森山監督)の一端を、確かに体現した試合だったのは間違いない。

(取材・文 川端暁彦)
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