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俊輔・小川・イサカ“先輩”からの手痛い洗礼…水戸GK茂木秀、鬼気迫る好守連発も「いくら止めても負けたら意味がない」

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GK茂木秀

[3.13 J2第4節 横浜FC 3-2 水戸 ニッパツ]

 地元・三ツ沢で3失点の逆転負け。J2リーグ通算2試合目ながら度重なるビッグセーブで水戸ホーリーホックを支えたGK茂木秀だったが、大きな悔しさの残る一戦となった。「いくら止めても結果として負けたら意味がない。チームを勝たせられるようなGKにならないといけない」。23歳の守護神はこの経験を大きな糧とし、“プロとして”の初白星を目指す。

 神奈川県出身の茂木は2017年、桐光学園高からセレッソ大阪に加入。195cmの長身を誇る守護神の台頭に期待は集まったが、20年までの4年間はU-23チームでJ3リーグ通算63試合に出場したのみ。トップチームでの公式戦出場はなかった。昨季はJ2のFC町田ゼルビアで武者修行するも、出場機会は天皇杯2回戦・栃木戦(●0-2)の1試合。プロ6年目の今季、水戸への期限付き移籍で新たなスタートを切っていた。

 開幕からの2試合はGK中山開帆が水戸のゴールを守った。だが、チームが開幕2連敗を喫した中、秋葉忠宏監督はミッドウィークの第1節延期分・大分戦(△1-1)でスタメン総替えを敢行し、そこで茂木を抜擢した。プロ2年目で“プロ”として初出場となった茂木は最終ラインとの連携ミスで失点する場面もあったが、チームは最後まで攻め続ける前向きな姿勢を貫き、降格組の大分と1-1でドロー。今季初の勝ち点をもたらした。

 そうした勢いを活かすべく、中3日で臨んだ今節も茂木が引き続き先発。「前節勝てはしなかったが、アウェーでメンバーを変えて勝ち点1を取れたので、いい流れができていた。一体感を持って勝ちに行こうと話していた」(茂木)。そんな言葉どおり、チームは立ち上がりからダイナミックな攻勢で横浜FCを攻め立て、FW木下康介とMF森勇人のゴールで2点を先制。「前半は自分たちのやりたいサッカーができて、思い描いた形で2-0で締められた。プレスもよくハマっていたので良かった」(茂木)とチームとしても手応え満点の内容だった。

 ところが時間が経つにつれて一方的にボールを握られるようになり、前半の終了間際はほぼ相手のシュートをひたすら受け続ける展開に。ハーフタイムには「後半の入りからもう一回立て直して、集中してもう一回イチからやろうと話していた」というが、後半の立ち上がりに桐光学園の1学年先輩でもあるFW小川航基のゴールで失点。試合は一転、横浜FCのムードに移っていった。

 その失点直後には気になる場面もあった。ゴールを決めた小川が茂木の肩をポンと叩き、心理戦を仕掛けると、これに茂木が激しいジェスチャーで抗議。茂木によると、前半から伏線があったのだという。

「前半からちょっとやり合ったりして、向こうが意識していると感じていた。そういったところで相手を挑発できたらなというふうに思っていた。前半からそういうことがあった中で、後半に決められた時に肩を叩かれて何か言われたので、腹が立ったとかじゃないけど、ジェスチャーで意思表示をして『もっとやってやるぞ』という姿勢を取った」。

 そうして示した気持ちに違わず、失点以降の茂木はいっそう鬼気迫るプレーを披露。後半13分の波状攻撃に無駄のないアクションで立ちはだかると、同16分のFW伊藤翔のヘッドはほぼノーチャンスで同点に追いつかれたが、同25分過ぎの連続ピンチや、同37分の桐光学園出身MFイサカ・ゼインのシュートも神がかり的な反応で阻み切った。

 それでも、最後はまたしても“偉大な先輩”の一撃に屈した。後半39分、年度で数えて20歳先輩にあたるMF中村俊輔の左CKがゴール前に送り込まれると、小川のヘディングシュートが真っすぐにゴールネットへ。これが2点差をひっくり返す逆転ゴールとなり、前半は掴みかけていたはずの勝ち点3がすべてこぼれ落ちた。

「小川選手、イサカ選手、中村俊輔選手が一緒だったというのはあるが、気にしていなかった。まずは勝ててなかったので、目の前の1試合に勝ちたかった。ただ結果的に負けてしまったし、小川選手にも2点取られたし、イサカ選手、中村選手にアシストされたので悔しい」。意識していなかったはずの“同門対決”だったが、先輩たちのあまりの活躍ぶりに悔しさは隠せなかった。

 それでもここは高校サッカーではなく、プロの世界。1週間後にも試合は続き、4か月後には再戦も控え、来年以降にでも挽回するチャンスは掴み取ることができる。

「今日はプロに入って2試合目で、前回は自分のところで失点に絡んでしまったので、今回はミスなくやろうと思っていたけど、結果的に逆転負けをしてしまった。自分のプレーも全てが納得いくわけではなかった。自分はもっともっと成長できると思うし、こういう経験をして、もっともっと上の舞台で活躍できるようにしていきたい。一個一個のプレーにこだわって、失点しないGKになれるように突き詰めてやっていきたい」。悔しさの残る一戦を経て、茂木秀はまだまだ成長する。

(取材・文 竹内達也)
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