beacon

九州新人代替大会は神村学園が優勝。大迫、福田不在も泥臭く戦い、目標へ新たな一歩

このエントリーをはてなブックマークに追加

神村学園高が泥臭く戦って優勝。目標の選手権制覇への新たな一歩

[3.13 九州新人戦代替大会決勝 神村学園高 2-2(PK5-4) 鹿児島城西高 清水台総合公園]

 九州高校新人戦の代替大会として行われた「2022 九州高等学校サッカー大会~九州はひとつ~」(各県新人戦上位のうち計9校が参加)は13日に大会2日目を実施し、神村学園高(鹿児島)と鹿児島城西高(鹿児島)による決勝は、2-2(PK5-4)で神村学園が勝利した。

 神村学園はMF大迫塁(2年)とFW福田師王(2年)が、日本高校選抜の一員としてデンソーチャレンジカップに参加。今大会は不在だった。だが、「塁と師王がいないから負けたとは言われたくない。自分が勝たせないといけない」と話すMF笠置潤(2年)らが、2人の不在を感じさせないプレーを披露し、グループリーグを2連勝。迎えたこの日の準決勝は、国見高(長崎)に先制されるも、試合終盤のゴールで追いつき、1-1(PK3-1)で勝利した。

 鹿児島県のライバルである鹿児島城西と激突した決勝は、前半4分に相手のバックパスのミスを拾ったFW上地蓮(2年)のパスから、MF積歩門(2年)が決め、幸先の良いスタートを切った。

 だが、1月に行われた県の新人戦決勝で逆転負けを喫している鹿児島城西にも意地がある。チームカラーである奪ってから縦に鋭い攻撃で神村学園を押し返すと、高い位置でセカンドボールを拾って、二次攻撃を展開。7分にはMF原田天(2年)、石内凌雅(1年)と繋いだボールから、俊足のFW矢吹凪琉(1年)がゴール前を抜け出したが、シュートは右ポストに阻まれた。

 鹿児島城西は23分にもロングボールを相手DFの背後に展開した。神村学園のDFが後方に下げるも、GKが蹴った瞬間に矢吹がカット。身体に当たったボールが無人のゴールに吸い込まれ、1-1で試合を折り返した。

 後半、神村学園は鹿児島城西に押し込まれ、我慢の時間帯が続いた。前方にボールを運んでも、パスミスが続き、シュートまで持ち込めない。「前への圧力を掛けてくる相手に対して上手くやろうとして、ミスが多くなっていった。切羽詰まった状況の中でやれるだけのクォリティーが足りていない」と振り返るのは、この日の指揮を執った神村学園・栢野裕一コーチだ。GK広川豪琉(2年)を中心に選手同士が声を掛け合い、失点を回避してきたが、後半18分にはMF是枝大翔(2年)のクロスがゴール前にこぼれた所を、DF田中和斗(2年)に押し込まれた。

 後がなくなった神村学園は、180cmのDF田中惇(2年)を前線に投入。4バックから3バックに変更し、攻勢を強めた。策が実ったのは試合終了間際の30+3分。笠置、FW名和田我空(中3)と繋ぎ、右サイドからDF有馬康汰(1年)がクロス。中央で田中と名和田が競ったこぼれをMF平木駿(1年)が頭で押し込み、PK戦へと持ち込んだ。

 PK戦で輝いたのは、守護神の広川だ。2失点ともに自らのミスによる失点だったため、PK戦が始まる直前にチームメイトから「獲り返して来い」と声を掛けられて発奮。準決勝でも、国見のPKを防いで勝利に導いたため、「PKになったら大丈夫という気持ちでいました。相手のGKも上手かったけど、負けてはいけないとも思っていた」(広川)。鹿児島城西のGK橋口竜翔(1年)が、神村学園の1人目をストップしたのに対し、広川も2人目のキックをストップ。迎えた6人目でも広川がキックを止めて、2-2(PK5-4)で神村学園が勝利した。

 今大会、神村学園が掲げたテーマは、泥臭く戦う事。「昨年を超えて日本一になるため、チームのために戦える選手を一人でも多く増やしたい」と笠置は口にする。チームの看板である大迫、福田抜きでも準決勝以降の2試合を粘り強く戦い、勝利出来たのは収穫だが、「頑張りが空回りして、上手く行かない場面が多かったように感じた。頑張る方向がまだ定まっていない」(栢野コーチ)のも事実。笠置も「苦しい状況で勝ち切れたのはチームの成長に繋がるけど、本当はもっと自分たちのペースで試合をしないといけない。まだまだ目標には届かない」と続ける。

 優勝の喜びに沸いたのも束の間で、ベンチから引き上げる際に笠置が「優勝した後が大事」とチームメイトに伝えていたのが印象的だった。今回のタイトルは、まだスタートラインに過ぎない。手にした課題、収穫を成長材料に変えて、目標とする日本一獲得へと進んでいく。

(取材・文 森田将義)

TOP