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[イギョラ杯]しなやかなストライカーの自分革命。京都U-18FW小山真生は背負った“10番”をゴールで輝かせる

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京都サンガF.C.U-18の10番を背負うFW小山真生

[3.19 イギョラ杯 京都U-18 5-0 東京朝鮮高 東京朝鮮高G]

 ゴールを獲るのが何より一番の仕事だと、強く自分に言い聞かせている。自分がゴールを獲れば、勝てる。獲れなければ、負ける。そのぐらいの覚悟を持って、アカデミーでのラストイヤーに向かっている。

「今年1年はまずプリンスリーグで優勝して、プレミアに昇格して、個人としてもトップチームに昇格できるように頑張りたいです」。

 しなやかで、のびやかなストライドでピッチを駆けるナンバー10。京都サンガF.C.U-18(京都)のストライカー、FW小山真生(2年=京都サンガF.C.U-15出身)はゴールで自分の価値を証明し続ける。

 昨シーズンのプレミアリーグでは、開幕からしばらくベンチ外が続いていたものの、チームにとって4試合目で初出場を飾ると、連続スタメンとなった翌週の名古屋グランパスU-18(愛知)戦で、得点まで奪ってみせる。

 後半に勝ち越し点を奪われた直後。遠山悠希(現・アスルクラロ沼津)が蹴り込んだ右CKからゴール前は混戦に。その中で冷静に全体の流れを見極め、エリアの外へポジションを取った小山は、嶋洸輔(3年)のパスを受けると、右足でゴール右スミへと完璧なコントロールショットを送り届ける。

 まさにゴラッソと形容すべき一撃。ゴールを確認すると、そのまま一直線にベンチメンバーの元へ駆け出していく。試合後に当時の志垣良監督も「今シーズンの立ち上げ当初は、高校生なので感情の起伏はあったんですけど、本当に時間が経過するにつれて逞しくなってきたというか、『チームを勝たせたい』という想いが前面にあふれ出るような姿勢になってきたので、凄く成長していますね」と高い評価を口にしていたことが印象深い。

 最終的にチームは無念のプレミア初降格を味わうことになったが、小山はチーム2位の4得点をマーク。ただ、自身ではやはり納得できる数字ではなかったようだ。「去年のプレミアで4点獲ったんですけど、自分としてはもう少し点を獲れるチャンスもありましたし、守備のところは今年に比べてもまだまだ甘かったかなと思います」。

 新チームで臨む春のフェスティバル、イギョラ杯は大事な腕試しの舞台。京都U-18は初戦で東京朝鮮高(東京)と対峙する。立ち上がりからチームが攻勢に打って出る中で、小山にはなかなか得点が付いてこない。前半13分にミドルレンジから積極的に狙ったシュートは枠の右へ逸れ、25分に迎えた決定機は相手GKのファインセーブに阻まれる。

「もうちょっとでしたね。ゴール前で外すところまでは行けているので、イメージしたところにシュートを飛ばすところは、もうちょっと冷静にできるかなと。自分の特徴でもあるゴール前のコンビネーションや球際の強さは出せていると思うんですけど、まだ点が獲れていないので、明日からは点を獲ってチームを勝たせられるようにしていきたいです」。ゴールへの意欲は言うまでもなく、昨年までとは比較にならない。

 目を惹くのは背負った番号。10番には自分の意志と、尊敬する“先輩”の想いがこめられている。「自分が尊敬している先輩の勝島新之助選手(現・ジローナFC/スペイン)が去年付けていた番号で、『来年はオマエが10番を付けろ』と言われたんです。それで自分も『10番を付けてチームを勝たせられるような選手になりたいな』と思って、10番を希望しました」。1年時からチームにゴールで歓喜をもたらしてきた勝島のような活躍を期し、自分に自分でプレッシャーを掛けた。

「自分ではゴール前でシュートを決めたり、味方を使ったりするような、ゴール前で得点に絡むプレーが特徴かなと思っています。よく試合を見たりするのはスアレスで、ゴール前の動きとか、シュートを打つ時の落ち着きは参考にしていますね」。その後の準決勝では貴重な先制点をマークするなど、努力の成果は付いてきている。この1年で為すべきことは明確過ぎるほど、明確だ。

 10番を纏うストライカーの自分革命。京都U-18をプレミア復帰に導く道先案内人。小山が覚醒するタイミングは、きっとそう遠くない。

(取材・文 土屋雅史)

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