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[イギョラ杯]名門の10番を託された16歳。世代別代表も経験した武南MF松原史季は自分と周囲を思考する

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名門の武南高で1年から10番を背負うMF松原史季

[3.20 イギョラ杯 帝京高 0-2 武南高 帝京北千住G]

 間違いなく上手い選手であることは、一目見ればすぐに分かる。だが、そこに目を向け過ぎると、この男の真価を見誤る。自分と周囲を思考する10番。だからこそ、ピッチ上ではサッカーを本質的に理解した、効果的なプレーが繰り広げられるというわけだ。

「1つ1つの試合もそうですけど、練習から1つのパス、1つのコントロール、すべてを意識して全員がやっていけば、もっとサッカーが良いものになると思うので、遠くの目標も大事ですけど、近くの目標を1つ1つ立てていって、そこを目指してみんなで向かっていければいいかなと思います」。

 埼玉の名門、武南高で1年生から10番を託された確かな才能。MF松原史季(1年=浦和レッズジュニアユース出身)は、思考するプレーメーカーである。

 「相手が帝京ということで、自分たちもチャレンジャーという気持ちで臨んだんですけど、結構コロナの影響で練習試合もできていなくて、試合勘はあまり戻っていなかったですね」。強豪の帝京高(東京)を相手にしても、気付けばボールは松原に関わっていく。

 全体的には押し込まれる時間も長いゲームの中で、チーム自体も勘所を押さえて2-0で勝利。「1点こちらが先に獲ったことで、真ん中の選手が前掛かりになって、真ん中のスペースが後半に掛けて空いてきたので、自分のボールを持つ時間が長くなって、そういうところで時間は作れたかなと感じました。ただ、ミスも目立ったので、そういうところは今後試合を重ねていくにつれて、自分もコンディションを万全に戻していけたらいいなと思います」。冷静な分析力も際立つが、得点が決まった時に誰よりも真っ先にスコアラーへと飛び付く光景も、それと同じくらい印象的だ。

「喜びが抑え切れなくて(笑)。そういう一体感は今年のチームのモットーというか、目指しているところなので、1つのゴールを全員で喜べたというのは、これからのチームの成長に繋がるのかなと思います」。丁寧な言葉で説明してくれたものの、とにかくサッカーが好きなことがよく伝わってくる。

 昨年11月にはU-16日本代表候補のトレーニングキャンプに参加。「自分の中で積み上げてきたパスアンドコントロールを、遥かに上回るレベルで代表の選手たちはやっていたので、もっと自分で意識してやらなくてはいけないんだなというのは感じられましたし、今はミスをプラスに変えられているので、そこは経験として良かったかなと思います」。とりわけ3人の“チームメイト”が印象に残ったという。

「全員上手かったですけど、特に石渡ネルソン(セレッソ大阪U-18)と貴田遼河(名古屋グランパスU-18)、石井久継(湘南ベルマーレU-18)は凄くて、ネルソンは真ん中の選手ですけど、運動量が桁違いなので、どこにでも顔を出せますし、1つのパスもリターンも全部正確に出すべき足に返ってくるので、そこの落ち着きは参考にしないといけないなと思いましたし、遼河と久継に関してはシュートを打つ前のトラップが足元にぴったり止まるので、点を獲る選手としてシュートを打つだけじゃなくて、その前が大事なんだなというのは、選択肢としていろいろ感じましたね。やっぱり代表ではトラップの大切さが一番影響を受けました」。

 もちろんその刺激や影響を受けただけで、終わりにするようなタマではない。「代表で森山さんから『運動量を増やさないと』とは言われていて、背後に抜けたり、斜めの動きというのはまだまだ全然足りないですけど、自分では意識するようになったかなというのと、あとはやっぱりトラップのところは、まだ全然収まっていないところはありますけど、そういう1つ1つの意識はだいぶ変わったかなと思います」。高いレベルを知り、自分に秘められている可能性を、より突き詰めて考えている。

 今年は将来を見越しても、勝負の年。この高校で10番を背負う意味も、残すべき結果も、もちろん悟っている。「アシストでもそうですし、ゴールでもそうですけど、得点に絡むこと、自分で結果を残すことが大事になってくると思います。もう2年ですし、1年でちやほやされる存在ではないので、前とも後ろともしっかりコミュニケーションを取りながら、得点に絡んでいければ、というのは自分の目標です」。

 磨き上げられた足元の技術と、習慣付いた物事を多角的に模索する思考力。上手い選手から、スペシャルな選手へ。松原のプレーには、サッカーというスポーツを楽しむための少なくない要素が詰め込まれている。

(取材・文 土屋雅史)

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