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先発定着からW杯予選6連勝も…田中碧「主人公になろうと思っていたけど持っていかれた」

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日本代表MF田中碧(デュッセルドルフ)

[3.24 W杯最終予選 日本2-0オーストラリア シドニー]

 昨年10月のオーストラリア戦から先発に定着した日本代表MF田中碧(デュッセルドルフ)が、破竹の6連勝でのカタールW杯最終予選突破に大きく貢献した。「少しは貢献できたのかなと思うし、日本がW杯に出ることが日本サッカーにとって大事だと分かっている。日本サッカーは日本代表が先頭にあると思うので、W杯出場を決められたことを誇りに思うし、そこに自分が参加できたことをすごく嬉しく思う」。試合後、進境著しい23歳は謙虚な姿勢を貫きつつも、大仕事を成し遂げた感慨を噛み締めていた。

 1勝2敗の崖っぷちで迎えたカタールW杯最終予選第4節、オーストラリアをホームに迎えた日本は4-3-3へのシステム変更を敢行。田中はそれに伴ってA代表デビューを果たした。すると初陣の前半早々に初ゴールを記録し、そのままレギュラーに定着。ここまで6試合連続先発出場で日本を6連勝に導いた。その間の出場時間はGK権田修一(清水)、MF遠藤航(シュツットガルト)に次ぐチーム3位。初戦の豪州戦の試合後には「少しずつ勝ちを続けることで状況は変えられると思う」と語っていたが、まさに日本を救う立役者となった。

 それでも「僕個人の力ではないとすごく感じている」と謙遜した田中。雨中で行われたオーストラリアとのアウェーゲームでも、自身の課題を見つめていた。

「良かったところもあったし、悪かったところもあったが、前進してからの部分でミスがすごく多かった。判断のミスより技術的なミスがほとんどだったのでポジティブではあったけど、試合の中で芝の状態が変わっていく中で、アジャストしてしっかりと視野を確保して見えている中でのミスだったので、自分の中でもどかしさがあった。そこの精度を上げていかないといけない」

 そう語った田中は結果にフォーカスしつつ、2ゴールを挙げた元チームメートのMF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ)を引き合いに出して改善点を説明。「インサイドハーフはゴールやアシストを求められるポジションである。自分もこの試合で点を取って主人公になろうという気持ちを持っていたけど(三笘に)持って行かれてしまった。立ち位置が低い中で前進して、ボールを保持する部分を担うのが自分が出る価値だと思うが、前を向いた時に高いクオリティーの仕事ができるかというのはより求めていかないといけない。今日に関しては技術のミスがすごくあった。見えていなかったわけではないので、ポジティブではありながらも、精度は求めていかないといけない」と振り返った。

 そのような姿勢はW杯本大会を見据えての言葉にも垣間見えた。「もちろんホッとした気持ちはある。チームとして、日本という国として、W杯に出られることはすごく光栄なこと」と心境を口にしながらも「ただ個人としてはここから一からレースが始まる。最終予選の戦い方とW杯の戦い方は違うと思う。どういうサッカーをW杯で戦うかはまた違う話」と指摘。「これから準備期間がある中でどういうサッカーを築き上げるか。4-3-3でいくのか違うのかで、人選も変わってくると思うので、その中で自分の価値を出していかないといけない」と力を込めた。

 その上で「安定した立場だとは全く思っていないし、しっかり結果を出していかないといけない。焦りではないけど、新しい競争が始まると思う」と気を引き締め直した田中。「自分のサッカー人生を振り返った時、こうやって最終予選を戦ってピッチに立ってW杯へのチケットを勝ち取ることができた、そこに自分が関われたのはすごく光栄なこと。そこだけは忘れないように自分の心や頭に入れておきたい」とひとときの喜びを味わいつつ、さらなる成長を誓った。

(取材・文 竹内達也)
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