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日本vsオーストラリア 試合後の森保一監督オンライン取材要旨

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森保一監督

[3.24 W杯アジア最終予選 日本2-0オーストラリア シドニー]

 日本代表は24日、カタールW杯アジア最終予選の第9戦でオーストラリア代表と対戦し、2-0で勝利した。森保一監督が試合後、日本メディアのオンライン取材に応じた。

 以下、試合後の森保一監督オンライン取材要旨

●森保一監督
——さきほどの試合後会見では笑顔が見られなかったが、いまはどんな心境なのか。
一回グラウンドで喜んでいたので、一回クールダウンしてというタイミングが記者会見のタイミングだった。もちろん喜んでいるし、皆さんと喜びを分かち合いたい気持ちを持っている。ただそれと同時にアジア最終予選を突破することは大きなハードルだったけど、私自身、日本代表チームとして本当の目標はW杯にある。そのことを時間が空いたので思い出して、笑顔になれていなかった。いまはうれしく思っている。

——引き分けではなく勝利できた。そのことについてどう捉えているか。
「勝利はしたが、われわれが克服しないといけない課題は今日の試合でもあったし、勝ったからよかったというわけではない。ただし、今日の試合で選手が素晴らしかったところは、守って守り勝つではなく、いい守備からいい攻撃にというコンセプトでやってきたが、自分たちが前に出ていくんだという気持ちが表れていて、カウンターやスペースを突かれることがあったけど、前向きな姿勢があっての2-0の勝利につながった。前向きな気持ち、アグレッシブな気持ち、自分たちからチャレンジする気持ちを大事にしながら目標に向かっていきたい」

——普段は選手を称賛してほしいと言うが、采配が実って勝利できたことで自身としても手応えはあったか。
「自分らしく山あり谷ありこれまでいろいろあったし、今日の試合でも状況が刻一刻と変わる中、自分自身が試されるところはあったが、自分らしく自然体で目の前に起きていることに対処する、目の前で起きていることに自然体で対処できたのはよかったと思う。ただ自分の評価はお任せしたい。また選手たちが自分の判断を引き出してくれている。スタートから出た選手がタフに戦ってくれて、そして途中から出た選手がいい準備をしてくれて、試合を締めることをやってくれて、選手がそういう準備をしてくれて、パフォーマンスができたことが自分の判断につながった」

——選手としてドーハの悲劇を経験しているが、今回は監督としてW杯出場権を掴み取った。当時の教訓が活きたことはあるか。
「まずは自分自身を振り返ると、選手時代にアジア最終予選でW杯に手が届きそうなところで出場を逃した。当時は最善の準備をしてベストを尽くすことはその時もできていたと思うが、最後に夢がかかったところでゴール前で守れば守れるというところ、いわゆる守りに入ってしまったところがあったと思う。そういった部分では自分たちから掴み取りにいかないといけないという部分の、自分自身の反省を活かした。積極的に戦っていって、自分たちでオーストラリア戦、W杯出場という勝利を掴み取ろうというところになったのは、自分自身の経験が活きたかなと思っている。それだけですかね。あとはアジア最終予選を突破するのはわれわれにとって大きなハードル。ここまで難しい戦いの連続だったが、最終目標はW杯でベスト16の壁を破ってベスト8以上にいくこと。常にその基準を忘れずに、目の前の一戦一戦に全力を尽くすということでやってきたことが今日の試合に活きたと思う」

——広島で初優勝した時はドーハのことを引き合いに出して、勝ち取りに行く必要性を話したそうだが、今回はそのようなことはしたか。
「広島では自分の経験をもとに『守りに入るのではなく、自分たちから勝ち取る、掴み取る、、相手が与えてくれるものではないよ』と話していた。ただ今回の代表活動に関しては、このW杯出場が決まるかもしれない戦いの中で、具体的に自分の失敗談を選手たちに伝えながら掴み取りにいくという話はしていない。もうシンプルに勝ち取りに行く、掴み取りに行く、そして今日のミーティングでは『いろんな難しい判断をしなければいけないけど、積極と消極的なところがあれば積極的なプレー選択をしてほしい』と話した。経験談として語らなかったが、自分の言葉として経験の中で選手たちに話した。いまではすでに6大会連続でW杯に出ていて、反省は大切だが、世界に追いつき、世界の戦いで強豪を追い越していく考えを持たないといけないので、選手たちには前向きに話したいと思っていた」

——実際の試合に準じた練習はいつも2日間ずつしかしていないが、どういう意図があるか。3日間くらいしたい人もいるのではないかと思うが。
「与えられた準備期間の中で最大限何ができるかというところと、プランはもちろんあるけど、実際の選手のコンディションを見ながらトレーニングし、ミーティングで伝えていくことをタイミングを考えながらやってきたつもり。それがいまの質問の答えになっているかわからないが、プランはあるが、現実に目の前で起きていることに対応し、試合に向けて最善の準備をしていくということだと思う。実際に初戦の2日間であったり、次の試合のところで、まず初戦のところは練習で合わせられるのは一回だけ。みんなが集まってミーティングできるのは2日間。今回はラスト1日しかなかったけど、その中でコンセプトの映像を作って、できるだけ選手たちが意思統一できるように絵を持って試合に臨めるようにと準備してきた。ただやはり1番のポイントは選手たちが自分たちが目標にしていることを定めて、目の前の一戦に出し切って戦うこと。思い切って戦うためには自分たちがコミュニケーションを取って、戦うイメージを共有しようということ、選手たちが主体的にどうやったら試合に勝てるかというのをやってくれたことが大きいと思う」

——監督から情報を与えるのは2日間だけにしたいのか。
「与えられた状況の中でやることなので、それは3日間になるかもしれない。今回の準備としてはこの活動の前に選手たちに映像を送ったりして、選手たち自身でクラブから日本代表の活動にスイッチを入れ替えてくれるようにという働きかけをしていた。2日間とか3日間ではなく、いろんなタイミングで準備している。そこはコーチングスタッフ、メディカルスタッフも、チームスタッフも常に選手たちにいろんなメッセージを送りながら、選手がいい準備をしてくれることにつながっていると思う」

——事前に映像を送ったのは最初からそうだったのか。昨年11月には給油で移動が遅れた場面もあったが。
「事前に送ったのは今回が初めて。1回移動の時に給油で選手の合流が遅れた時は、選手たちが機内でどうやって戦うかを話してくれていたし、最初にベトナムに入ってきた選手たちも自分たちでやるべきことを共有し、遅れて入ってきた組とコミュニケーションを取って、意思統一してくれようとしたことが結果につながったと思う」

——監督が掴み取りに行くと言っていたが、前半は殴り合いになっていて、後半はコントロールが効いていた。それでも最後は相手のペナルティエリアに入っていたのを見ると、選手たちが勝つことを貫いたと思う。選手と監督は一体だったか。
「私自身は一体だったと思いたいけど、皆さんのほうが選手のコメントでお分かりいただいていると思う。先ほども言ったが、私自身がプランした中で選手たちに試合に向けて、働きかけることはあるが、その大まかなコンセプトに選手たちが従ってくれている中で、でもやっぱり戦っているのはピッチ内の選手であるということを選手たちが自分たちで認識した上で試合の流れを認識して、相手を上回っていくという修正力、対応力を発揮して、試合に勝つ選択をしてくれた。選手たちが思い切ってプレーしたことについては私自身、見守っていきたいと思うし、積極的にそしてアグレッシブに選択してやってくれた中で、もしミスが出たとしても、そこは私自身がその責任を負っていきたい気持ちでは選手たちを見ていた」

——ベトナム戦もいい試合を期待している。
「次の一戦も勝ってW杯につなげる、その先の目標につなげるということ。一戦一戦勝つためにこれまで戦ってきたので、次のベトナム戦も最善の準備をして、ホーム日本埼スタで勝利を収めて、日本サッカーファミリーの皆さん、そしてメディアの皆さんをはじめとする日本サッカーチームの皆さん、サポーターの皆さんと一緒に勝利とW杯出場を喜びたい」

——FWに浅野拓磨を起用したが、その意図は。これまでは相手が疲れてきた時間帯に浅野を投入していたが。また三笘薫を途中起用したのは。
「今回招集できた選手の中で、どういうふうに戦うのがベストかな、勝利の確率を上げられるかなと考えた。今日のベンチ入りメンバーで、FWの選択肢として浅野と上田(綺世)の二人で考えた。どちらを先発で使うかはギリギリまで悩んだし、これまでのパターンで行くと、まずはタフに戦った上で、そこで試合を決められるのであれば決めていく。そして相手が疲労した中でスピードのある浅野を選択していたのはおっしゃる通り。ただ先発させたのは三笘との関係ではなく、われわれが5連勝でオーストラリア戦を迎えられたのも、ホームでオーストラリア戦、拓磨のゴールにならなかったけど、拓磨のシュートが相手のオウンゴールになったから。いつも彼も先発したい気持ちを持ちながらサブで準備してくれている。もっと言えばこれはだいぶ前の話だが、『メンバー外でも自分は行きます』と話をしたことがある。そうやって頑張っていることと、結果を出した選手が先発で出るべきかなと思って選んだ。いま預かっているベストなチームの中でどういう選択をするかは変わってくるかもしれないが、今回はそうして選んだ。また三笘は攻撃の切り札ということで思われているかもしれないが、彼は攻撃力もベルギーで上げているが、守備であったり、攻守ともにチームに貢献できるところを川崎Fでも培いながら、いまベルギーでもレベルアップしている。無失点で行きながらも彼の攻撃力で得点チャンスが生まれると起用した。それに加えて五輪で綺世と三笘の関係が非常に良かったので、そういったたくさんのことを含めて起用した」

——同点でも勝ちを意識して臨んでいたが、守備のことも考えていたと思う。
「いい守備からいい攻撃というコンセプトを持ちながら戦ってきてここまできた。今日の試合もコンセプトに関しては選手たちに伝えているし、選手たちにはそのコンセプトをインプットしながらも勝ちに行くためにどうしたらいいのかというプレーの選択をしてくれていたと思う」

——W杯本大会に向けて対策をしていく中で、格上との対戦も含めて、どのようなイメージを持っているか。
「私自身の考えとして、いい守備からいい攻撃というのは変わりない。これまで、われわれが最終目標とするW杯でベスト8以上の結果を掴み取るというところから考えてチーム作りをしてきたので、基本的には変わりはないと思う。ただ私自身、ロシアW杯をスタッフとして経験させていただいて、日本らしく、勇敢に挑んでいかなければ世界には勝てないなというところも学ばせてもらった。そういった意味でも自分たちから勇敢に勇気を持って戦いに挑んでいくという部分はW杯の舞台でも表現できるようにしながら、ここ5連戦無失点で抑えたように守備の部分もしっかりしていきたい。現在の日本代表の世界の中での立ち位置としては、まだまだ追いついていかないといけないところはあるが、世界に追いつき、世界を追い越せというところ、追い越すためにはどうしたらいいかを考えていきたい。相手には敬意を払うが、われわれが相手を上に見るのではなく、相手と同等な視線を持って戦いに挑みながら上回っていけるように、超えていけるようにやっていきたい。選手たちは世界と戦っているし、目線は世界と何も変わらない。そういうところには自信を持って、自分たちはやれるんだというところを日本サッカーに関わる人に共有してもらいながら、『世界を追い越せ』をテーマに戦っていきたい」

——ベトナム戦はすごく大事な試合だと思うが、メンバーの考え方も含めて勝つこと以上のものを見たい。
「まずは現実を見て、これからオーストラリアから日本に移動しなければならないことや、選手のコンディションもどうなっているかわからない中で、次のベトナム戦に向けて最善の準備をし、メンバーを決めていかないといけないと思っている。いろんなトライはしていきたいと思うが、まずはチームの勝利のために私自身がそこを最優先に考えていけるように、選手起用を考えていきたい。期待されていることはすごくよく理解しているし、いろんなワクワク感を持っていただくことはやりたいと思っているが、チームの勝利のために全員がそこを最優先に考えて、判断をするというところ。それはこれまでと同様にしっかり優先順位を持って考えていきたい」

——コロナだけでなく、関東地区では停電もあったりして、そういったものをベトナム戦で払拭してもらいたい。
「今日の試合の前にも、選手たちとともに確認したことがある。われわれ日本代表を応援してくれる人たち、そして日本で起きている自然災害がコロナ等々で苦しんでいる人たちに応援してもらってくれる分、勝利を届けて皆さんに元気を持ってもらう恩返し、社会貢献をしていこうと話した。いろんな戦いの中で、自分たちを応援してくれるサポーターのため、国民のみなさんのために社会貢献していこう、そういう存在としてやっていこうと話していた中で、ベトナム戦に向かっていきたい。これまで表現してきたことを継続していきたい。またロシアのウクライナ侵攻で犠牲になられた方にご冥福をお祈りしたい。被災された方々の暮らし、平穏な暮らしが少しでも早く戻ってくるよう、被災された人たちの負った心の傷が早く元通りになることを願いながら、世界人類の平和を願いながら今日は戦おうと、日本への社会貢献、そして世界平和を祈りながら戦っていこうということを考えて試合に臨んだ」

 また試合後、森保監督とマン・オブ・ザ・マッチのMF三笘薫(ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズ)が記者会見に出席した。

 以下、試合後の会見要旨

●MF三笘薫
——短い時間で2点を取れたことについてどう捉えているか。
「途中出場は慣れているし、そういうシチュエーションを想像しながらやっていた。スタメンから出ていた選手があれだけタフに戦ってああいう状況を作ってくれた。試合を決めれればと思って出場した」

——東京五輪で悔しい思いをしたが、大舞台で結果を出せたことについてどう思うか。
「東京五輪の悔しさはもちろん持っているけど、日々成長していくしかないと思っていた。ベルギーに行ってから成長したところを代表で出していきたいと思っていた。そういったところが今回出せてよかった」

——ここからW杯に向けて、どういう意識でプレーしたいか。
「もちろんワールドカップに出たい気持ちは常に持ちながらも、成長していくしかないと思っている。また競争が始まるのでそれに勝っていけるように、自分自身はまだまだ選手として足りない部分が多いので引き続きやっていきたい」

——もっと長くプレーしたいと思うが、出番が来ない時はイライラしていたのではないか。
「もちろん多くプレーはしたいけど、いろんな意図があるし、状況がある。他の選手がつないでくれて僕自身に回ってきて、この何分でも仕事をしないといけないと思っていた。効率的にゴールを決めることができてよかった」

●森保一監督
「まずはこのオーストラリアで戦うということ、移動等々でコンディション作りが大変だったが、選手たちが良い準備をしてくれて、選手たちを支えるスタッフが寝る間も惜しんでチーム作りをしてくれた結果、みんなの努力が勝利につながって、W杯出場を決められてうれしい。W杯につながる戦いをしてくれて、ここにいるスタッフだけでなく、日本代表への思いを持って、これまで努力してくれた選手、今回招集できなかったが、ここにいることが当然だという選手、サッカー関係者の全ての皆さんが、コロナ禍やいろんな災害がある中で、われわれの活動を支えてくださったおかげでW杯に出場することができてよかった。サッカーファミリーの皆さん、サッカー関係者の皆さん、サポーターをはじめ国民の皆さんと喜びを分かち合いたい」

——試合の読みが完璧だったのではないか。三笘薫、原口元気を投入するタイミング、相手が前に来るタイミングで投入したのが効いていた。
「試合の流れと選手の疲労具合を見て、交代のカードを投じていこうということが采配として当たったと言われることについてはありがたいと思うが、選手たちが常に戦ってくれて、次への準備をしてくれた結果がつながって、今日の2-0の勝利になった。選手たちのタフな戦いと準備を称賛してもらえたらと思う」

——前半にかなりオープンだったが、後半に少し落ち着いた。引き分けを狙う交代もできたんじゃないかと思うが、三笘薫を入れた時に葛藤はなかったか。勝負に出た理由は。
「まずは試合の前からも皆さんにお伝えしていたとおり、チームにも選手にも伝えていたのは今日勝利を目指して戦った上で、われわれが勝ってW杯出場を掴み取ろうということ。それを考えた結果の選手交代だったり、試合に向けての采配だった。先ほども言ったが、私の采配というよりも、この試合に勝って決めようということを先発の選手、サブの選手、サポートに回った選手みんなが意思統一してくれて戦った結果。引き分けに関しては、勝ちを目指すことで最後に得点に至らなければ引き分けという形で終わるのは現実的かなと考えていた」

——試合後に円陣を組んで、もっと集まれとジェスチャーし声をかけていたが、どんな声をかけていたのか。
「先ほども話したとおり、まずはオーストラリアに集まってくれた選手、スタッフが試合に向けて最善の準備をしてくれて、全力を出し切って試合に臨んでくれた結果だということを伝えた。またこの試合の勝利、そしてW杯への出場のチケットを掴み取れたのはここにいる選手・スタッフだけでなく、日本代表への思いを持って努力してくれた選手、これまでチームが立ち上がって代表の道をつなげてくれた選手たち。本来もっと多くの選手たちがここにいてもいいし、もっといろんなスタッフがここにいてもいいと思っていたということ。そしてこのコロナ禍で、われわれがサッカーをさせてもらえているサッカー関係者、政府関係者、地方行政の方々、エッセンシャルワーカーの方々、いろんな人が力添えしてもらえて勝利できた。いろんな方と勝利を分かち合おうと話した」

——負傷明けの三笘薫を使ったことについては。
「前回の招集は怪我で見送ったが、そこから三笘だけでなく、直近の試合で45分やっていて、十分に代表の試合に使えるというパフォーマンスを確認して招集した。使い方に関してはこちらに集まってきて、コンディションを見て、攻撃の切り札として起用できると考えた」

(取材・文 竹内達也)
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