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[MOM3787]東京VユースMF新鉄兵(新3年)_1ゴール1アシストで静学撃破の立役者は、伝統の「緑の10番」を逞しく継承する

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東京ヴェルディユースの新10番、MF新鉄兵

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[3.26 船橋招待U-18大会 東京Vユース 2-1 静岡学園高]

 緑の10番は、重くないはずがない。サッカーの一番上手いヤツが付ける番号。きっとランドには、その伝統が色濃く継承されているはずだ。だからこそ、覚悟を決めた。今ではこの番号を託されたことを、良かったと思えるようになっているという。

「歴代の選手を見てもみんな上手かったですし、去年一緒にやっていたコタくん(根本鼓太郎)を見ても、凄く上手だったので、そこに追い付けるようにとにかく結果を出していきたいなと思っています」。

 日本を代表する緑のサッカー集団。東京ヴェルディユース(東京)の新10番。MF新鉄兵(新3年=東京ヴェルディジュニアユース出身)の個性が、静岡の難敵相手にもはっきりと際立った。

 船橋招待U-18大会2日目。東京Vユースは、唯一無二のスタイルを志向し続けてきている静岡学園高(静岡)と対峙したが、立ち上がりから相手のドリブルとパスワークを受け、後手に回る。

「もっと自分たちがボールを持って、主導権を握りたかったですけど、ちょっと難しかったですね。相手の守備の強度が結構高くて、ミスが増えて、ボールをロストするシーンが多かったので、そこももっとマイボールにできるくらいのクオリティが必要かなと思います」とは新。前半16分には素晴らしいミドルシュートを叩き込まれ、先制点を献上してしまう。

 嫌な雰囲気が流れかけたチームを救ったのは、10番の得点感覚だ。失点から3分後の19分。DF新井海斗(新3年)からパスを受けたFW白井亮丞(新2年)が枠内へシュートを打ちこむと、GKがファインセーブで掻き出したボールが、新の目の前にこぼれてくる。

「最近点が獲れていなかったので、結構狙っていた中で、自分の前にたまたまボールが来たので、普通にループで狙いました」。フワリとした軌道が、そのままゴールネットへ吸い込まれていく。

「アレは何も考えずに打ちました。最近は考え過ぎてゴールを決められていなかったので。入った瞬間は嬉しかったですけど、チームとしても勝ちたかったので、すぐ2点目、3点目を獲りに行こうという感じで、あまり喜べる感じではなかったですね(笑)」。久々のゴールをゆっくりと喜ぶ時間はなかったが、その足には確かな感触が残った。

 より“らしさ”が発揮されたのは、後半の終盤だ。終了間際の20分(25分ハーフ)。左サイドの大外にボールが入った時、すぐにチームの共通理解が複数人で共有される。「サイドの選手に入った時には、その前の選手がポケットと呼ばれる部分に走ることがこのチームでは求められるので、そこに全力で走りました」。そう振り返った新が、マーカーを振り切りながらきっちり折り返したボールを、ニアで白井がゴールネットへ流し込む。

「寄せに来た敵のタイミングをずらして、剥がして、しっかり運べてアシストできたので、良い形でのゴールでした。あまり自分は身体やフィジカルが強いわけではないですし、敵とぶつからないように、うまくタイミングや身体をずらしながらやらないといけないので、そこが上手く行ったシーンでした。アシストの方がゴールより思い通りに行きましたね」。2ゴールに絡むパフォーマンスは、攻撃の中心にふさわしい働き。静岡学園撃破に、新10番が十分な役割を担ってみせた。

 その番号は、自分でも少し予想外だったそうだ。「今年の背番号が発表された時に、LINEで送られてきたんですけど、“10番”だったのが自分でした。嬉しい気持ちと、やらなきゃいけない緊張感がありましたし、最初はぶっちゃけ『自分で大丈夫かな……』という不安な気持ちも結構ありましたね」。

 素直な気持ちを明かしながらも、既にその心境には変化が訪れているようだ。「まだまだ足りないとは思っていますけど、せっかく付けさせてもらえるので、『もう10番の方がいいな』と思い始めています」。つまり、腹が据わったわけだ。それならば、もう吹っ切れた。今シーズンの目標も、自信を持って口にする。

「とにかくアシストやゴールで結果を出せる選手になりたいですし、トップ昇格を目指しているので、トップの人たちに認めてもらえるように、このチームで違いを生み出して、自分が中心としてプレーしていけるようなチームにしたいです」。

 立場は、その背負い方で人を大きく変える。伝統に彩られたこの番号を、少しずつ自分のものへとしてみせる。新は『緑の10番』が持つ意味を自らの意識にも刻み込みつつ、さらなる飛躍の年へと歩みを進めていく。

(取材・文 土屋雅史)

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