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[MOM3791]川崎F U-18MF川口達也(3年)_ルーティンからの冷静なPK。チームのプレミア初ゴールはこのレフティがさらう!

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川崎フロンターレU-18のアグレッシブなレフティ、MF川口達也

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.2 プレミアリーグEAST第1節 大宮U18 0-1 川崎F U-18 秋葉の森]

 端から譲る気はなかった。すぐさまボールを手にして、スポットに向かう。自信はもちろん、あった。

「PKになった瞬間に、みんなファウルを受けた選手のところに行ったんですけど、自分だけボールを取りに行ったんです。『結果を残したいな』と思っていたので、自分から蹴りに行きました」。

 小学生の頃から続けているルーティンも忘れていなかった。意外と冷静な自分に気付く。大丈夫。いつも通り。絶対にうまく行く。川崎フロンターレU-18(神奈川)のナンバー8。MF川口達也(3年=川崎フロンターレU-15出身)は短い助走から、得意の左足を振り抜く……

 前半からアグレッシブな姿勢は際立っていた。初昇格の川崎F U-18にとっては、未知の世界と言っていいプレミアリーグの開幕戦。「試合前とか、今までのプリンスとはちょっと違う緊張感があって、『本当にプレミアが始まるんだな』という実感が、整列した時に湧いてきましたね」という川口は、とにかく隙さえあればシュートを打ちこんでいく。

 16分にはMF大瀧螢(3年)のシュートがクロスバーに当たると、素早く収めて枠内へ打ち込むも相手GKがファインセーブ。25分にもDF江原叡志(2年)からパスを引き出し、放ったシュートはGKがキャッチ。44分にも右サイドから果敢にフィニッシュまで持ち込む。いずれもゴールには至らなかったものの、「開幕戦ですし、『自分が結果を残すことで、チームにも自分にも良い影響が出てくるんじゃないかな』と思って、チームの勝利のために点を獲りに行きました」と明かした姿勢を前面に打ち出し続ける。

 その時は後半15分に訪れた。MF尾川丈(2年)の突破で、川崎F U-18にPKが与えられる。「僕がボールを取りに行ったんですけど、『蹴ろうかな』と思って帰ったら、新しいボールを達也がもう持っていたので、『もう決まってるんだ』って(笑)」と明かしたのはMF大関友翔(3年)。「自分も蹴りたかったんですけど、達也が凄く決めそうな雰囲気も出していたので、そこは引きました」と続いた言葉に、大関も感じた川口の『自分が蹴る』という執念が見て取れる。

 ボールを蹴り込むべきゴールに背を向け、少しの間だけ逆側のゴールを見つめる。「1回自陣のゴールを見たら小さく見えるじゃないですか。それから相手のゴールを見たら凄く大きく見えるので、小学校からずっと蹴り方は同じです」。ルーティンを思い出す余裕は、十分にあった。

 大丈夫。いつも通り。絶対にうまく行く。思い切って左足で打ち込んだボールが、きっちりとゴールネットを揺らす。「自分は決定的な仕事をするのが武器だと思っているので、とりあえず結果を残して、チームの勝利に貢献するということを第一に考えて、PKを蹴らせてもらいました。ゴールを決めて本当に嬉しかったのと、とりあえずホッとしたところはありましたね」。

 川口が成功させたPKは、そのまま決勝点。チームのプレミアデビュー戦で、チームのプレミア初ゴールをさらっていく。強気な姿勢で、クラブの歴史にその名を刻む貴重な勝利と得点を手繰り寄せた。

 中盤にテクニカルな選手が揃い、ボールをスムーズに動かしていくスタイルの中で、川口のドリブルで剥がせるスキルは、間違いなくアクセントになっている。「ミドルゾーンのビルドアップだったら、任せられる選手がたくさんいるので、そこに自分が関わっていって、テンポや流れを変えることは考えているんですけど、アタッキングサードに入ったら自分の特徴を生かして、ゴールに直結するプレーを意識してやっています」。本人がそう語る武器は、チームを率いる長橋康弘監督も十分に認めている。

「今日は大関と尾川が前をやったんですけど、彼らはどちらかと言うと足元に自信がある子たちで、逆にサイドハーフが背中を取る動きもやっていかないと、ライン間も空かないですから、そういう意味では達也も積極的にやってくれたと思います」。戦術的にも、スタイル的にも、8番が有する個の力は今やこのグループにとって、欠かせないものになりつつある。

 それでも、まだ終わったのはたったの1試合。自身の力をより発揮する舞台に、これからも立ち続けていく必要がある。「今日のゴールは、自分が思っているより大きなことをできたのかなとは思うんですけど(笑)、まだ第1節ですし、ここからリーグ戦は長いので、1試合1試合点を重ねていけるように、毎日の練習で努力していきたいと思います」。

 記念すべきプレミア初ゴールを挙げた、アグレッシブなレフティ。川口の自信に満ちた強気な積極性は、これからもチームにポジティブな推進力をもたらしていくはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

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