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“3冠の過去”から切り替え、新たなスタート。青森山田が「今できること」を徹底し、市船を2-0撃破!

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後半34分、PKを決めた青森山田高FW小湊絆(10番)がゴールを喜ぶ

[4.3 高円宮杯プレミアリーグEAST第1節 市立船橋高 0-2 青森山田高 グラスポ]

 先輩たちが成し遂げた“3冠”から切り替え、自分たちが「今できること」を徹底。新生・青森山田が22年度公式戦初戦を白星で飾った。高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 EASTは3日、第1節2日目の3試合を行い、昨年優勝の青森山田高(青森)と同9位・市立船橋高(千葉)が激突。アウェーの青森山田が2-0で勝ち、白星スタートを切った。

 ホームの市立船橋は4-5-1システム。GKドゥーリー大河主将(3年)、右SB桒原大知(3年)、CB懸樋開(3年)、CB青柳広望(3年)、左SB北川礁(3年)。中盤はゲーム主将の太田隼剛(2年)と白土典汰(2年)のダブルボランチで右SH高橋悠真(3年)、左SH丸山侑吾(3年)、トップ下が21年U-16日本代表候補の郡司璃来(2年)、そして1トップを青垣翔(3年)が務めた。

 一方、21年度シーズンにインターハイ、選手権、プレミアリーグEASTの“3冠”を成し遂げた青森山田は注目の今季公式戦初戦。先発SBとして選手権優勝を経験しているMF中山竜之介(3年)が、リハビリ中のDF多久島良紀主将(3年)に代わってキャプテンマークを巻いた。

 4-4-2システムのGKは鈴木将永(2年)、DFラインは3冠メンバーのFW渡邊星来(現FC刈谷)を兄に持つ右SB渡邊来依(3年)、CB小林康人(3年)、CB三橋春希(3年)、左SB迫田大空(3年)。中盤は中山と小栁一斗(3年)のダブルボランチで右SH奈良岡健心(3年)、左SH小野理竜(3年)、2トップは櫻井廉(3年)と選手権3発の新エースFW小湊絆(3年)がコンビを組んだ。

 雨天の中でスタートした試合は前半2分、青森山田の小湊が右サイドから個で持ち込んで右足シュート。5分には、奈良岡が右サイドから最初のロングスローを投じる。序盤は縦にボールを入れ合う展開に。昨年、アウェーで青森山田に0-9で大敗している市立船橋は強度で対抗し、試合を通して存在感のあった青垣が前線でFKを獲得する。

 だが、15分、青森山田がこの日3本目のロングスローを先制点に結びつける。左サイドから奈良岡が投じたロングスローをニアで小湊が競り、ファーから飛び込んだ小林が頭でゴールへプッシュ。新シーズンの公式戦ファーストゴールを伝統のセットプレーからもぎ取った。

 青森山田は昨年の経験者である中山が高い強度で基準を示すなど、流れを引き寄せていたことが印象的。先制後、ベンチの黒田剛監督からシンプルなプレーを求められる中、サイドや前線の小湊へボールを入れてセットプレーの本数を増やす。一方の市立船橋はスリッピーなグラウンドでパスミスが目立ち、なかなか相手ゴールに近づくことができなかった。

 それでも、前半終盤、息の合ったコンビネーションを見せる太田と郡司、そして青垣が絡んだ攻撃で前進。38分には右中間からドリブルで仕掛けた青垣が鮮やかなボールコントロールでDFを剥がすが、右足シュートは青森山田CB三橋がスライディングでブロック。市立船橋は41分にも郡司がドリブルからラストパスを通し、高橋が連続シュートへ持ち込むが、青森山田の中山やGK鈴木が立ちはだかる。

 青森山田はこの日、被シュート9本。同ゼロで選手権決勝を制した堅守に比べると課題は多いが、後半6分にも市立船橋MF太田が迎えたチャンスで三橋がシュートブロック。黒田監督は「我々は自分たちが今やれること、今積み上げられることをしっかりと捉えながらやらないといけないですし、(“3冠”という)過去のことは過去のこととして、割り切ってやっていくしかない」と語る。冬の鍛錬期にトレーニングできなかったこともあって、“3冠”世代に比べると、強度も、精度も、メンタリティーもまだまだ。それでも、ハードワークすることやセットプレーでの得点、「シュートを打たせない」「ゴールを隠す」という青森山田の決め事を自分たちのできる限り表現していた。

 青森山田は後半も小湊や奈良岡が個でラストパスまで持ち込み、セットプレーからチャンス。市立船橋も11分に桒原が相手の決定機を阻止すると、15分には左CKをニアの郡司がフリックして青垣が左足を振り抜く。だが、青森山田はここでも懸命のシュートブロック。終盤へ向けて市立船橋はMFイジェンバ・リチャード(3年)、青森山田もMF川原良介(2年)を投入して次の1点を狙う。

 市立船橋は青垣や郡司、丸山のドリブルが効果を発揮。一方の青森山田は守備に重きを置いてリスク管理しながら、大きなプレーをすることを徹底する。チーム全体で運動量・ハードワークを維持し、綻びを見せない。すると34分、青森山田は中山のインターセプトから、巧みに相手CBと入れ替わった小湊がPKを獲得。これを小湊が自ら右足で決め、2-0とした。市立船橋も桒原や青垣のシュートが相手ゴールを脅かしたが、追撃することができない。この後、青森山田はMFアマエシハリソン翼(3年)、FW武田陸来(3年)を投入。市立船橋もMF土岐泰斗(3年)をピッチへ送り出したが、堅守・青森山田は揺るがなかった。

 市立船橋は強度で対抗し、技術力で差を生み出そうとした。拮抗した戦いを演じたものの、敗戦。“常勝軍団”復活を目指すチームにとって、無得点に終わったこと、勝ち切れなかったことは反省材料だが、内容、チームの一体感含めて前向きなゲームであったことも間違いない。波多秀吾監督は「もっともっとこだわってやっていかないといけない」と指摘した上で、「(これまでは)チームがなかなか一つになれない、ベクトルが同じ方向を向かないということがありましたが、きょうのゲームを経験して負けて泣いているのもいましたし、これから面白く変化していけるかなと期待感はあります」と語った。

 一方、青森山田の選手たちは素直に白星を喜んだが、満足感はない。まずは青森山田の基準に近づき、身に着け、肉付けしていくこと。小湊は「まだここからなので、長い一年間を通して強いチーム、色々なことができるチームにしていきたい。(スタートラインが低いと言われるが、逆に)『伸びしろしかない』と思うので、練習からチーム全体で声を掛け合いながらやれていければいい」と力を込めた。

 また、黒田監督は「いい加減なチームにならないように、ごまかすようなチームにならないように」。隙を一つ一つ潰し、失点しない、また複数の武器を持ったチームへ。まずは、夏へ向けて、冬に重ねられなかった「鍛錬」の部分と「スキルアップ」、そして「山田のメンタリティー」の「3本立てのところを同時に強化してやっていくしかない」という。王者はこの日、快勝発進。だが、周りの声に浮かれることなく、地に足をつけて、一歩一歩前進を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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