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[MOM3794]昌平MF荒井悠汰(3年)_テーマは「チームを勝たせる」。FC東京内定10番が2発で得点王宣言!

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昌平高のFC東京内定MF荒井悠汰がチームのプリンスリーグ関東初戦で2ゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.9 高円宮杯プリンスリーグ関東1部第2節 昌平高 3-0 帝京高 昌平高G]

「チームを勝たせること」を求められている注目レフティーが、初戦から大活躍だ。昌平高(埼玉)MF荒井悠汰(3年=FC LAVIDA出身)は、今年2月に23年からのFC東京加入が内定。FC東京のキャンプからトレーニングに掛けて約2か月半の期間帯同し、ルヴァンカップでトップチームデビューも果たしている。そのMFが、チームのプリンスリーグ関東初戦で2ゴールを叩き出した。

 まずは先制した直後の前半15分、荒井はボールを持った相手DFの体勢が崩れたところを見逃さずにインターセプトする。「(相手が)後ろ向いた時に『これ、行けるな』と思って、そこで上手く獲ることができました。今日は本当に(得点を)獲りたかったので、(ボールを)獲った瞬間、『自分が打とう』と思っていました」。ボールを奪った荒井は中へ切れ込んで左足一閃。シュートの勢いがDFのブロックを上回り、そのままゴールネットを揺らした。

「(藤島崇之)監督も言っていたんですけれども、シュート打てば相手に当たるかもしれないし、相手の股通ったりするかもしれない。シュート打つことは大切だなと思いました」という一撃。左足のパワーとゴールへの強い意欲で強敵・帝京高の守りを打ち破った。

 荒井は立ち上がりから存在感十分の動きを見せていた。FC東京練習参加時、「帆高君が(三笘薫を)止めるような話があったので挑んでみました」と“三笘薫キラー”DF中村帆高にドリブルで挑戦してプロのDFの間合いなどを学んだという。その荒井は、右サイドからのドリブルで帝京DFを振り切り、シュートやラストパス。味方選手のシュートが精度を欠いたためにアシストはつかなかったものの、スルーパスで2度決定機を演出している。

 何よりも印象的だったのが、力の使い分けだ。この日は1タッチ、2タッチでパスをさばきながら、必要あればフィジカル能力の高さを活かしたボールキープ。そして、FC東京の吉本一謙スカウトが「(FC東京ではサイドで)持ったら絶対に仕掛けろ、と言われていました」と説明するように、サイドで前向きの状態となれば果敢にドリブル突破を繰り返していた。

 昌平の藤島監督は「どこで100を発揮するか。(1年時できていたように、)そこが上手くコントロールできれば良いと思っていた」という。昨年の荒井は強豪の10番を背負った責任感もあってか、ドリブルもボールキープも全てがフルパワーに。その結果、大事な局面で力を使い切れない課題があった。

 また、以前はオフの動きが少なかったこともあり、DFに狙われて潰されることも。だが、FC東京で1タッチ、2タッチのポゼッションのトレーニングを繰り返す中、「1フェイク入れたり、背後を取ることで相手を混乱させるってことをやってきました」という荒井は、自身も認めたように駆け引きの部分で大きく変化し、より大事なところで力を発揮できるようになっている。

 吉本スカウトは、荒井の良さについて、常に向上心高く、何が足りないのか考えて実行する力を挙げる。藤島監督も「Jクラブの練習に行って良くなって帰ってきた」と驚いていたように、FC東京のトレーニング、また練習前の筋トレにも実直に取り組んできた荒井はフィジカル、キレも向上していることをピッチで示した。

 この日の荒井は、ノルマも果たした。FC東京から昌平に戻る際、吉本スカウトから「チームを勝たせる選手になって欲しい」とテーマを与えられた荒井は、我慢の時間が続いていた後半終了間際に2得点目。DFと対峙した状態から左足のコントロールショットを左隅に沈めた。

 主将のCB津久井佳祐(3年)は「スーパーですね。特に2点目は悠汰、って感じでしたね」と絶賛。ゴールの瞬間、我慢強く守っていたDF陣からはエースを称賛する声が飛び交っていた。また、昌平でブレイク中のMF長準喜(2年)は「悠汰が戻ってきて、紅白戦やったんですけれども、違いを見せつけられて、危機感を感じました」。チームに復帰してまだ一週間の荒井だが、スタッフ、チームメートも驚くプレーを練習、試合でも披露している。

 荒井はこの日の感想について、「今年はめっちゃ帝京が強いと思っていて、勝てるか心配でした。初戦というのもあって、難しい試合になると思っていましたけれども、今年は本当に自分が警戒されていてもそれを上回るプレーをしたいなと思っていましたし、今日は2得点でチームの勝利に貢献できたことが非常に嬉しく思っています」とコメント。1年時に全国高校選手権で活躍し、日本高校選抜にも選出された荒井だが、昨年は怪我やコンディション不良もあって不満のシーズンに。この日を向かえる前は「不安でしたね」と振り返る。

 それを自分の足で振り払った荒井は「これを続けていかないといけないです。得点王狙って行きます。今年は(周囲の)想像を上回りたいですね」と宣言した。「キャンプで(先輩たちと)コミュニケーションが取れた。(永井)謙佑さんとか、(自分の低い声などを)イジってくれるのが嬉しくて」と感謝するFC東京の公式戦では、まだ結果を出すことができていない。より進化し、より期待されるプレーヤーになってFC東京に加わること。この日の活躍にも満足はしていない。系列のFC LAVIDA時代から含めた昌平での6年間の感謝の思いを込めて、また自身の不安を完全にかき消すためにも、「チームを勝たせること」を続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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