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2トップ躍動の清水ユースが大津に4発快勝。こだわって初の無失点勝利

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前半40分、この日2得点目を挙げた清水エスパルスユースFW成澤夢行がアシストのFW斉藤柚樹とゴールを喜ぶ

[5.1 高円宮杯プレミアリーグWEST第5節 清水ユース 4-0 大津高 アイスタ]

 清水ユースがこだわって、初の無失点勝利! 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 WESTは1日に第5節2日目を行い、清水エスパルスユース(静岡)が大津高(熊本)に4-0で快勝。戦績を2勝1分2敗の五分としている。

 4点リードの試合終盤、清水ユースは1点差かと思うような鬼気迫る戦い。相手のセットプレーには全員で声を掛け合って対応し、味方の好守を称え合う。幾度かボールがゴール前にこぼれるシーンもあったが、身体を投げ出してストップ。そのまま無失点で終えると喜びを爆発させていた。

 今季から指揮を執る“ミスターエスパルス”澤登正朗監督は、「とにかく失点ゼロに抑えたのが(練習試合も含めて)初めてなんですよ。勝ちも嬉しいけれど、失点ゼロに抑えたことが嬉しい」。履正社高戦では3-0から追いつかれて5-4で終えるなど、これまで安定感を欠く部分があったが、守備の役割を最後までやり切って勝ったこの試合は、今後へ向けた自信にもなりそうだ。

 ホームの清水ユースは4-4-2システム。GKが北村風月(2年)で4バックは右SB渡邊啓佳(3年)、CB後藤啓太(3年)、CB和田晃生(3年)、左SBがU-17代表の石川晴大(3年)。中盤は太田成美(2年)とU-16代表候補の矢田龍之介(1年)のダブルボランチで右SHがU-17代表の安藤阿雄依(3年)、左SH星戸成(2年)、2トップは成澤夢行(3年)と斉藤柚樹(3年)がコンビを組んだ。

 清水ユースは司令塔のMF山田理矩(3年)が長期離脱中。大津もCB野田翔升(3年)が負傷離脱し、U-17日本代表のボランチMF碇明日麻(2年)をCB起用していた。4-4-2システムの大津は、GKが西星哉(3年)で4バックは右SB坂本翼(3年)、CBは五嶋夏生(1年)と碇、左SB田辺幸久(2年)。中盤は坂本龍之介(3年)と嶋本悠大(1年)のダブルボランチで右SHがU-17日本高校選抜の田原瑠衣(3年)、左SHが中馬颯太(3年)、2トップにU-19日本代表候補の小林俊瑛主将(3年)と山川柊(3年)が構えた。

 前半、清水ユースが強雨も味方につけてリードを奪う。3分、清水ユースは安藤が右クロスを上げると、大津GKがファンブル。大津の選手たちがこれを処理しようとしたが、清水ユースの成澤がそれを許さず、最後は矢田のシュートのこぼれを成澤が泥臭くゴールへ押し込んだ。

「全部の試合で先制点を獲れている」(澤登監督)の清水ユースが、この試合でも先手を取ることに成功した。一方の大津は7分、田原の左足クロスに小林が飛び込み、8分にはセカンドボールに反応した坂本がPAやや外側でFKを獲得する。これを田原が左足で狙うもDFがブロック。逆に清水ユースは14分、石川の左クロスを斉藤が頭でゴール左へ突き刺し、2-0とした。

 公立校ながらプレミアリーグを戦う大津の山城朋大監督は、「僕らみたいなチームは0-0の時間を長くして、少しずつ自分らのペースに持っていくことをやっていかないと。どのチームも格上なので、徹底しないとキツくなると思います」。崩されていないところからの2失点が重くのしかかった。

 大津は碇や坂本がボールを前進させ、田原が右サイドで巧さを見せる。だが、DFラインや中盤の低い位置で攻撃を作ることはできていたものの、スピードアップしたところでのミスが増えてしまう。また、ハイサイドまで運びながらも執拗に崩そうとしすぎてクロスやシュートのチャンスを逸する形に。丁寧にパスを繋ぐ一方、シンプルにゴール前の回数を増やそうとしていた清水ユースとの差となってしまっていた。

 大津はなかなかプレスが掛からず、DFラインの対応も遅れてしまうなど守備面でも苦戦。一方、清水ユースは相手のビルドアップを太田らがインターセプトし、素早く正確に繋いでアタックする。相手のわずかな隙を逃さない清水ユースは、40分にも右中間でDFと入れ替わった斉藤がゴールライン際から平行のラストパスを通す。これをサポートしていた成澤が押し込み、3-0。斉藤が「本当キャプテンとしてチームを引っ張ってくれていますし、きょうも2ゴールで、得点でチームを引っ張ってくれている」と評した成澤と、斉藤の2トップで3得点を叩き出した。

 大津は後半開始から中馬、嶋本、山川に代えてMF浅野力愛(3年)、左SH香山太良(3年)、FW稲田翼(2年)を投入する。大津は稲田をはじめとした交代出場組がアクションを繰り返し、ゴール前のシーンを増やす。そして、小林、稲田がクロスからヘディングシュート。だが、大津はこの試合、チャンスで勇気を持って足を振る姿勢に欠けていた。

 山城監督も「(経験の少ない選手が多く、)そのあたりはまだ自信がない」と指摘。後半は田原と香山からクロスが幾度もゴール前に入っていたほか、相手DFラインの背後へボールが抜け出るシーンがあった。1点決めることができていれば、畳み掛けることもできそうな展開。だが、ゴール前での判断が一瞬遅れてしまい、清水ユースの和田や後藤にクリアされてしまっていた。

 逆に清水ユースは献身的に走り続けた成澤をFW田中侍賢(2年)へ入れ替えた後の16分、和田が左サイドへ大きく展開。コントロールした石川がすぐにクロスを上げ切ると、ゴール方向へ向かったボールがそのままファーサイドのネットへ突き刺さった。

 4-0とした清水ユースは、右サイドで相手に警戒されながらも突破する安藤がシュートへ。また、渡邊の右クロスから矢田の放った右足ボレーがクロスバーを叩く。その清水ユースは38分、U-16代表ルーマニア遠征を控える矢田をMF仲野丈翔(2年)へスイッチ。大津も38分にMF岩崎大翔(3年)とMF日置陽人(2年)を投入した。清水ユースは4点差でも緩めることなく、全力で守備。終盤にCB浅井寛大(3年)とMF笹原堅信(3年)を投入したあとも集中した守りを続けて無失点で試合を終えた。

 斉藤は「今年始まってゼロで終わるということができていなかったので、ここでゼロで抑えるということをみんな意識して、次に繋がると思うので、みんな身体を投げ出して頑張ってくれたと思います」とチームメートたちに感謝。開幕5試合について、澤登監督が「もっとやれたんじゃないか」と振り返ったように、ここまでの結果についてスタッフ、選手も満足はしていない。それでも、新指揮官の指導の下、カウンターと下から正確に組み立てる攻撃の両方の力を示し、この日は守備面もできることを証明して快勝。個々の強みとチームの特長をより発揮しながら、白星を重ねる。

(取材・文 吉田太郎)
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