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関東大会東京都予選は成立学園が延長V!強化した守り崩れず、「4冠」への第一歩

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成立学園高が14年のインターハイ予選以来となる東京都のトーナメント戦制覇

[5.5 関東高校大会東京都予選決勝 駒澤大高 0-1(延長)成立学園高]

 成立学園が東京制覇――。2022年度関東高校サッカー大会東京都予選は5日に決勝戦を行い、駒澤大高成立学園高が対戦。成立学園が延長戦の末、1-0で勝った。

 ともに準決勝を突破した時点で16年以来の関東大会(5月28日開幕、神奈川)出場権を獲得。この決勝でタイトルと、関東大会の1位トーナメント(Aグループ)切符を懸けて戦った。今大会4試合で19得点2失点の駒大高は4-3-3システムでGKが堀尊成(2年)、右SB笠間吉孝(3年)、CB丹治風登(3年)、CB井口真寧(3年)、左SB山口航生(2年)。中盤中央に田中敦基(3年)と松原智(3年)が入り、トップ下が徳永薫(3年)。そして右から岩下和磨(3年)、岡田由祐(3年)、主将の加茂隼(3年)が3トップに並んだ。

 一方、今大会8得点1失点、2試合連続無失点中の成立学園は4-2-3-1システム。GK鈴木健太郎(3年)、右SB大川拓海(3年)、CB瀧川穣(3年)、CB藤井利之(3年)、左SB清水冬真(3年)。中盤は横地亮太(2年)と主将の八木玲(3年)のダブルボランチでトップ下が陣田成琉(3年)。右SH角田哲哉(3年)、左SH渡辺弦(3年)、1トップに佐藤由空(3年)が入った。

 前半は駒大高が前に行き切れず、成立学園優勢の展開に。キックの質が非常に高いGK鈴木らが後方からボールを繋ぎ、強気の仕掛けを見せる渡辺がゴールへ迫る。13分にはその鈴木を起点に5人、6人とボールに絡んで前進。最後は横地のスルーパスから角田が中央へ折り返し、左SBの清水がゴール前に飛び込む。中外にポジションを取って動き回る清水や浮き球を胸で収める長身FW佐藤もアクセントに相手ゴールを目指した。

 一方の駒大高は14分に山口がこの日最初のロングスロー。左の185cmFW加茂やドリブル鋭い松原がシュートへ持ち込もうとしていたが、成立学園はこの日抜群の守りを見せていた藤井と相手の高さに対抗し続けていた瀧川の俊足CBコンビが立ちはだかる。また、山本健二監督が「(サブにも技術力の高い選手が多くいる中)攻撃のところは課題があるんですけれども、守備のところでは欠かせないと思います」と評価する横地は、倒れた状態でもボールを足に引っ掛けるなど、インターセプトへの執念を見せていた。

 成立学園は32分、右中間でDFと入れ替わった佐藤が独走。GKを引き付けて平行のラストパスを入れる。ゴール前の渡辺に通りかけたが、駒大高CB井口がスーパークリア。駒大高も34分にPA付近のこぼれから岩下が右足を振り抜いたが、GK鈴木に反応され、0-0で前半を折り返した。

 後半立ち上がりは駒大高がプッシュ。亀田雄人監督は「やらないといけないことが前半上手く整理できなくて空回りになっていました。ハーフタイムにそこを修正して、エネルギー掛けてボールを奪いに行ったりするシーンを少し増やしたいというのがあった」と説明する。行き切れなかった部分を修正し、攻守両面で前への姿勢を強めて開始3分で3本のCKを獲得。ロングスローや加茂の力強い仕掛けも交えてゴール前のシーンを作り出した。

 駒大高は前半に比べて押し返し、セットプレーの本数を増加。守備面でも厳しいチェックで相手が攻め切ることを許さず、丹治、井口が大きく跳ね返していた。だが、山本監督が「(就任した)1月から対人のところはテーマとしてやっているんで、そこ(激しい攻防)であまり嫌がらなくなってきた」という成立学園も駒大高の強度に対抗し、また組織的な守りで穴を作らせない。

 後半半ばから終盤に掛けて、駒大高はトップ下のMF松谷旺亮(3年)と左FW木島凛人(3年)、成立学園は左SH武重陸人 (3年)と右SH柏田凌佑(3年)をそれぞれ投入。ともに攻撃の陣容に変化を加え、駒大高はエース加茂を最前線へ移して先制点を目指す。

 成立学園は八木と陣田がボールに触れる回数を増やし、30分には佐藤が力強い抜け出しから決定的な右足シュート。駒大高も守備の逞しさが出てきたという田中がセカンドボールを回収して攻撃に繋げ、加茂の得意のターンを交えたドリブルや、山口のロングスローが相手にプレッシャーを掛ける。

 0-0のまま突入した延長前半、駒大高が笠間の攻撃参加や松原の仕掛けでゴール前のシーンを創出。終了間際にはカウンターから徳永がDF2人の間を抜け出して左足シュートを狙うが、成立学園は最後まで食らいついた武重がブロックする。

 互いに譲らず、拮抗した戦いは延長後半に成立学園がスコアを動かした。3分、前線で前を向いた佐藤がPA右角方向へさばくと、柏田が「打てば何か起こるかなと思って打ちました」と1タッチの左足シュートにトライ。GKに反応されてもゴール前にこぼれることを意識して放った一撃は、GKに触れられながらもそのままゴールラインを越える。昨年からの公式戦経験者で怪我明け、今大会初出場のアタッカーがもたらした待望の1点。タッチライン際へ飛び出してきたサブ組とフィールドのプレーヤーが一緒になって大喜びした。

 駒大高はすぐに長身DF岩田澪(2年)を前線へ投入。パワープレーで同点を目指したが、GK鈴木が「DFは本当に堅いので、シュートが全然飛んで来ないというのは本当にありがたい。本当にこのバックラインは信頼できます」という成立学園のDF陣は崩れず。成立学園が今大会4度目の無失点勝利で東京制覇を果たした。

 山本監督は「基本的には守備のところを頑張ろうというのはチームの形なので、延長戦に入ってどのくらい持つかなと心配だったんですけれども、シュートもブロックしているし、そういうところで収拾しているし、良かったと思います」。選手たちはインターハイ予選や選手権予選へ向けた経験とするだけでなく、本気でタイトルを目指し、東京都のトーナメント戦では14年のインターハイ予選以来となる優勝を勝ち取った。

 柏田は「1個関東大会出場という目標を達成できて、ここからTリーグ、インターハイ、選手権で優勝して、そこから全国大会で戦えるチームを目指していきたい」と力を込める。山本監督が「まだまだ攻守のところで鍛えないといけない」と語るように、目標達成のためには個の部分をはじめ、攻撃の崩しの部分などさらなるレベルアップも必要。ここからまだまだ貪欲に成長を目指し、次のタイトルを獲得する。

(取材・文 吉田太郎)

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