beacon

[プレミアリーグEAST]プレミア初昇格の前橋育英は青森山田との打ち合いを3-2で制し、堂々のリーグ3連勝を達成!

このエントリーをはてなブックマークに追加

前橋育英高は3-2で打ち合いを制し、青森山田高を撃破!

[5.7 プレミアリーグEAST第6節 前橋育英高 3-2 青森山田高 アースケア敷島サッカー・ラグビー場]

「やっぱり『応援って凄くありがたいな』って思いました。今まで無観客だったので、こうやって応援してくれるとパワーも出ますし、歓声もたまに上がっていたじゃないですか。試合中に笑顔が出てしまいましたね。『これが有観客か』って。足元で良いプレーをしている時に『おお!』とか聞こえて、それでちょっと舞い上がってしまったり(笑)、パワーをもらえた感じはありますね」(前橋育英・青柳龍次郎)。

 プレミア初昇格となる“上州のタイガー軍団”が、多くの観衆に見守られる有観客試合で昨シーズンの三冠王者相手に揚げた堂々たる凱歌。7日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグEAST第6節、ともに選手権でも日本一を経験している前橋育英高(群馬)と青森山田高(青森)、高体連の雄同士が激突したビッグマッチは、MF山田皓生(3年)の2ゴールとFW高足善(3年)のゴールで3点を奪った前橋育英が、青森山田の反撃を2点に抑え、力強くリーグ3連勝を手繰り寄せている。

「たくさんのお客さんが入った中でやるのは久しぶりですよね」と前橋育英を率いる山田耕介監督も語ったように、近年の社会情勢によってその大半が無観客で行われていた群馬高校サッカー界の各コンペティション。ただ、この日のアースケア敷島サッカー・ラグビー場での一戦は、関係者の方々の尽力もあって有観客開催に。スタンドには少なくないサッカーファンが詰めかけ、会場全体が確かな熱気を帯びた中で試合はキックオフを迎える。

 立ち上がりからフルスロットルで入ったのはホームチーム。「相手のプレッシャーを先手とされるのではなく、自分たちが回すことがあくまでも先手で、僕たちのボール回しに遅れて青森山田が付いてくるという感じだったので、それは凄くやっていて楽しかったですし、手応えもありました」と話した、前橋育英のキャプテンマークを巻くMF徳永涼(3年)とMF青柳龍次郎(3年)のドイスボランチがボールを散らせば、MF大久保帆人(3年)とFW高足善(3年)は盛んにドリブル勝負。そこに山田とFW小池直矢(3年)も有機的に関わり、攻勢を強めていく。

 前半15分にはDF山内恭輔(3年)が得意の左足で直接FKを右ポストにぶつけ、スタンドのため息を誘うと、直後に生まれた先制点。17分、右サイドへ斜めに刺した青柳のパスから、高足は優しく縦へ。ここへ巧みに抜け出した山田のシュートがニアサイドを破り、ゴールネットへ到達する。「今まで自分は点が獲れていなかったので、この試合で取ってやろうという気持ちで臨みました」という17番のプレミア初ゴール。前橋育英が早くも1点をリードする。

 勢いで圧倒された中で先制を許した青森山田だったが、もちろんやられたままでいるようなチームではない。21分は左サイドで獲得したスローイン。DF多久島良紀(3年)、MF奈良岡健心(3年)の欠場を受け、“3番手”として登場したDF渡邊来依(3年)のロングスローから、ニアに潜った190センチのDF小泉佳絃(2年)が高い打点で競り勝ったヘディングは、ファーサイドのゴールネットへ吸い込まれる。「もうそればっかり練習していたんですけど、それでもやられちゃうんだからね」と山田監督も悔しげに呟いた同点弾。1-1。スコアは振り出しに引き戻された。

 それでも、前橋育英のパワーは落ちず。26分に高足、29分に小池が相次いで枠内シュートを打ちこむと、勝ち越し点は42分。右CB齋藤駿(3年)のサイドチェンジから、大久保が落としたボールを山内はダイレクトで前へ。高足のリターンを受けた山内が左サイドをえぐって中央へ流し込んだクロスに、またも山田が完璧なフィニッシュでゴールネットを揺らしてみせる。前節までノーゴールだった“伏兵”のドッピエッタ。2-1。前橋育英が再び1点のアドバンテージを得て、最初の45分間は終了した。

 ハーフタイムを挟んでも、ゲームリズムは変わらない。後半4分。相手GKのミスキックを完璧なトラップで前に落とした高足は、そのまま独走すると、右スミへ蹴り込むような体勢から、冷静に左スミへグサリ。10番の独壇場にスタンドからも巻き起こる大きな拍手。3-1。前橋育英のリードは2点に広がった。

 2連敗中というチーム状況の中で、このゲームも苦境に立たされた青森山田。「何で勝負できるか、どう戦うかというところで、やっぱりセカンドボールとかリスタートとか、カウンターのところとか、それぐらいしかポイントはないと思う」と黒田剛監督も口にする中で、唐突にでもその強みは発揮。16分にMF小栁一斗(3年)が蹴り込んだ左FKに、DF三橋春希(3年)がフリーで合わせたヘディングは枠の左へ逸れたものの、この“1本”で逆に集中力は研ぎ澄まされる

 21分。右サイドで獲得したスローイン。ここも渡邊がフルパワーで投げ込んだ軌道をニアで小泉がフリックすると、再び飛び込んだ三橋が今度はしっかりと頭で捉え、ボールをゴールネットへ送り届ける。「対策はしていた中で失点してしまったというのは残念ですけど、あそこで決め切るところはさすがだなと思いました」と徳永も脱帽の一点突破。3-2。青森山田も懸命に食い下がる。

 24分。ここも青森山田のスローイン。右から入れた渡邊の“投球”に、こぼれを拾った途中出場のMF別府育真(1年)はマーカーを外しながら右足を強振。ゴールへ向かったボールはポストを激しく叩くも、あわや同点という一撃に前橋育英も肝を冷やす。

「2点目を獲られた時は全員がショックで、『(青森山田は)ああいう感じに持っていって、相手がズタズタになっちゃうパターンなんだろうな』と思いました」と山田監督も苦笑したものの、ホームチームも粘る。185センチのDF斉藤航汰(3年)、180センチのMF小川雄平(3年)と相次いで長身選手を送り込み、ロングスロー対策も講じながら、終盤は5-4-1気味の布陣にシフト。パワープレーを仕掛ける相手の攻撃を、1つ1つ丁寧に凌いでいく。

 45+6分のラストプレーは青森山田の右CK。途中出場のMF芝田玲(2年)が蹴ったボールが中央にこぼれると、DF西脇虎太郎(3年)とFW武田陸来(3年)が必死に残すも、小川が何とかタッチラインにクリアで蹴り出すと、鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「青森山田は去年の王者ですし、今年も上位にいて、絶対に負けられない相手だと思っていたので、高体連同士で勝ち切れたというのは凄く良かったなと思います」と山田も胸を張った前橋育英が、シビアなゲームをモノにして勝ち点3を堂々ともぎ取った。

「今まではこんなにたくさんの人に見に来てもらう機会はなかったので、こういうスタジアムで多くの人に見に来てもらって、勝ち切ることができたので凄く自信になったかなと思います」と山田が話したように、改めて有観客の試合の意味を再確認するような90分間だったことは間違いない。

 徳永が残した言葉も印象的だ。「選手権と同じくらいの人がいた気がしました。凄く楽しかったですね。『サッカーをやっている』という感じでした」。前橋育英がゴールを奪った時には拍手が巻き起こり、青森山田のロングスローが得点に結び付くと、明らかにスタンドにはどよめきがさざ波のように広がっていく。プレミアリーグという高校年代最高峰の舞台を、ピッチ内でも、ピッチ外でも、あらゆる人々が楽しんでいる空間が、この日の敷島には確かにあった。

 山田監督はプレミアの試合をホームで開催することの意義について、次のように語ってくれた。「やっぱり子供たちにとって良い刺激になると思うんですよね。そういう子たちの参考になるために、良いゲーム内容であったり、勝負の厳しさだったり、『サッカーってこんなに凄いんだよ』『サッカーって素晴らしいんだよ』ということが伝えられたら一番いいなと思っていますし、プレミアに上がったからには、とにかくそういう回数を多くしたいですよね。それによって群馬県がレベルアップするのは間違いないので、もっともっと良いゲームを続けていきたいと思います」。

 今年の高校3年生は、高校生活の大半をコロナ禍の中で過ごしている世代だ。この一戦が入学後で考えれば、初めての有観客試合だった選手も少なくないという。そう簡単に以前のような環境を求めるのが困難であることはもちろん承知しているが、この日の敷島のピッチやスタンドにあった熱量が、1つでも多くの試合会場に帰ってくることを願ってやまない。

(取材・文 土屋雅史)

▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2022特集

TOP