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苦しい時間帯もハードワークと「叶」の声掛けを継続。個々の特長も発揮の日大藤沢が延長3発で関東大会へ

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日大藤沢高が延長戦を制し、関東大会への出場権を獲得

[5.7 関東高校大会神奈川県予選準決勝 厚木北高 0-3(延長)日大藤沢高]

 令和4年度第65回関東高校サッカー大会神奈川県2次予選は7日、準決勝を行い、日大藤沢高が3大会連続(20年度大会は中止)の関東大会出場を決めた。日大藤沢は延長戦の末、厚木北高に3-0で勝利。8日の決勝で桐光学園高と戦う。

 この日、日大藤沢は厚木北の前から制限する守備に苦戦。特長のポゼッションを十分に発揮できなかったが、佐藤輝勝監督が「ハードワークする。そこから自分の特長を出す、というところがチームづくりとしては今年一番上手く行っているので続けたい」と語ったように、個々がハードワークを続けて無失点を続け、延長戦の3得点で難敵を振り切った。

 関東大会予選で2連覇中の日大藤沢は4-5-1システム。GKがキャプテンの岡本亜鶴(3年)で右SB植田海音(3年)、U-17代表歴を持つCBアッパ勇輝(3年)、CB宮崎達也(2年)、左SB尾野優日(2年)、ダブルボランチが野澤勇飛(3年)と荻原大地(2年)、右SH宗次柊真(3年)、トップ下・安場壮志朗(2年)、左SH仲川颯一(3年)、1トップに198cmの大器・森重陽介(3年)が構えた。

 一方、2試合連続のPK戦を経て、公立校で唯一4強入りした厚木北は4-4-2システム。GK 成田大起(3年)、右SB込山達也(3年)、キャプテンのCB森優介(3年)、CB井上隆一(2年)、左SB矢島優輝(3年)、ダブルボランチが福岡悠弾(3年)と吉田陽(3年)、右SH石井駿吾(2年)、左SH浦晴汰(3年)、2トップに中山大志(2年)と和田大志(3年)が入った。

 前半は「いかにパスを回させて、ミスを誘って、そこから引っ掛けてショートカウンターという形と、あとウチはワイドが強みとなっているのでしっかり仕掛けようと」(渡邊浄仁監督)という厚木北が、狙い通りの戦いを見せる。

 技術力の高い日大藤沢のポゼッションに対し、前線から圧力を掛けてボール奪取。ワイドへ展開し、左のドリブラー、浦がフィジカル能力の高さを活かしたドリブルでDFを剥がして見せる。また右の石井のクロスも有効に。浦の左クロスにファーの石井が飛び込み、また岡田との連係で右サイドを深くえぐった中山のマイナスのラストパスであわやのシーンも作り出した。

 一方の日大藤沢は、佐藤監督が「(他の選手が)持っていないものを持っている」と評するレフティー・宮崎とアッパの両CBのフィードなどから尾野、植田の両SBがクロスへ持ち込む。35分には、アッパの縦パスから植田が右クロス。森重がコントロールから放った左足シュートがクロスバーを叩いた。

 日大藤沢は後半、右サイドの植田が10本を超えるようなロングスプリント。右サイドから押し込むと同時に、相手の強みであるサイド攻撃を消して見せる。3分には植田がDFを振り切って出したラストパスを宗次が右足で狙い、12分には宗次の右クロスを仲川が丁寧に落とし、森重が左足を振り抜く。だが、いずれも厚木北CB井上がブロック。厚木北は好プレーをした選手が「どうだ」とばかりに声を発し、それを仲間たちが大声で称えるなど強敵との勝負を楽しみながら、戦い続けた。

 厚木北がFW五十嵐侑馬(3年)を投入した直後の14分、日大藤沢は宮崎の左後方からのFKをアッパが頭で落とし、仲川がポスト直撃の左足シュート。日大藤沢はMF岡田生都(2年)投入後の25分にも同じく宮崎の後方からの左足FKからアッパが決定的なヘッドを放つが、厚木北GK成田がストップする。

 厚木北は26分にFW奥瀧稜介(3年)を投入。守りの時間が続いたが、吉田が右足ミドルを狙うなど攻撃の姿勢を失わない。だが、日大藤沢は相手のロングボールをアッパらが根気強く跳ね返し、推進力のある野澤と荻原が回収。主導権を握り続け、植田が繰り返しスプリントするなどゴール前のシーンを作り出した。

 日大藤沢は35分にMF関田向陽(3年)、厚木北は37分に左SB黒柳流成(3年)をそれぞれ送り出す。39分、日大藤沢は宮崎の縦パスから関田が左へ展開。尾野の左クロスからファーの森重が決定的なヘッドを放ったが、右へ外れ、試合は延長戦に突入した。

 日大藤沢は延長戦開始から森重に代えてFW有竹翔吾(3年)をピッチへ。その有竹が大仕事をしてのけた。厚木北が石井のクロスでチャンスを作った直後の5分、日大藤沢は左CKからアッパが豪快なヘディングシュート。これは厚木北DF陣が何とかゴールライン際で阻むが、混戦から有竹が左足を振り抜き、待望の先制点を挙げた。

 有竹中心に大興奮の日大藤沢の選手たち。さらに関田が抜け出しなどで畳み掛ける。厚木北がMF福田榛(3年)を送り出した直後の9分、日大藤沢はCKの流れから野澤が左クロス。これを有竹が頭でねじ込み、2-0とした。

 この後、CB前田俊亮(3年)とFW岸本尚也(3年)を投入した日大藤沢は3点目を狙う。そして8分、宮崎が右サイドからの左足CKを直接決めて3-0。日大藤沢の佐藤監督は今年のチームについて、「歴代でも1、2くらい剥がしたり、一人ひとりの技術は高い。でも、自分たちが良い守備をするという芯が揺るがない。それをやらなければ誰一人出さないというところを明確にチームが上積みしていった」と説明する。その姿勢を貫いて3試合連続無失点で関東大会出場権を獲得した。
 
 植田が「仲が良いので、苦しい時こそ笑顔で、練習の雰囲気も良い」という世代。佐藤監督はチームが呼応できるようになってきたことに目を細める。「誰かが言った言葉は、(周囲が呼応して)常に言う。字で言うと(口と+プラスの)『叶』のように、お互いにプラスプラスの声掛けができるようになってきた」と説明。この日も前向きな言葉を掛け合うことで、苦しい時間帯を乗り越えた。

 決勝ではライバルの桐光学園と対戦。植田は「神奈川県はやっぱり日藤だと見せたい。神奈川1位で関東に進みたい」と意気込んだ。ライバルとの戦いを制して、地元・神奈川開催の関東大会に臨む。

(取材・文 吉田太郎)

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