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プリンス北信越無敗首位・帝京長岡と3連勝中の日本文理、インハイ予選の“前哨戦”は互いに「学んで」1-1ドロー

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日本文理高はMF大塚泰河(左)が同点ゴールを決め、首位・帝京長岡高と1-1ドロー

[5.21 高円宮杯プリンスリーグ北信越第8節 日本文理高 1-1 帝京長岡高 日本文理高G]

 インターハイ新潟県予選の“前哨戦”は、互いに「学んで」1-1ドロー――。21日、高円宮杯 JFA U-18 サッカープリンスリーグ 2022 北信越第8節2日目で暫定5位の日本文理高(新潟)と同首位の帝京長岡高(新潟)が激突。1-1で引き分けた。

 昇格組の日本文理は3試合消化できていないものの、前節で新潟U-18を下すなど3連勝中。一方の帝京長岡は開幕から6戦無敗、4連勝中で新潟県勢対決を迎えた。「お互いの良さを出そうとするところと、お互いの良いところを出させないところのせめぎ合いになる」(日本文理・駒沢隆一監督)、「相手の自信を削り取るような試合ができれば、(インターハイ予選での対戦でも)優位にやれるかなと思っていた」(帝京長岡・谷口哲朗総監督)。翌週にはインターハイ予選初戦、勝ち上がれば2週間後には決勝。互いにその舞台へ向けた手応えと、相手の強さを超えるためにレベルアップの必要性を実感する戦いとなった。

 日本文理がCB阿部飛祐(3年)やCB岩橋陽龍(3年)、帝京長岡もMF松山北斗(3年)とともに主軸を欠いた中での“前哨戦”。ホームの日本文理は4-4-2システムでGK日隠レックス海斗(3年)、右SB小熊優斗(3年)、CB小舟戸結太(3年)、CB赤阪和輝(1年)、左SB小林倫太朗(3年)。ダイヤモンド型の中盤の底の位置に石澤賢汰(3年)、右に大塚泰河(3年)、左に高橋葵(3年)、トップ下に塩崎温大(3年)、そして2トップに主将の曾根大輝(3年)と杉本晴生(3年)が構えた。

 一方の帝京長岡も4-4-2で、GKはU-17高校選抜の佐藤安悟(3年)、右SB桑原航太主将(3年)、CB坪田悠一郎(2年)、CB柳澤颯人(2年)、左SB清川郁生(3年)。石鉢真斗(3年)と五十嵐丈一郎(3年)のダブルボランチ、U-17代表の右SH廣井蘭人(3年)、左SH山村朔冬(2年)、2トップは岡村空(3年)と土門遥斗(3年)がコンビを組んだ。

 前半は日本文理の中盤でのプレッシングと抜けてきたところへのプレッシャー、そしてゴール前の守備という「3段階のところの守備」(駒沢監督)が効果を発揮。コンパクトに、圧縮する形でボールを奪うことに成功していた日本文理が、素早い仕掛けや小熊のロングスローなどのセットプレーからシュート本数を増やした。

 立ち上がりに左後方からのFKを小舟戸が合わせると、GKの頭上を超えたボールがクロスバーをヒット。日本文理は抜群のキープ力を発揮していた塩崎や繰り返し仕掛ける力を持つ杉本、運動量の多い曾根の前線3人を中心とした攻撃で、クロスやシュートまで持ち込んでいた。

 個々が確かな技術力と判断力を備えた帝京長岡も、各選手の個人技やパス交換でDFを外しながら前進する。そして、注目の廣井は再三DFを振り切り、得意の左足を振るシーンがあった。だが、前半は全体の勢いに欠け、後ろに重い展開。廣井含めて崩しのパスやドリブルが引っ掛かるなど、リズムに乗ることができない。

 対する日本文理は20分、高橋葵の折り返しを塩崎が右足で狙い、直後にも塩崎の仕掛けからこぼれに反応した石澤の右足シュートが枠へ飛ぶ。帝京長岡はGK佐藤がセーブなどで凌ぐと、徐々に全体の動きの量が増え、大きく空いたDF背後のスペースをシンプルに狙うなど押し返す。

 37分、ペナルティアークで前を向いた廣井が左足シュート。39分には坪田に代えてU-16代表候補歴を持つ左SB内山開翔(2年)が投入され、清川が右SB、桑原がCBへスライドした。一際高い強度を見せる桑原が中央に入ったことも影響してか、チームは攻守両面で安定。日本文理は43分にCKのこぼれを曾根が狙うも枠を外れ、前半に放った9本のシュート(帝京長岡は2本)で先制することができなかった。

 後半、明らかに攻撃のテンポの上がった帝京長岡が先制点を奪う。4分、敵陣右中間で横パスを受けた廣井が斜めのループパス。後半開始から左サイドに投入されたMF堀颯汰(2年)が走り込み、右へ流れながらニアへ右足シュートを叩き込んだ。

 1点を追う形となった日本文理は9分、塩崎のスルーパスで左中間へ抜け出した杉本の左足シュートがポストをヒット。13分にはDFラインの2人に代えてMF北条快成(3年)とFW大島未月(3年)を投入し、塩崎が本来のアンカー、石澤がCB、高橋葵が左SBへポジションを下げた。各選手がポジション変更にも柔軟に対応していた日本文理は北条のシュートなどで反撃。だが、帝京長岡のGK佐藤やCB桑原、高さのあるCB柳澤が立ちはだかる。

 帝京長岡もコンビネーションから見事な崩しを見せるも、フィニッシュを日本文理GK日隠に阻まれるなど追加点を奪うことができない。帝京長岡の谷口総監督は「あれだけテンションの低い前半だったので、後半になって見違えるようなものを期待したんですけれども……」と首を振る。チャンスを得た選手たちのエネルギーを期待されたが、不満の内容に。ゴール近くまでボールを運んではいたものの、次の1点をもぎ取ることができない。

 迎えた24分、日本文理が同点に追い付く。敵陣中央で曾根が帝京長岡のミスパスをインターセプト。すぐに送った縦パスは相手DFに阻まれたが、こぼれ球に反応した大塚が右足を振り抜く。鮮やかな弧を描いた一撃が名手・佐藤の守るゴール右隅へ決まり、1-1となった。

 課題が多い一方、「本当に良さはある」(駒沢監督)という大塚がMF高橋迅(3年)との交代直前のラストプレーでファインゴール。畳み掛ける日本文理は29分、相手クリアボールを素早く繋いで再び杉本が左足シュートへ持ち込むが、GK佐藤に反応されてしまう。

 帝京長岡は32分にMF岡山琉斗(3年)、34分にはCB森健太朗(3年)を送り出し、再び桑原を右SBへ移して前への姿勢を強める。慌てずにショートパスで前進し、チャンスも作り出したが、GK日隠や最後の一歩が出る日本文理DF陣の壁は厚い。終盤、日本文理はFW加藤柊斗(3年)とFW山城勇稀(2年)、帝京長岡もFW小嶌剛琉(2年)をそれぞれ投入。勝ち越し点を目指す。日本文理は5枚の交代枠を使い切った後に負傷者が出たが、アディショナルタイムに高橋葵、大島、曾根が立て続けにシュートを打ち込む。決定的なシュートで相手ゴールを脅かしたが、決め切ることはできず、1-1で引き分けた。

 帝京長岡の桑原は「ここで一回叩いておきたかったけれど甘くないと教えてもらったので、来週からインターハイが始まるんですけれども、もう一回、一から自分たちを見直してやっていかないといけない」と引き締めた。一方の日本文理・曾根は「帝京長岡のような強いチームを倒すためにはもっと練習から強度を上げてもっとレベルアップしないと勝てないんだなと今日学んだんで、そこは自分が中心になって声を掛けてレベル高い練習して、必ず決勝で倒して自分たちが優勝旗持って帰れたら良いなと思います」とコメント。激戦区・新潟突破へ、廣井、桑原、佐藤と1年時からの主力が最終学年を迎えて前評判の高い帝京長岡、攻守に力を示した日本文理ともに、少しでもレベルアップを遂げてインターハイ予選を迎える。

(取材・文 吉田太郎)
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