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桐生一が歴史的1勝!後半45+3分の決勝点で青森山田下し、プレミア初勝利!

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後半45+3分、決勝点を喜ぶ桐生一高イレブン

[5.22 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 桐生一高 2-1 青森山田高 太田陸]

 桐生一がプレミア初勝利! 22日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2022 EAST 第8節で桐生一高(群馬)と青森山田高(青森)が対戦。後半45+3分にMF岡村葵(3年)が挙げた決勝点によって、桐生一が2-1で競り勝った。今季プレミアリーグへ初昇格した桐生一は、6試合目で初白星(1勝2分3敗)。一方の青森山田は3勝5敗となった。

 桐生一は、昨年度3冠の青森山田と公式戦で初めて対戦。背中を追ってきた名門校からの歴史的1勝だ。中村裕幸監督は「相当運には恵まれたと思いますよ。でも、勝ち点3に変わりはないので良かったです。プレミアの初勝利は2度と来ないので、その相手が青森山田というのは格別なものがあります」と初勝利の喜びを噛み締めていた。

 ホームの桐生一は4-5-1システム。GKが清水天斗(3年)で右SB小泉郁歩(3年)、CB中野力瑠(2年)、CB増澤空斗(3年)、左SB江原佳汰(3年)。岡村と岩崎隼星(3年)のダブルボランチ、トップ下が小野剛史(2年)、右SH諏訪晃大主将(3年)、左SH島野大和(3年)、1トップを松島颯汰(2年)が務めた。

 一方、4-4-2の青森山田はGK葛西淳(3年)、右SB渡邊来依(3年)、CB菅澤凱(2年)、CB三橋春希(3年)、左SB西脇虎太郎(3年)、芝田玲(2年)と小泉佳絃(2年)のダブルボランチ、右SH小栁一斗(3年)、左SH川原良介(2年)、そしてゲーム主将の小湊絆(3年)と武田陸来(3年)が2トップを組んだ。

 太田市運動公園陸上競技場に1,820人の観衆を集めた一戦。その立ち上がり、青森山田がパワーと高さを持って相手の守りを壊しに行く。3分、GK葛西のロングキックからDFと入れ替わった小湊が右足シュート。飛距離に加え、精度も高い葛西のキックや渡邊のロングスローから桐生一DFに圧力を掛ける。

 だが、中村監督が「マインドのところが準備できて、いつも通りのことをやるぞということができれば、こっちの得意なところは利くかなと」期待していた通り、選手たちは前向きな戦い。青森山田のセットプレーを一つ一つ跳ね返すなど立ち上がりを乗り越えると、相手のプレスの方向をズラす形でグラウンダーのパスを縦横へ通し、リズムを掴んで見せる。

 諏訪は「(最近の試合から)マインドが良かったら絶対に自分たちのプレーは通用するというのは分かっているので、気持ちでまずはスタートラインに立つということは考えて、絶対に気持ちで負けないというところは監督からも言われていて、そこで自分たちもみんな声を出して、カバーし合ってというところが良い入りになったというのがあります」と頷く。

 16分には、ボールを引き出す動きと個人技で存在感を放っていた小野がスルーパス。右中間を抜け出した松島が右足を振り抜き、17分には小野が敵陣中央を鮮やかに突破して決定機を作り出す。松島のDF背後を狙う動きも効いていた。

 ただし、青森山田は得意のセットプレーを軸とした攻撃で強引に流れを引き寄せる。22分、右CKのクリアに反応した小栁の右足ボレーがクロスバーをヒット。24分には相手のクリアを拾った小栁のクロスから小湊が決定的なヘッドを打ち込んだ。

 だが、桐生一は直後に右サイドへの展開から小泉がクロス。PAまで駆け上がっていた江原がファーサイドでDFと競ると、このプレーがPKと判定された。キッカーの岡村はGKのタイミングをズラして右足シュート。左隅へ決めて先制に成功した。

 青森山田は、競り合いで強さを見せる小湊へのロングボールとクロス、セットプレーを駆使して反撃。CKこぼれから武田の放った右足ボレーがGK正面を突き、36分にはCK後の混戦から渡邊の放ったヘッドがクロスバーを叩く。それでも45分、武田のポストプレーから西脇が左クロス。そして、存在感ある動きを見せていた小栁がファーサイドへ詰めて頭で押し込む。黒田剛監督が課題に挙げていた、SHの得点で同点に追いついた。

 桐生一は後半開始から島野に代えて左SB水井勇貴(3年)を投入し、江原のポジションを一列前に上げる。だが、前半終盤の流れを維持する青森山田は開始直後、右サイドから崩し、小栁の折り返しに飛び込んだ芝田がDFと激しく接触する。前半にPKを得ている桐生一もPK献上を覚悟したというプレーだったが、ノーファウルの判定。青森山田は直後に左サイドから崩して小湊が右足を振り抜くが、桐生一GK清水が反応して得点を許さない。

 青森山田は16分に武田をMF櫻井廉(3年)へスイッチ。直後には小湊の左足シュートが三度クロスバーを叩いた。青森山田はこの日、ボールを奪いかけながらも奪い切れないようなシーンが多発。セカンドボールを回収できず、「(前半終盤はやや逃げてしまっていたが、)後半頭から勇気の部分は見えてきた」(中村監督)という桐生一を飲み込むことができない。

 22分、桐生一は江原をMF乾真人(2年)へ、青森山田は小泉をDF小林康人(3年)へ入れ替える。25分、中盤を抜け出そうとした桐生一MF岡村を青森山田CB三橋がファウルで止めてしまい、2枚目のイエローカード。DFリーダーが退場を強いられてしまう。

 近年、幾度も逆境で強さを示してきた青森山田は10人になった後、攻守に迫力が増した。だが、30分にセットプレーの流れから西脇がGKを外して放ったシュートは、桐生一の乾がゴールライン上でクリア。桐生一は初先発のCB増澤やCB中野が高さで健闘していたほか、特に後半は各選手がセットプレーで先にヘディングし続けるなど青森山田に強みを出させない。

 桐生一は34分にDF大山和音(3年)とFW前山嘉走(3年)、38分にはDF小出裕大(3年)を送り出し、青森山田も36分にMF杉本英誉(2年)とMF別府育真(1年)を投入。一進一退の攻防の中、桐生一は前への姿勢を持ち続け、小泉や岡村、諏訪のドリブルが効果を発揮していた。そして45+3分、桐生一は右サイドで諏訪がドリブル。判断よく中央へパスを通すと、岡村がコントロールから右足を振り抜く。

 決して強くはなかったものの、コースを突いた一撃が左隅へ決まり2-1。殊勲の岡村中心にスカイブルーのユニフォームが喜びを大爆発させた。諦めない青森山田は45+4分、別府の右クロスから小湊が右足ボレー。だが、GK清水に阻まれ、桐生一が歴史的1勝を喜んだ。

 前節に続いて終盤の失点で敗れた青森山田の黒田監督は、「去年だったら最後失点せずに我慢して、ひっくり返すようなパワーがあったけれど、(今年は)取られちゃうから」と勝負弱さを指摘。一方の桐生一・中村監督は「(段階を踏みながら成長してきた選手たちの取り組みを)自信に変えるためにも、どういう形でも良いから勝ち点3欲しいなと思っていたところなので、運もかなり味方しましたけれども勝てて良かった」と微笑んだ。

 選手たちにとっても自信となる1勝。「遠い存在でしたし、実際やってみて強かった。本当に勝てなかったのでどこかで1勝したくて、それも青森山田というのもあるので。凄く嬉しかったです」(岡村)という青森山田からの白星を巻き返しのきっかけにする。

 諏訪は「ここで1勝できたというのは自分たちの一番のプラスになりました。ここで勝てたということが一人ひとりの自信になる。次の試合は(前橋育英との)群馬ダービーなので負けられないので、死ぬ気で勝ちにいきたい」。プレミアリーグ発足から10年以上戦い続ける青森山田のように、トップリーグに定着することが目標。そのためにも次戦で宿敵・前橋育英高を破って上位との差を縮める。

(取材・文 吉田太郎)
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