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常にプレミアの優勝争いを続けてきた青森山田。DF多久島良紀主将が挙げた改善点「一番は気持ち」

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前半45分、青森山田高はMF小栁一斗のヘディングシュートで同点に追いついたが…

[5.22 高円宮杯プレミアリーグEAST第8節 桐生一高 2-1 青森山田高 太田陸]

 11年のリーグ発足から“高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグEASTの舞台で戦い続け、15年以降は2位、優勝(16年)、3位(17年)、2位(18年)、優勝(19年)、優勝(21年)と常に優勝争い(20年はスーパープリンスリーグ東北優勝)。青森山田高(青森)は高体連のチームはおろか、Jクラブユース勢を含めても抜きん出るような結果を残してきた。

 それだけに、周囲の目線が上がっていることは間違いない。他のチームがこれまで経験しているような連敗が、大きなニュースに。だが、青森県は一年の3分の1近くが雪に覆われる豪雪地帯だ。勝ち続けることは本当に簡単なことではなかった。

 加えて、今年はコロナ禍で十分な鍛錬ができず、東北新人戦を辞退したこともって特に準備が不足していた。実戦は3月中旬からでメンバー選考も定まらない中でシーズンへ突入。市立船橋高に2-0で勝った開幕戦から先発7人が入れ替わったほか、台頭してピッチに立つだけの力を示しているものの、登録ウインドウの関係でメンバー登録できていない選手もいるのが現状だ。

 苦戦が続いているが、内容が特別悪い訳ではない。この日はPKで先制されてからギアが上がり、キックの特長を期待されて起用されているGK葛西淳(3年)のロングキックやセットプレーでゴール前のシーンを増加。左SB西脇虎太郎(3年)のクロスをMF小栁一斗(3年)が頭で合わせて前半のうちに追いついた。

 公式戦で初対戦した桐生一の中村裕幸監督も「あれは耐えられないです」と驚くほどの迫力ある連続攻撃。だが、この日は前半に紙一重のプレーでPKを献上し、後半立ち上がりのPK獲得かというシーンは逆に笛が吹かれず、退場者も出して数的不利を強いられてしまう。アウェーチームは流れを維持できず、酷な戦いとなった。

 それでも、10人となった後も本気で白星を目指して戦い、相手ゴールを脅かしていた。ただし、近年強みとしてきた終盤の攻防で逆に失点して1-2。この日は、前半に小栁と右SB渡邊来依(3年)、後半にはFW小湊絆(3年)のシュートがクロスバーを叩き、その他決定的なシーンでシュートがGK正面を突くなど、ゴールを引き寄せることができなかった。

 黒田監督は「ボールを奪うということに関しては、去年と比べてかなり劣ってしまっている。簡単にシュートまで行かせてしまっている」と指摘する。世代を代表するボールハンターだったMF宇野禅斗(現町田)やMF松木玖生(現FC東京)、MF藤森颯太(現明治大)といった抜群の読みを発揮する選手や、圧倒的なボールへの執着心を表現する選手がまだまだ少ない。青森山田発信で全国へ広まったと言える「ゴールを隠す」守備も改善の余地がある。

 膝の手術・リハビリから復帰が近づいてきているDF多久島良紀主将(3年=大宮アルディージャU15出身)は、「毎試合毎試合同じ課題を言われている。(特に決定力の部分は)まだ取り切れていないのが現状ですし、実力不足です」と指摘する。昨年、離脱するまで3冠世代のレギュラーを務めてきた多久島は、基本に忠実にプレーすることなどをコーチング。何よりも青森山田が重視している部分の改善を求めていた。

「気持ちのところを全面に出すのが山田の選手だと思うので、初心に戻って、次は全面に出せるように準備していきたい。一番は気持ちだと思うので、そこはブレずにやっていきたい」

 雪国・青森で挑戦する選手たちが、ピッチ内外で強い思いを持ち続け、ピッチでは圧倒的な勝利、ゴール、ボールへの執念と、強い責任感によってライバルたちとの差を生み出し、相手を飲み込んできた。

 責任感強い新リーダーは、チームの現状を何とか変えたいという思いが強い。「去年は先発で出て、一昨年から試合に絡んでいたので、その責任というのは感じていますし、背中で見せていかないといけない立場なので、危機感を持ってやっていきたい。自分中心にやっていかないといけないですし、次節、何としても勝てるように準備していきたい」と多久島。5月28日のホーム、流通経済大柏高戦は気持ちの部分から変えて、絶対に勝って、インターハイ予選をスタートする。

(取材・文 吉田太郎)
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