beacon

今年は「勝負する全国大会に」。鹿児島5連覇の神村学園は全国屈指の攻撃力、戦う力もより高めてインハイへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

神村学園高が鹿児島県予選5連覇を達成した

[5.28 インターハイ鹿児島県予選決勝 神村学園高 2-1 鹿児島城西高 OSAKO YUYA stadium]

 鹿児島5連覇の神村学園が日本一に挑戦する――。令和4年度全国高校総体(インターハイ)「躍動の青い力 四国総体 2022」男子サッカー競技鹿児島県予選は28日、決勝を行った。前回大会全国8強の神村学園高鹿児島城西高が対戦し、神村学園がU-19日本代表候補FW福田師王(3年)とMF笠置潤(3年)のゴールによって2-1で勝利。5大会連続8回目の全国大会出場を決めた。

 神村学園は17年度のインターハイ予選以降、激戦区・鹿児島県内の全国大会予選で負け無し。特に世代ナンバー1FW福田、C大阪内定MF大迫塁主将(3年)と笠置の強力ダブルボランチ、スーパールーキーのU-16日本代表FW名和田我空(1年)らを擁する今年は、周囲からの評価も非常に高い。

 福田は「(周囲の高評価について)自分は本当嬉しいですし、その中で結果を残さないと。メンバーも良い人たちが揃っている。やらないといけない」と語り、大迫も「長い神村の歴史でまだ優勝もないので、この代で優勝したいというのが一番強い。そのためにはもっとやっていかないといけないし、もっと突き詰めていきたい」と力を込める。本気で全国制覇を目指す神村学園がまずは鹿児島県予選を突破した。

 神村学園は4-4-2システム。GKが広川豪琉(3年)で、右SB有馬康汰(2年)、CB大川翔(3年)、CB鈴木悠仁(1年)、左SB高橋修斗(2年)。中盤は大迫と笠置のダブルボランチ、右SH積歩門(3年)、左SH名和田、そして西丸道人(2年)と福田が2トップを組んだ。

 一方、5大会ぶりの優勝を目指す鹿児島城西は3-5-2システム。GKが橋口竜翔(2年)で右から佐藤優馬(3年)、山口慶祐(3年)、姶良心己助(3年)の3バック。右WB田中和斗(3年)、左WB是枝大翔(3年)、小堀優翔主将(3年)と原田天(3年)のダブルボランチ、前田隼希(3年)と矢吹凪琉(2年)がシャドーの位置に入り、最前線に岡留零樹(2年)が構えた。

 立ち上がり、神村学園が圧巻の攻撃力を示す。4分、中盤中央でボールを受けた大迫がPA内右へスルーパス。これに反応した福田が右足ダイレクトで対角へシュートを放つ。序盤にまず1本、という印象のシュートだったが、ボールは鋭い軌道を描いてファーサイドのゴールネットへ。スーパーエースがいきなり会場をどよめかせ、神村学園がリードを得た。

 対する鹿児島城西は8分、立ち上がりから前線で強さを発揮していた岡留がプレスバックでインターセプト。右前方へのラストパスを矢吹が右足で狙う。9分にはこの日好キックを連発していた山口のフィードから前田がカットインシュート。だが、10分、神村学園は早くも2点目を奪う。

 西丸が右サイドへ抜け出してキープ。左後方へのパスを大迫が1タッチで繋ぐ。これを受けた笠置は、味方FWの動き出しに鹿児島城西DFが釣られたところを見逃さなかった。切り返しから右足一閃。鮮やかなシュートを右隅へ決めて2-0とした。

 鹿児島城西の新田祐輔監督は、「昨日のミーティングで(福田に)ペナ外でもし決められたら(落ち込まずに)スーパーゴールと、拍手しようと言っていたんですよ。本当にそうなったから気持ち切り替えているかなと思ったら切り替えていない。浮き足立っていた」と説明する。神村学園は福田が前線で難しい浮き球を胸トラップして攻撃の起点に。一方の鹿児島城西は12分にも自陣でボールを失い、笠置にシュートまで持ち込まれてしまう。

 だが、決定的なシーンでシュートをブロック。2点差で留めたことで鹿児島城西は何とか持ち直す。そして17分、鹿児島城西は左の是枝がPA左へパス。エース前田が左足ダイレクトでニアを破り、チームは一気に勢いづいた。

 180cmFW岡留が泥臭いキープと推進力を発揮。前田も球際で強さを見せるなど、前線で起点ができたことで徹底したオープン攻撃はより効果を増した。24分には原田の左足FKから岡留がシュートを放ったほか、是枝、矢吹の縦への動きなども交えて王者を押し込んで見せる。

 神村学園は決定打こそ打たせなかったが、有村圭一郎監督が「拾ったあとにマイボールを大事にするということは今日のゲームで大事なことだったんですけれども、そこは上手くいかなかったですね」と指摘したように、相手MF小堀らのプレスを受けて慌ててロストしてしまうなど、立ち上がりとは別の顔を見せてしまう。

 相手のロングボールを警戒し、意図的に構えたこともあってボールは鹿児島城西がより保持する展開になった。神村学園は後半開始から高橋を左SB吉永夢希(2年)へスイッチ。鹿児島城西は後半立ち上がりも前田が個でシュートまで持ち込んで見せる。

 ただし、神村学園の攻撃陣はやはり強烈。6分、名和田がコンビネーションからシュートへ持ち込み、10分には福田がファーストタッチでDFを振り切って左足を振り抜く。少ない人数の攻撃でもフィニッシュまで持ち込んでしまう。加えて、笠置が攻守両面で運動量を増やしてボールに絡み続け、背中でチームを引っ張る大迫も球際でファイト。最終ラインでは1年生CB鈴木をはじめ、各選手が球際で健闘し、GK広川も安定感を保つ。7分のFW石内凌雅(2年)でギアを上げようとした鹿児島城西に飲み込まれず、逆に再び押し返していた。

 鹿児島城西は飲水明けの21分、鹿児島実高との準決勝で流れを傾けたMF佐俣盛之助(3年)、FW東條弘聖(3年)の2人を同時投入。原田や前田がドリブルでスペースを突いていたが、一度ボールを失うと速攻鋭い神村学園アタッカー陣に自陣深くまで押し返されてしまう。鹿児島城西は31分、右WB加藤廉(3年)を投入。この日は佐藤や山口のシュートブロックも光っていたが、ゴールが遠い。新田監督が「結構面白いサッカーをしていたんですけどね」という内容の戦いを見せたものの、終盤の運動量で王者を凌駕することはできず。序盤の連続失点も響いて準優勝に終わった。

 神村学園は中盤の選手が前を向いてドリブルやパスでゴール前へ入って行くという回数がまだまだ少ない。この日は決定機で利己的なプレーをしてリズムを崩した部分も。反省点は多かったが、攻撃の破壊力は全国トップレベルだ。チームは課題を改善し、上手くて、強くて、勝つチームを目指していく。

 有村監督は「去年までは『出る全国大会』、『出続ける全国大会』でしたけれど、今年からは『勝負する全国大会』にしたいなと個人的には思っているので。だいぶ知名度も上がって出るところから勝つところへ持っていかなければいけないと思っている」と今年、神村学園のステージを上げる考えを口にした。

 悔しい敗戦も経験してきた選手たちは、学んだことを今年度の結果に繋げる考えだ。大迫は「まだ自分たちは戦っていないですし、去年(準々決勝で)米子(北)とやってあれ(ハードワーク)を70分続けて、それも連戦の中で続けて、やっぱり勝つチームはああいうチームなんだなと感じたので、ああいうチームになりたいですね。しかも、(米子北は)チーム力も凄く高かったし、ゲームに勝つんだという気迫も感じれて、それに負けてしまったところがあったので、そこは付けていきたいですね」。また福田は「プレッシャーに撃ち勝つ(青森)山田さんは凄かったので、(彼らのように)日常生活から変えていかないといけない」と求めていた。今年度は全国準決勝や決勝で勝負しなければならない年。注目世代の神村学園が課題を改善し、武器を徹底的に磨き上げて歴史を変える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

TOP