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[MOM3853]神村学園MF笠置潤(3年)_後半の動きは宇野禅斗を想起。今年、高校最高のボランチコンビに

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前半10分、神村学園高MF笠置潤が右足で決勝ゴール

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.28 インターハイ鹿児島県予選決勝 神村学園高 2-1 鹿児島城西高 OSAKO YUYA stadium]

 チームに迷惑を掛けた分を取り戻すため、“限界突破”するほど走り抜いた。神村学園高MF笠置潤(3年=姶良市立重富中出身)は後半、獅子奮迅の働き。ボランチの位置から幾度もゴール前やサイドの崩しに係わり、味方がボールを失えば至る所に現れてボールを身体に当てた。

「(走りすぎて)ヤバかったです。後半は最後らへん吐きそうだったんですけれども(苦笑)、これで負けたら自分のせいだったので。自分の身体がどんだけボロボロになっても良いから、とりあえずチームのために走って、少しでも償うじゃないですけれども、貢献しなければいけないと感じていました」。3連戦の3日目。疲労はかなり蓄積していたはずだが、強い責任感が身体を突き動かし、白星をもたらした。

 笠置はこの日、ダブルボランチを組むMF大迫塁主将(3年)のサポートを受ける形で前へ。1-0の前半10分にはその大迫の1タッチパスを受け、ゴール前へ侵入した。「塁が良いボールをくれたのでスッと前を向けました。最初パス考えていて(福田)師王と(西丸)道人が動き出しているのは見えたんですけれども。DFがそれに反応して横にちょっと動いたので、ちょっとゴールが空いたなと思って思い切って打ったら、入った」。判断よくシュートへ切り替えた笠置の右足シュートが見事にゴール右隅へ決まり、2点差となった。

 昨年は右SBのレギュラー。ボランチとしてプレーすることになった今年、笠置は意識的にミドルシュートの練習を増やして来たのだという。その成果を表現。自身も驚く一撃を決めた2分後、背番号15の元へ再びビッグチャンスが訪れる。

 敵陣でのインターセプトから左中間を抜け出した笠置はそのまま右足シュート。だが、カバーした鹿児島城西高DFにブロックされてしまう。有村圭一郎監督は「欲が出て打っちゃいましたね。横に師王が付いていたので勝つためにはパス」と指摘したシーン。ここで3点目を奪っていれば試合を決定づけることができたはずだが、止められ、直後に失点したことで神村学園は非常に苦しい戦いを強いられてしまった。

 笠置も「欲を出してしまってチームに申し訳ない。あそこで3点目獲れればゲーム決まったと思う。勝った嬉しさよりも申し訳無いですし、不甲斐ない」。利己的なプレーで流れを悪くしてしまったことを猛省。その悔しさが後半の圧倒的な運動量、奪い返しの速さ、そして青森山田高を3冠へ導いたMF宇野禅斗(現町田)を想起させるようなプレーに繋がった。

 笠置は宇野について、「勝手に思っていることなんですけれども、ちょっと意識しています。去年の高校最高のボランチが(青森山田の宇野、MF松木玖生=現FC東京の)2人だと思う。自分はボランチで(大迫)塁と組んでいて、塁は今、高校最高のボランチだと自分は思っているので、自分が宇野選手くらいになれば日本一も見えてくると思う」という。

 そして、「きょうの運動量をもっと増やさないといけないですし、それを続けないといけないし、奪い切る能力も、取ってからの質も足りないところだらけなんですけれども、選手権までに近づけるというか、追いつけるくらいにならないといけない」と力を込めた。

 元々は攻撃的なプレーヤー。守備面はストレスになっていたというが、昨年、SBを経験したことで「守備の強度とか読みとか成長している感じがあります」。相手ボールに対して身体を投げ出して触り、マイボールに変えていたが、それでも驚異的な予測力と個でボールを奪い取ってしまう力を持つ宇野の領域はまだまだ遠い。

 一方で、この日決勝点を挙げ、PA付近の崩しに幾度も顔を出したようにドリブルする力や崩しのパスは宇野と異なる特長。U-19代表候補FW福田師王(3年)が「もっと評価されて良いと思います」と推すボランチは、まず守備を最優先しながら1本のパスの質も高めて高校サッカーを代表するボランチへ成長し、神村学園の日本一に貢献する。そして、「去年経験させて頂いた3年生に恩返し」の目標も果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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