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バルセロナからU-19日本代表にやってきた16歳…新たな風を送り込むDF高橋センダゴルタ仁胡

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U-19日本代表DF高橋センダゴルタ仁胡(バルセロナ)

 バルセロナのカンテラ(育成組織)に所属する日本人選手が年代別日本代表の候補としてリストアップされているらしい。父がアルゼンチン、母が日本の出身というバックボーンを持つDF高橋センダゴルタ仁胡の噂は、少し以前から関係者の間でささやかれるようになっていた。

 おそらくコロナ禍がなければ、もっと早くに招集する機会もあったはずだが、U-19日本代表がフランスで行われるモーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)に参加するタイミングで初めて日の丸を付けることとなった。結果的には良いタイミングだったのかもしれない。

 チームを率いる冨樫剛一監督は、選考についてこんな言葉を残している。

「仁胡は学年こそ下になるが、バルセロナの選手らしいビルドアップの力、そして主戦場は左サイドバックになるが、そこからのゲームメイクであったり、攻撃に絡んでいく部分で自分たちにとって面白い存在になるのではと考えている」

 実際に現地フランスで合流してきた高橋は、飛び級招集の16歳とは思えぬほどのプレーを初日から見せている。MF山根陸(横浜FM)が「普通、初めて代表に来た選手はプレースピードや強度に戸惑うものだけれど、まったくそれがなかった」と素直に感心した様子だったのも頷ける。それは同時に「バルサではこれくらい当たり前なのだろう」という基準の存在を、選手たちに意識させるものでもあった。

 初日の練習を終えた冨樫監督は記者に対して「プレーを観れば、どんな日常を送っているのか想像できるよね」と、コロナ禍で国際経験という財産を得られなくなっていた世代に、新たな風を送り込んでくれるタレントの存在を歓迎した。

 初めて日本の監督やコーチに指導を受け、初めての仲間たちとプレーすることには相応の負担もあったのは当然だろう。ただ、「みんな家族のように迎えてくれた」と本人が笑顔で語ったように、バルセロナからやってきた若武者に興味津々なのは選手たちも同じ。「宿舎でも結構話している」と言うMF佐野航大(岡山)は強いインスピレーションを得ている選手の一人だ。

「仁胡のプレーを見ていて思ったのは、常に前を見ながらサッカーをしていること。ボールの置き所も良くて、パッと前を向ける。そういうところも凄く勉強になる。ボランチであのプレーができたら相手もやばいと思うはず。そういうのは見習いたい。ボールの持ち方が抜群にうまいですよね」(佐野)

 高橋は「ボールを持っているときにコモド(快適さ、やりやすさ)がある」と語るとおり、日本で生まれ育っていたらきっとボランチだったのかなと思わせるプレースタイル。サイドバックの位置からゲームを作る、パスの出し手としての機能性に期待感を抱かせるタイプだ。

 ただ、単にテクニックに秀でた選手というわけではなく、練習で奪われたボールを猛然と追い掛けて奪い返す場面など、周囲を驚かせるほどの強度や闘争心も押し出すことがあり、負けず嫌いの空気感も漂う。フィジカル的にも、特に体が大きいタイプではないが(173cm、63kg)、16歳離れした強健さを備えている。

「自分はちっちゃいときから日本に行きたいなと思ってきたし、(サッカー選手として)スペインでトライしたい気持ちがあったからこっちにいたけれど、でもいつも『日本代表に呼ばれたい』という思いはあった」(高橋)

 モーリスレベロトーナメントの初戦を勝った(対アルジェリア、○1-0)U-19日本代表の次の相手はコモロ。アフリカ勢らしいスピードとパワーを押し出してくる相手に、“ゲームを作れるサイドバック”がどう機能するのか、自然と楽しみになる部分はある。

 憧れは同じ左利きの英傑メッシだったと言うが、いまプレーの参考にしているのは同じポジションのジョルディ・アルバ。スペインとバルセロナを代表する左サイドバックのように、国際舞台で輝けるか。その最初の一歩は、遠からず訪れることになりそうだ。

(取材・文 川端暁彦)
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