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[関東]三冠王者の現在地。順天堂大FW名須川真光とDF三輪椋平が見つめる「できること」と「できないこと」

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青森山田高出身の順天堂大1年生コンビ。三輪椋平(右)と名須川真光(左)

[6.1 関東大学L1部第4節 法政大 3-1 順天堂大]

「大学になると技術が大事になってきて、止める蹴るもごまかすことができないですし、自分は足元が得意なタイプではないので、そこで少し差ができているなと感じますけど、積極的にシュートも打てているので、ちゃんとレベルアップできているのかなと思います」(順天堂大・名須川真光)。

「このチームのスタイルだともっと攻撃に重点を置けるかなと思っていて、あとは守備のところもスピード感にはだいぶ慣れてきたんですけど、大学と高校だと判断のスピードや立ち位置に差があって、その部分でのミスは命取りになるので、そういう力はもっと自分も身に付けていきたいなと思っています」(順天堂大・三輪椋平)。

 驚異の高校三冠を達成した青森山田高から、同じ大学へと進路を取った攻撃と守備の二枚看板。順天堂大の1年生コンビ。FW名須川真光(1年=青森山田高出身)とDF三輪椋平(1年=青森山田高出身)は新たな環境で、新たな目標へと続いていく道を、力強く歩み出している。

「ずっと点を決められなくて悩んでいたんですけど、初得点だったので嬉しかったです」。照明に照らされたナイトゲームのピッチに、1年生ストライカーの咆哮が轟いた。

 法政大を相手に1点をリードされていた順天堂大は、後半開始から名須川をピッチへ送り込む。ここまでは全6試合に途中出場。「練習でも常にアピールしてきましたし、常に走り続けられるように心掛けたり、真剣にチームのために取り組めていたのが試合に出られている要因だと思います」とは本人だが、ここまではまだノーゴール。モヤモヤした気持ちを抱えていた。

 大学の壁を感じていなかったと言ったら、嘘になる。「最初の3試合ぐらいはシュートも全然打てなくて、そこからはもう自分の中でも『1試合に2本くらいはシュートを打ってやろう』という感覚でずっとやってきました」。判断やプレーのスピードは高校時代と桁違い。自分の得意な形に持ち込むことすら、なかなかできなかった。

 11分。右サイドへとボールは展開される。「太聖さんが自分のことをずっと見ていてくれたので、『中に来るかな』と思って、ちゃんと待ち構えていたんです」。DF井上太聖(2年)のピンポイントクロスを呼び込むと、得意のヘディングで叩いたボールはゴールネットへ吸い込まれていく。

「あまり覚えてないんですけど、とにかく嬉しかったです」という1年生の周囲に、先輩たちが作った歓喜の輪ができる。7試合目での大学初ゴール。ようやく期待のストライカーが、さらなる覚醒への第一歩を踏み出した。

「山田でやっていた分、スピードとか強度にはすぐ対応できていて、1試合を通してメチャクチャ悪かった試合はないので、よりミスなくこだわってやっていければ、チームの勝利に貢献できるかなと思います」。1年生センターバックの高校時代と変わらないどっしりとした立ち姿が、カクテル光線に映える。

 ここまで三輪はリーグ全試合にフル出場。プレシーズンはサブに回ることが多かったが、レギュラー候補だった選手の負傷もあって、開幕戦でスタメンに抜擢されると、「最初はメチャクチャ緊張しましたし、あくまで代わりみたいな感じで使われていたんですけど、試合に出る以上は関係ないなと思いました」という持ち前の安定したメンタルで、チームの守備を後方から支えてきた。

 この日も法政大相手に人への強さを発揮していたものの、本人はまだまだ納得のいっていない様子。「ここはボールを持つサッカーなので、センターバックが基点になるところで、今は山崎太一さんに全部任せてしまっているなというのがあって、もっと自分のところが基点になれれば、相手も捕まえにくくなると思うんですけど、そこが自分には足りていないですね」。

 それでも、試合に出続けることで成長している手応えは掴みつつある。「山田の時みたいに蹴る時は蹴るんですけど、意図ある持ち出しや付け出しというビルドアップの部分は、順天に来たことで幅が広がったと思います」。常に自分に足りないものを身に付けたいと願う貪欲さは、以前から持ち合わせているこの男の大きな魅力だ。

 試合は法政大に3失点を許し、1-3で敗戦。悔しい結果を突き付けられたが、彼らがこの4年間の先にある大きな目標を成し遂げるためには、日々ステップアップする過程を踏み続ける必要がある。ただ、そんなことは、もちろん2人とも十分に理解している。

「順天堂は繋ぐサッカーなので、個人をレベルアップさせながら点を決める能力を上げていかないといけないですし、親元を遠く離れて、ここでずっと呑気にやっているわけにはいかないので、プロを目指して毎日頑張らないといけないと思います」(名須川)「順天がビルドアップでボールを動かすチームだということは知っていたので、そこはまずここに来た一番の決め手で、山田の時に学んだ守備のフィジカル的なところと技術的なところをさらに4年間で上げていけば、プロに繋げられるかなと思うので、試合に出続けるという目標はあります」(三輪)。

 ちなみに、2人はもともと示し合わせて同じ大学に来たわけではないという。「別に『一緒の大学に行こう』とは話していなくて、たまたま第1希望でカブったんです。でも、わかっているヤツがいるのはいいことですし、実際今も授業の課題をナスと一緒にやったりしているので(笑)、ナスがいて良かったかなと思います」と明かすのは三輪。部活も一緒で、授業も一緒。結局は仲が良いということは、間違いなさそうだ。

 今シーズンはプレミアリーグでも苦戦が続いている“母校”のことは、2人とも気になっているという。図らずも自分たちが上げてしまったハードルに、それでも近付き、超えていってくれることを“先輩”たちは期待している。

「もちろん気にはなりますけど、自分からは『頑張れ』としか言えないですよね。負けが続いていたことで雰囲気も悪くなりがちかもしれないですけど、キャプテンだけではなくて、全員でお互いを鼓舞しながら練習を頑張っていったら、勝てるようになってくるのかなとも思うので、頑張ってほしいです」(名須川)。

「一応プレミアは全試合チェックしてますよ。三橋春希は山田中から一緒なので、アイツや中山竜之介に連絡したら『椋平さんたちの代のせいで、勝手に注目されてます』って言ってました(笑)。プレッシャーは掛かると思うんですけど、山田のやるべきことは変わらないはずなので、まずはインターハイの県大会でしっかり全国を決めて、夏の全国連覇をしてほしいですね。僕もチェックはしていますし、応援もしています!」(三輪)。



 あるいは高校時代の栄光によって、今は必要以上に注目を集めていることも否めないかもしれない。だが、名須川も三輪も自分の現在地として、『できること』と『できないこと』をしっかりと見極め、成長するための過程を着実に辿っている。その一歩一歩に確かな想いを乗せていくのであれば、きっと進んでいく道の先には、自らが望んだ以上に輝く目的地が、必ず待ち受けているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

●第96回関東大学L特集

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