beacon

[MOM3871]帝京大可児FW長谷部希星(3年)_昨冬コンバートの「うちっぽくないCF」が全国へ導く2得点!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

決勝で2得点の帝京大可児高FW長谷部希星(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.4 インターハイ岐阜県予選決勝 帝京大可児高 2-0中京高 長良川メドウ]

 帝京大可児高のFWといえば、テンポ良くボールを動かすチームスタイルに合うムービングタイプのストライカーが多かったが、今年の1トップに入るFW長谷部希星(3年)は違う。「うちっぽくないセンターフォワード」と評するのは仲井正剛監督で、181cmの高身長と恵まれたフィジカルを活かしてポストプレーでチームに貢献できる選手だ。

 前線からの積極的な守備やポストプレーも彼の魅力。中京高との決勝ではJ1湘南のFW鈴木章斗を参考にした胸トラップでボールを収めて、中盤の攻撃参加を引き出すなどFWとしての存在感を発揮。しかし、長良高と対戦した準決勝では再三のチャンスを活かせず、試合がPK戦までもつれる原因の一つになっていた。

 苦戦した理由は気持ちの弱さで、本人はこう明かす。「一つひとつのプレーに反省してしまう。立ち上がりに良いプレーが出来ないと、後に引きずっていっぱいいっぱいになってしまうのが悪いところ」。長谷部の活躍が勝敗の鍵を握ると考えた仲井監督は決勝の2日前に、2年前のエースだったFW大森涼(現・桐蔭横浜大)の話を交え、試合への挑み方、エースやチームの中心選手としてのメンタリティーについて伝えたという。

 そうした経緯もあり、「今日は守備から入って自分の気持ちを高められるよう、頑張った」。キックオフ直後、意識変化が実を結び、試合開始早々に右サイドに抜け出したMF吉兼伶真(2年)のパスをゴール前で合わせて、先制点をマーク。以降もポストプレーと前線からの守備で奮闘を続けた。

 後半に入ってからもゴールへの積極性は衰えない。後半8分には、左ポスト直撃のロングシュート。同19分には、相手DFの裏に落ちたボールを拾い、強引な抜け出しから、GKをかわしたが、シュートは打てない。これまでの試合なら、チャンスを活かせなかった場合、下を向いてしまっていたが、この日の長谷部は違った。「ベンチから、仲井さんが『メンタル、メンタル』とずっと言ってくれていたので、反省は試合が終わってからにしようと思っていた。試合中はもう1点獲れるようにと前向きな気持ちでやりました」

 最後までゴールを諦めなかった長谷部に再びチャンスが訪れたのは、試合終了間際の35+3分。ロングボールを足で処理した相手GKへのプレスはかわされたが、諦めずに2度目のプレスに行ってボール奪取に成功。そのまま無人となったゴールに流し込んで、2点目を叩き込んだ。勝利の立役者となった長谷部は「2点目の得点は、気持ちで決めたゴール。部員みんなの気持ちを背負っていたので、諦めずに奪いに行った」と笑みを浮かべた。

 力強いプレーからは本格派ストライカーとしての風格が漂うが、名古屋U-15時代はボランチとしてプレー。「帝京大可児のパスサッカーに憧れたのが、入学のきっかけ。ボランチとして自分がパスサッカーの中心になって出来れば良いなと思っていた」というが、同じくスタイルに憧れて門を叩く技巧派は多く、「自分にはそこまでの技術がなかったと気付いた」(長谷部)。2年目からはAチームに絡み始めたが、出番は得られずにいた彼に転機が訪れたのは、昨年の冬。恵まれたフィジカルを活かすべく、FWにコンバートされたのがきっかけだった。

「コンバートされた当初はどうすれば良いか分からなかったけど、自分のスタイルはチームにあまりいないと言われた。これを伸ばしていけば試合に出られるかなと思ったので、集中して頑張りました。FWなら技術がなくても、前が向けるし、収められる。今はプレーしていて、楽しい」(長谷部)。

 エースとしての仕事を果たした長谷部に対し、「今日1日でかなり伸びた。右肩上がりの矢印が今日付いたので、ここからドンドン行って欲しい」と期待を寄せるのは仲井監督。逞しいストライカーへの変貌を遂げた男の活躍は全国でも期待できそうだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

TOP