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[MOM3878]帝京長岡DF森健太朗(3年)_その男、伏兵にあらず。「ずっとドキドキワクワクしていた」DFが延長V弾で堂々主役に!

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タイムアップ直後。“主役”の帝京長岡高DF森健太朗(15番)はチームメイトに囲まれて笑顔!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.5 インターハイ新潟県予選決勝 帝京長岡高 1-0(延長) 新潟明訓高 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 自分でも、なぜ中に入っていったのかはよくわからない。でも、みんなとアップをしている時からずっとドキドキワクワクしていたし、不思議と何かができそうな予感はあったのだ。

「途中出場する前から、もうずっとドキドキワクワクしていて、『いつゴールが入るんだろう』という期待をベンチでも抱いていましたし、ピッチに交代で入った時は『自分が点を決めてやる!』という気持ちで入りました」。

 その男、伏兵にあらず。延長後半に帝京長岡高の決勝ゴールを叩き出した、途中出場のDF。森健太朗(3年=エスポワール白山出身)は最初から、主役をさらう気満々だったのだ。

 何度も決定機を掴みながら、新潟明訓高の粘り強い守備に阻まれ、なかなか先制点が奪えない展開の中、後半の終盤になってようやくアップエリアへ声が掛かる。残り5分。森は全国出場を懸けたファイナルの、まさに勝負の時間帯にピッチへと解き放たれる。

「まず自分は守備から入って、そこから攻撃や得点に関われればいいなと思っていました。最初はちょっとフワフワしていたところもあったんですけど、みんなが良い声を掛けてくれたので、徐々に試合に入っていけました」。おそらくは最初から右サイドバックに投入されたものの、なかなか試合の流れが途切れず、投入から2分近くは左サイドバックの位置でプレーすることに。軽い“ハプニング”から森のこの日は始まった。

 布石は、あった。延長前半のラストプレーとなったCK。「セットプレーの時は基本的に残っている方だったんですけど」と明かす森は、この時もペナルティエリアの外には残らず、ゴール前に入っていた。要は主役をさらう気満々だったのだ。

 そして、延長後半3分。その時は訪れた。帝京長岡が右サイドで奪ったCK。高精度キックを誇るFW岡村空(3年)の蹴ったストレートボールが、中央に飛び込んでくる。ニアへ舞った15番の頭が、軌道をゴール方向へ捻じ曲げると、その直後にネットが鮮やかに揺れる。

「あのコーナーの前から『決めてやるぞ!』という気持ちがいつも以上にあって、岡村から良いボールが入ってきたので、合わせるだけでした。タイミング良く飛べましたし、ちょっと自分らしくないですけど(笑)、良かったです」。バックスタンドへと駆け寄り、応援席の部員と歓喜を分かち合う。伏兵の一撃、ではない。結果が証明している。森こそが、この試合の主役だったのだ。



 今シーズンのスタート時にはレギュラーを手にしていたものの、ケガもあって出場機会が減少していた。だが、そこで腐っていても始まらない。「たとえば試合前に“飲むゼリー”は学校で準備するんですけど、そこでいち早く動いて準備したり、ホテルでもスタメンがリラックスして休めるように荷物を持ったり、いろいろな手伝いをしてきました。チームが勝つことが一番ですし、スタートの選手が活躍してくれることが一番なので、そのために『自分には何ができるかな』と考えながら行動していました」。

 今、自分の為すべきことをしっかり実行する。そのメンタルはもともと持ち合わせていた。日常は必ず、ピッチでのパフォーマンスへと繋がっていく。この決勝では、森の為すべきことがゴールだったということだろう。こういう人間のいる組織は、強い。

 中学時代は石川のエスポワール白山でプレーしていたが、帝京長岡という進路には、“先輩”の影響があったという。「自分の4つ上になる立正大の冬至直人選手と小学校の時のチームが一緒で、そのチームを教えていたコーチに薦められて、そのまま練習参加に行って、声を掛けてもらえたので、帝京長岡に決めました」。入学当初はレベルの高さに戸惑ったが、今ではこの2年間で着実に成長してきた手応えも掴んでいるようだ。

 自らの活躍で手繰り寄せた全国大会。自分の為すべきことに、想いを馳せる。「自分が出るとしたらディフェンスラインなので、ビルドアップだったり、最後に身体を張って守るところだったり、求められることは高くなると思うんですけど、しっかり頭を使って、監督やコーチの話を聞いて、頑張りたいです。でも、またコーナーに入りたくなっちゃいますね(笑)」。

 その男、伏兵にあらず。セットプレーの時には、対戦相手も森の『主役をさらう気』にご注意を。

(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

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