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[MOM3918]札幌光星FW川合流央(3年)_「ドンベ」ジュニアが27大会ぶり全国導く決勝弾!!

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決勝点を奪った札幌光星高FW川合流央(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.17 インターハイ北海道予選準決勝 帯広北高 1-2 札幌光星高]

 ヒーローは、ちょっと変わった男だった。札幌光星高を27大会ぶりのインターハイ全国大会出場に導く決勝ゴールを決めたFW川合流央(3年)は、得点場面を振り返ってほしいと記者から言われると「虫刺されで足が痛いなと思いながら試合をしていて……ちょっと走るかと思って走ったら、良いところにボールが来た。それだけです。何もしてないですね」と言い、囲った記者の目を点にした。よく見れば、右の太ももや左の腕が腫れ上がっており、虫刺されの痛みは、無視できるようなものではなかったようだが、まさか劇的逆転ゴールを虫刺されの話から振り返るとは思わなかった。

 北海道は2校に全国出場権が与えられるため、準決勝が大一番。帯広北高に先制を許す苦しい展開だったが、後半12分にオウンゴールで追いつくと、後半22分に左サイドの突破から中央へ送られたラストパスを川合が右足のワンタッチでゴールへ流し込んだ。チームとしては、粘り強い戦いで川合の一撃につなげた形だ。仲間が作り出したチャンスをモノにしなければ、エースの役割は果たせない。川合は「1回戦から3試合連続、延長戦で勝ってきた。(先制されても)焦りはなかった。僕たちなら勝てると思っていたので、やるだけでした。後半にワンチャンス来るかなと思っていて、来たと思ったので、頑張って走りました。虫に刺されて足が痛かったですけど」と再び虫刺されの痛みを訴えつつ、一撃にかけていた思いを言葉にした。

 ただ、かけていたのは、この試合の思いだけではなかった。川合は9番を背負うエースストライカーだが、この試合まで無得点。「焦りは少なからずありましたけど、チームが勝てばいい。そのうち、決められるだろうと思っていました。危なかったですけどね。決めないで終わっていたら、ちょっと恥ずかしかった。一応、エースなので」と少し笑った。わずか1得点ではあるが、全国切符となる値千金の1点となった。体のサイズがあり、前線でターゲットとしてパスを呼び込みつつ、対人戦でも体格を武器に前を向くFWだ。どんなときでも決められるストライカーになりたいが、憧れの選手は特にいないと言った。

 取材では、これまでのキャリアについても話を聞いたが、コンサドーレ札幌U-12、U-15とキャリアを進めてきたことを「コネで」と言ったことが気にかかった。少し話を進めてから、意味を確認させてほしいと言うと「お父さんがU-12の浅沼達也監督と同じチームでやっていて。一応、プロだったんですよ。川合孝治です」と明かした。父の孝治さんは、埼玉県の武南高で1988年度のインターハイ全国4強。青山学院大から東芝に入団し、チームが神奈川県から北海道に拠点を移してコンサドーレ札幌に改称して臨んだ96年シーズンにはJFLを戦うチームの得点王となる活躍を見せた。Don Be(ドンベ)の愛称で知られた点取り屋だ。川合は「コネでしかなかったけど、コンサでは全国大会とか、本当に良い経験をさせてもらった。感謝しかないです」と父のコネクションもあって形成された自身のキャリアを振り返った。

 札幌U-18には昇格できなかったが、雰囲気が気に入ったという札幌光星へ進み、多くを学んできた。ちょっととぼけたやり取りの面白いキャラクターではあったが、10年ぶりのプリンスリーグ北海道という舞台を残してくれた先輩たちには、真摯に感謝を示した。出場権をつかんだ全国大会への意気込みも真剣。「やっとスタートラインに立てたので、ここから頑張ろうと思う。全国は、思い出を作りに行くわけじゃない。勝ちに行く。バッチバチに頑張ります」。父も経験したインターハイという舞台に「ドンベ」ジュニアが挑みかかる。

(取材・文 平野貴也)
●【特設】高校総体2022

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