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[MOM3926]前橋育英DF齋藤駿(3年)_激しいポジション争いに身を置くスピード系ハイタワーは、自らのゴールに無失点勝利と攻守に躍動!

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前橋育英高の最終ラインにそびえ立つDF齋藤駿

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.19 インターハイ群馬県予選決勝 前橋育英高 4-0 桐生一高 正田醬油スタジアム群馬]

 競い合う仲間の存在が、自分のエネルギーになっていることは間違いない。ライバルであり、チームメイト。負けたくないし、一緒に勝ちたい。目標へと到達するために、彼らと切磋琢磨することは、そのままチームの大きなパワーになる。

「1日1日の練習や、1試合1試合の公式戦でアピールできないと、これからも“食われる”と思いますけど、それを意識し過ぎても良いプレーはできないですし、みんなを良いライバルと捉えながらも、結果を出す中で自分のプレーができたら、監督も認めてくれるはずなので、まずは自分のプレーをしっかり出そうと思っています」。

 全国屈指のタレント集団、前橋育英高のセンターバックを託されたスピード系ハイタワー。DF齋藤駿(3年=浦和レッズジュニアユース出身)の攻守に渡る活躍が、全国行きの切符を巡る一戦で、キラリと輝いた。

 今シーズンから一緒にプレミアリーグへと昇格した、桐生一高と対峙するインターハイ予選決勝。そのプレミアでは全試合でコンビを組んできたDF杉山陽太(3年)の欠場を受け、齋藤の隣にはルーキーのDF山田佳(1年)が並ぶことになる。

「公式戦では初めて組んだんですけど、ラインのアップダウンはしっかりできていましたし、佳がミスしても良い声を掛けてあげようかなと思ったり、佳を声で動かすことは意識しました」。年代別代表にも選出されている実力者とはいっても、まだ1年生。その持てる力を発揮しやすいように気を遣いながら、守備全体も巧みにコントロールしていく。

「久々に齋藤駿のヘディングを見ましたけど、やるもんだなと思いました(笑)」と山田耕介監督も笑ったように、攻撃面で違いを見せ付けたのは、2点をリードして迎えた後半13分。MF青柳龍次郎(3年)が蹴り込んだ左CKから、ファーへ潜った4番は高い打点のヘディングを打ち下ろす。

「龍次郎から良いボールが入ることはわかっていましたし、ファーサイドで仕留めることも練習からできていたので、それがそのまま試合に繋がったかなと思います。アレは気持ち良かったですね」。



 点差を3点に広げたチームは、もう1点を追加して4-0で快勝。「個人的には今日の一番の目標は失点ゼロだったので、その目標が達成できて良かったですし、自分たちはインターハイで全国優勝を目標にしていて、やっとスタートラインに立てたことが凄く嬉しいです」と笑顔を見せた齋藤が、主役級の活躍で全国への出場権獲得を手繰り寄せた。

 小学生時代から浦和レッズのアカデミーでプレー。ユースへの昇格も打診されていたが、「自分は高校サッカーでもっと活躍して、自分自身を磨きたいなと思っていたので、そのパスサッカーに惹かれたのと、日本一になった代を見て『自分もここでやりたいな』と思って前橋育英を選びました」と自らの意志で上州のタイガー軍団の門を叩く。

 入学してからここまでの2年半近い時間で、さまざまな成長の跡を実感しているという。「一番成長できたなと思うのは私生活の部分ですね。サッカー面では寮生活で、自主練の時間が結構あるので、そこで自分の長所を伸ばす時間もたくさんありますし、前の自分より技術もメンタル面も上がってきているかなと思います」。親元を離れて生活することで、自立心も養われてきた。

 自らのプレースタイルについては、「自分は他の選手より結構足が速いこともあって、味方のカバーは意識していますし、ヘディングも練習してきて、それが自信にもなってきているので、そこは負けられないですね。自分は足が速いことを一番の武器にしたいかなと考えていて、その次にヘディングの部分も武器…、武器にしたいと思います」とのこと。最後は少し言い淀んだものの、この日のゴールを見れば、ヘディングも十分な武器だと言い切っていいだろう。

 掲げた目標を、きっぱりと言い切る姿勢も頼もしい。「今年の初めから自分たちは三冠という目標を立ててやってきているので、まずインターハイは絶対に優勝という形で終えたいですし、その上でプレミアと選手権を良い形で迎えられるようにしたいなと思います。毎試合失点ゼロというのはこれからも目標にしたいですし、今日みたいに自分の得点ももっと増やして、チームの勝利に貢献したいです」。

 赤き炎を纏ったファイターであり、黄色と黒の獰猛さを秘めたクールガイ。前橋育英が徳島の地で日本一のカップを掲げるためには、齋藤のさらなる覚醒が必要不可欠だ。

(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

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