beacon

[MOM3935]G大阪ユースFW鈴木大翔(3年)_献身のストライカーがようやく手にしたプレミア初ゴールは、今季リーグ初勝利を手繰り寄せる決勝点!

このエントリーをはてなブックマークに追加

プレミア初ゴールでチームを勝利に導いたガンバ大阪ユースFW鈴木大翔

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.3 高円宮杯プレミアリーグWEST第11節 G大阪ユース 1-0 名古屋U-18 OFA万博フットボールセンター グラウンドB]

 もちろんゴールが嬉しくないはずがない。2年越しでようやく手にした、プレミアリーグでの初ゴール。どれだけこの瞬間を待ち侘びてきただろうか。でも、もっと嬉しいのは、この仲間たちと一緒に勝利を喜び合えたことだ。だって、こんな最高なヤツらとサッカーができることが、何よりも自分にとって大切なのだから。

「ここまで長かったですし、今日はチームが勝てたことが一番大きかったですね。サッカーでこうやって今の仲間と出会えたことは奇跡だと思うので、1日1日を大切に、1つでもみんなで一緒に勝ちを獲れたらいいなと思います」。

 ガンバ大阪ユース(大阪)の11番を背負う、心優しきストライカー。FW鈴木大翔(3年=ガンバ大阪ジュニアユース出身)のプレミア初得点が、チームに大きな大きな今シーズンのリーグ初白星をもたらした。

 チームも、自身も、苦しんでいた。「中学の時は普通に勝てていて、こんなに勝てない時期はなかったですし、僕も結果を残せていないことで、いろいろ考えることもあって、ストレスもありました」。リーグ戦は開幕から6試合を終えた時点で、2分け4敗と未勝利。鈴木もなかなかゴールを挙げることができず、悔しい想いを突き付けられてきた。

 とりわけフォワード陣の軸として期待されていたFW南野遥海(3年)がトップチームの活動へ継続的に参加することで、プレミアも欠場することが多くなる中、掛かる重圧も自ずと大きくなっていった鈴木は、「やっぱりあまりプレッシャーは逃がせなくて(笑)、試合の前の日も全然寝られないこともありました」と正直に明かしている。

 ただ、逆にこれはさらなる成長のチャンスだと捉えている自分もいたという。「正直な話、ちょっと遥海に頼ってしまっている自分もいたんです。でも、『アイツがいないからこそ変われるチャンスだ』と思って、そこは強い想いを持って練習に取り組んでいました」。意識は変わりつつあった。あとは、明確な結果を出すのみ。

 開幕4連敗を喫したものの、以降の2試合はいずれもドロー。少しずつ光明が見えつつある状況で迎えた名古屋グランパスU-18(愛知)戦。鈴木は少しいつもとは違う狙いを持って、試合に臨んでいた。「自分の持ち味は背後への動き出しなんですけど、今日はちょっと違ったプレーを考えていて、『相手の嫌がることをする』ということを意識してやったんです」。

 チームを率いる森下仁志監督が、11番の言葉を過不足なく補足する。「大翔とは昨日もちょっと話をして、相手の背中を取りに行って、デイフェンスラインと勝負するのはいいんですけど、相方の日笠(廉康)もそれが持ち味だから、『ちょっとインサイドも狙っていこう』と。彼は献身的に、チームのための役割を探せるので」。

 チームメイトと歓喜を共有した決勝点のシーンは、まさに“インサイド”での仕事だった。後半19分。左サイドでスローインを受けたMF大倉慎平(1年)に近寄り、ワンツーで左サイド突破を手伝ってから、すかさず中央へと潜っていくと、ニアに飛び込んだ日笠が潰れたこぼれ球が、鈴木の目の前に現れる。

「最初は『ファーに打とうかな』と考えていたんですけど、相手の足が出てくるのが見えて、それで『ニアが空いているな』と思って、ニアに蹴りました」。冷静な判断から、右足で振り抜いたボールは、左スミのゴールネットへ確実に吸い込まれていく。「今年は点も獲れていなかったですし、チームも勝てていなかったので、もう嬉しさしかなかったです」と笑った鈴木のゴールの陰には、指揮官のアドバイスに加え、もう1人の尊敬すべきコーチの存在も見逃すことができない。

「僕の憧れの選手は大黒さんなんですけど、ゴール前の“点を獲るところ”のことを常に言われていて、たとえばこぼれ球でもどんなシュートでも1点は1点なので、それを練習から決め切るということを意識してきました」。まさにこぼれ球を決め切った形は、間違いなく大黒将志コーチと練習から積み重ねてきた反復の賜物。このことからも、周囲の声を素直に聞き入れられるメンタリティが窺える。

 意外だったのは、その話しぶり。ストライカーとは思えないぐらい、丁寧で、穏やかな口調で、何を言うかをしっかり考えながら、きっちりとした言葉遣いで想いを発していく。そのことに水を向けると、「僕はこれが普通です(笑)」とニコリ。プレースタイルとのギャップも微笑ましい。

 ようやく手に入れた、プレミア初ゴールと今シーズンのリーグ戦初勝利。チームも鈴木も、もうここから逆襲していくことしか考えていない。「僕が点を獲ったらチームが負けることはないと思うので、相手よりも点を獲って、チームを勝利に導けるように頑張りたいと思います」。

 チームの結果と、自身の結果を、ある意味で並列に考えられる献身的なストライカー。だが、この日のように、自分のゴールでチームが勝つことができるなら、鈴木にとっても、いつだってそれが最高だ。



(取材・文 土屋雅史)
▼関連リンク
●高円宮杯プレミアリーグ2022特集

TOP